第7話 王と復讐の騎士07

「俺が使った魔術はもう一人の自分を現実化として映し出す”Doppelgängerドッペルゲンガー”というものだ」

「もう一人の自分!良いですね。調査資料を手早く纏めたり、部屋の掃除頼みつつ、寝たりとか出来て、いい感じになりそうです!私にもできますか?」


とロレッタは興奮してグローサリーに詰め寄った。しかし、グローサリーはロレッタの額を手で押さえつつ、ため息をつきながら答える。


「ふぅ落ち着け。そんな便利なものではない。デメリットも存在する」

「どんなデメリットですか?」

「そうだな。前の話も含めて話そう。まずは魔法でも”Doppelgängerドッペルゲンガー”を作り出せることは出来る。だが圧倒的に魔力量が足りない、なぜなら必要魔力量というのは天文的な量になるからだ」

「そんなにですか?!でもなんでそこまで必要だと分かったんですか?魔法を使うことが出来なければその必要量ってわからないですよね」


とロレッタから当然の疑問が出てきた。そこに答えてきたのはジュリアルドだった。


「んーーーそれは科学の分野からの転用だそうだぜー。相対性理論曰く人をエネルギーへ変換すると宇宙創成のビッグバンを同じくらいになるそうだ。そこからもう一人の自分を作る必要魔力を考えたとき、ビッグバンのエネルギーと同量ほど必要になるんだとよ」

「なっそれほどまでに必要なのですか!?それは無理ですね・・・でもジュリアルドさんよく知ってましたね。知ってるように見えないのに」

「なっぁひでぇな!?」


Doppelgängerドッペルゲンガー”の必要魔力がそこまで必要な事を聞いてジュリアルドを揶揄しつつも呆けてしまった。呆けたロレッタを見て、グローサリーは話を続けた。


「だが魔術としての”Doppelgängerドッペルゲンガー”は成功している。そこには色々な技術や知識を持って、もう一人の自分を現実に映し出している」

「ふむふむ。それではグローサリーさんはどんな技術を使って現実に映し出したのですか?」

「まず、魔術師になるための修行の1つに自分の影を捕まえるというのがある。影とは常に自分に付き添い、同じ行動をする故、もう一人の自分とも言える。現実として存在しているが掴む事が出来ない存在を現実化し掴むと言う修行だ」

「でも影を掴めただけでは食堂でみたグローサリーさんにはならないですよね?」

「そうだな。そこで掴んだ影に魔力を追加して、自分を姿を映し出した。それが”Doppelgängerドッペルゲンガー”だ」

「ほほぉー影に魔力を注ぎ込んで自分としたのですね。なるほど、魔法では一人分を構成するには魔力が足りなかったけど、先にもう一人の自分と思われる影を捕まえたことで必要魔力を抑えれられたのですね。なるほど、なるほど」

「はぁまだまだだなぁロレッタ肝心の部分の説明がないことに気が付いてないな」

「へ?肝心の部分ですか?」


とロレッタは納得を見せた所にジュリアルドが突っ込みを入れた。ジュリアルドはまだ肝心な話があると言い話を続け話し始めた。


「最初に小説の話をを持ち出して魔力といったがよー。そもそもが魔力ってなんだって話だよ。ロレッタ魔力ってなんだ?」

「魔力って・・・え?」

「まぁ魔力だけじゃなく、呪力、霊力、気力、MP・・・色々と言い方はあるんだが、結局はそこに何があるという存在を示す情報なんだよ。火がない空間に火を出そうとしら、その空間内に火があるという情報を出したい空間の1点に流し、高めていかなくちゃならない。その存在情報圧力が一定値超えたときに火が出る現象が魔法。ただ火があるというだけで存在情報圧力を高める圧力はそうそう得られねぇよ」


ジュリアルドは諦め口調で魔法に関して話を閉めた。しかし、魔術に関しては違うようで話を続けた。


「そこで火を出すための存在情報の必要圧力に対して、赤かったり青かったり、または熱いだの、燃えるだのという存在情報を追加することで、軽減、圧縮や必要圧力値の枠自体の縮小等の様々な技術を持って、火いう存在を現実化させるのが魔術ということに繋がっていくんだぜ」


ジュリアルドは誇らしげに語り、両手を広げた。ロレッタはその話の内容に関心はしたが、ジュリアルドに突っ込みを入れた。


「お・・・おぉぉ・・・なるほど! でも凄いのは魔術が使えるグローサリーさんですよね? ジュリアルドさんのドヤ顔はちょっとうざいです」

「ウグ!? うるせいよ! じゃぁロレッタ、グローサリーの”Doppelgängerドッペルゲンガー”の魔術説明に補足してみな」


突っ込まれたジュリアルドは仕返しにロレッタがどれ程理解できたのかという問いかけ、グローサリーの魔術の補足説明をする様に促した。


「グローサリーさんの”Doppelgängerドッペルゲンガー”というのは、グローサリーさんの身長、体重、髪型や肌の色などの個人存在情報パーソナリティをグローサリーさんの影・・・影はもう一人の自分という影の存在情報にを追加して、存在情報の圧力を高めた結果、食堂のようにガラの悪い軍人の後ろへ現れたということでしょうか」

「むぅうう、正解だ。ロレッタのくせに生意気な」

「ロレッタのくせになんですか!ロレッタのくせにって!」

「うむロレッタ、結果に関しては正解だ。しかし、その存在情報の移動に関してのデメリットが抜けている」


ジュリアルドはロレッタに軽口を叩き、やる気なさそうな拍手をする。しかしグローサリーはロレッタの答えに抜けがあると指摘した。


「デメリットですか?」

「ああ。デメリット、問題は影に自分の存在情報を移した後、自分の存在情報については薄くなる。そのことによって個別存在の逆転現象が起こる可能性が高くなり、魔術を使った自分が消える事を意味をする」

「自分が消えてしまう・・・」

「そうだ、消えてしまわないように存在情報の調整を含めて、”Doppelgängerドッペルゲンガー”という魔術は行使される」


とグローサリーは腕と脚を組んで話を終えた。そこへパール1将へ報告を終えた一文字が入ってきた。


「グローサリー、ロレッタへ魔術の説明をしていたのですか?ジュリアルドも珍しく真面目な話をしているね」

「キング!って、ひでぇな珍しくって!?普段でも真面目ですよって!」

「あ、一文字隊長、おかえりなさい」

「・・・隊長」

「隊長戻ったのか。報告はおわったんかの?」

「ええ、アレク部隊長が出張中だったので無事終わりましたよ。で、ロレッタ、グローサリーとジュリアルドの話で魔法、魔術について大体わかったかな?」

「あはは、ええ・・・まぁなんとなくは・・・あ!そうしたら!」


とロレッタは頬を一掻きして、一文字へ苦笑を返した。そして、一つの思い付きを一文字へロレッタは発言した。


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