第13話 王と復讐の騎士13

 祭祀ドルイドエルウィンとの謁見を終えた一文字は復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソードが入った木箱を台車に載せ、ロレッタと共に修道院から出てきた。ロレッタがふと横をむくと台車を押す一文字は苦虫を嚙み潰したような表情をしていた。


「一文字隊長、どうしたんですか?凄い顔になってますよ? 」

「ん、あぁ少し自己嫌悪がね・・・とりあえず戦艦戦車キャスルベースまで戻りましょう」

「はい、了解です」


 一文字とロレッタが戦艦戦車キャスルベースへ戻るとマリナや他のメンバー達も戻ってきていた。


「ただいま戻りましたー」

「お、キングお疲れー。ロレッタもお疲れさん。粗相しなかったか? 」

「粗相ってひどい、ジュリアルドさん!」

「そちらも終わったようだね」

「問題無しじゃ」

「・・・・・・」

「ん・・・隊長その箱の中から妙な気配がする・・・その中身は」

「これは・・・見てもらった方が早いかな」


 一文字は戻ってきた挨拶をしていたが、マリナは一文字が持ってきた箱をじっと見つめ、グローサリーは復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソードが放つ気配に気が付いたようだった。一文字は台車の木箱の蓋を開けて皆に見せる。その中には剣先に両刃斧がついた黒い逆十字剣、復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソードが佇んでいた。中に入っていた復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソードにマリナは目を見張り、一文字は渋い顔をしていた。


「・・・・・・・!」

「キ、キングこれは復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソード? あれ? 俺たちってこれの材料を取りに来たんじゃ・・・」

「これは復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソードの影打ちだそうだ・・・」

「・・・影打ち?」

「オリジナルを選ぶ際数本打たれた剣の内、選ばれなかった剣の事だよ」

「ふむ、この剣はオリジナルではないけど、ほぼオリジナルと同等ということじゃな」

「えぇその通りです。これ以上の剣は僕らでは用意できません・・・祭祀殿にはやられましたよ・・・かなりの貸しですね」

「貸し・・・な・・・それだけじゃなさそうじゃが。ま、相手は政争の中も生き抜いてる古狐じゃ。これも勉強じゃよ」

「・・・はい」


 オラジからの言葉に一文字は渋い顔からまた苦虫を嚙み潰したよう顔になった。左手を握り締め、オラジの言葉をなんとか飲み込み返事を返した。

 その表情をみたオラジは一文字の背を叩いた。

 一文字はマリナの方を向き見据え、木箱に入っている復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソードに触れた後、一文字はマリナへ告げ始めた。


「これは祭祀ドルイドエルウィン殿よりマリナへと預かりました。そして、私、すすきの王として、我が騎士たるマリナ=姫路=ジャダル改めて命じます。その復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソードを持って、復讐の使命と本懐をその身をとして遂げなさい」

「は、この身をとして成し遂げます」


 マリナは左膝をたて、片膝をつけて、宣言を返した。

 一文字は少し横へそれるとマリナは立ち上がり、両刃斧がついた黒い逆十字剣、復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソードを取り出した。両手で横に水平に持ち、一文字へ軽く掲げつつ一礼すると後ろに下がった。

 マリナは腰につけていた前の復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソードを釣っていた分銅付きの鎖を手に取った。分銅付きの鎖に付いていた引っ掛けに剣を釣るし背に背負った。


 一文字はカーライル城での復讐騎士の大斧剣アベンジャーズソードの材料以外の物資積み込み後、出発する予定などを話していた。その後、マリナはカリデュー川へ石を拾いに行き、ジュリアルド、グローサリー、兵器舎でMDの整備をしに行った。残された一文字、オラジ、ロレッタの三人は戦艦戦車キャスルベース艦橋内で、機関チェックをしていた。作業の中でロレッタは一文字に気になっていたことを質問した。


「一文字隊長ちょっとマリナさんの事で聞いても気になることがあるので聞いてもいいですか? 」

「マリナの事ですか。僕で答えられることであれば答えはしますが・・・」

「なんじゃロレッタ何が気になるんじゃ? 」

「まず先ほどの一文字隊長とマリナさんの話なんですけど、一文字隊長が王様でマリナさんが騎士というのはわかるのですが、その騎士に復讐を認めるのって良いのかなぁと。普通騎士って王様とか国民を守りなさいとか言うものじゃないですか? なんかもやーってしているんですよ」


 ロレッタはこめかみに人差し指を当てて、うーんと悩んだ。それは見た一文字はどんなことに引っかかっているのか想像がつき答えた。


「あーなるほどそこに疑問を持ちましたか。確かに普通はロレッタが思っているのとであっているのですがね。マリナは騎士としての理由と階級名称が違うんですよ。さらにいえばマリナを魔術的契約で縛る為にも必要ですし」

「階級と契約ですか・・・」

「マリナは騎士にどんな名称があるか知ってるのかのう? 」

「騎士は騎士ではないのですか? 」

「まずはそこからかの」


 一文字は困ったような顔をし、オラジは顎を撫でながら、二人は騎士について話し始めた。


「いいかいロレッタ、騎士は仕えた相手や場所もしくは立場などで、その名称は変わるんだ」

「軍としての騎士、その上の正騎士、王族に使えるのなら王室騎士ロイヤルナイト、ここ、英国の地にある十架英教においては聖騎士パラディン、イングランド方面の高原騎士ハイランダー、森林十架教の修道騎士テンプルナイト等じゃな」

「おおーーーそんなにあるんですか」

「ロレッタは素直じゃのう。ジュリアルドの奴と違って答えがいがあるわい」


 オラジが色々な騎士の名称を出すとロレッタは素直に驚いた。素直なロレッタな態度にオラジはうんうん感慨深げに頷いた。一文字はオラジに続いて話し出した。


「そして、マリナは森林十架教の修道騎士テンプルナイトの見習いだった。六年前の事件でロレッタは怒りの精霊フューリーに取りつかれ暴走した」

「フュ、怒りの精霊フューリーですか?!またカルトめいたものが出てきましたね・・・? 」

「カルトだね、だから僕が出てきた。怒りの精霊フューリーを魔術的契約をもって暴走を止める為、王と騎士の契約を持ち出したんだ。それも怒りの精霊フューリーに沿ったものでなくてはいけないから、王が仇討ちを認めた騎士、復讐騎士アベンジャーの騎士契約を結んでマリナを抑えたんだよ」

復讐騎士アベンジャー、そんな騎士がいたのですね・・・仇討ちの相手ってやぱり・・・」

「ええ、存在理由が理由なだけに知られた騎士ではありませんが・・・仇討ちの相手は樹獣や樹虫です」

「あ、それで最期の休憩地で女の子に話しかけられた際、言い淀んでいたのですね・・・」

「そんな契約の経緯もあり、森林十架教よりマリナはL.M.D預かりなったのです」


 ロレッタは最後の休憩地で出来事を思い出して、軽く気持ちが沈んだ。そんなロレッタの気持ちを思いやれる姿を微笑ましく見つつ、一文字は話しを纏めた。


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