「ワイ、異世界転生したいねん!!! 」 【架空お笑いコンビ『リバース』】

蒼田

ワイ、異世界転生したいねん!!!

「「ども~」」

「闇より黒い漆黒の男! しろ、と」

「神より授かった純白の衣をまとう男! くろ、です!」

「「二人合わせてリバースです! よろしくお願いします~!」


「なぁくろはん、皆ワイらの名前覚えてくれたかな?」

「そんな無理に決まっとろ! 二回目やで、二回目!!! たった二回目で名前覚えてくれるんやったらこの世はもうすでにお笑いが救っとるわ!」

「それもそうか。でもな、くろはん。ワイ、気づいてしまったんや……」

「どないしたん? 深刻そうな顔して……あっ! 分かった! この前、周年記念ガチャを回し過ぎて天井まで回した件か?」

「……それも重大やけど、もっと重大なことや」

「これ以上の事となると、よほどやな……ちょい聞いたるけん、少し話してみ」


「……例え世界が救われても、ワイは救われん……それに気付いたんや」


「……あほらし」

「いや、少しくらい興味もってくれてもええんちゃうん?」

「真面目に聞いたわしが阿保やったわ……そうや、しろはんはこういう奴やったわ……」

「ちょっ! 軽くディスらんといて! メンタルにグサっと魔剣が刺さるけん。頼んます、もう少し話聞いてくれんか?」

「まぁ……少しくらいなら……」


「これまでの人生振り返ってな、苦労しかしてないことに気付いたんや」

「俺達生まれたてほやほや、やけどな」


「でな、もうこんな世界嫌になったんや! やけん、ワイ! 異世界にいってちやほやされてスローライフしてハーレムつくって神になりたい!!!」

「……欲望丸出しやな、引くわー」

「おい! 謝り!!! 全世界の異世界転生ファンに謝りや!!! 前世で苦労したんやけん次の世界くらい! 少しくらい報われてもええやろが!!!」

「まぁその気持ちはわかるけどな。でもな、しろはん程に欲望丸出しの異世界転生希望者おらへん? 少なくとも、もう少しオブラートに包むと思うで?」

「いやいや、秘めたるこの想いは伝わるはずや!」

「全然秘めてないけどな」


「まぁまぁくろはん、そないこと言わずここは少し異世界転生を手伝ってくれんか?」

「なんやいきなり。ワイにトラック役でもせい言うんか?」

「ちゃうねん、ちゃうねん。もっとお手軽に異世界転生が味わえるもんがあるんねん」

「それに手に持っとんはなんや?」

「これか? これは疑似異世界転生ツールや」

「……悪徳商法にでも引っかかったんか?」

「ちゃうわ、あほ! とある形容しがたい姿した宇宙からの来訪者に作ってもらったんや……」

「……もっと重傷やったわ。まぁええ、このVR機器みたいなんでやるんやな?」

「そうや、やけどなこの機械、神様役がいるんねん」

「そこはAIちゃうんかい……」

「呆れんといてや、最後の最後で予算が尽きたらしいんや。しかもフリーの声優さんが全員食中毒にやられて倒れたらしいんや、そこからの納品や」

「……わかったわ。ちょい気になるけど、まぁ神様役やればええんやな」

「そうや、じゃぁよろしくお願いします」


★リバース!★


「ここは?」

「貴方は死にました、よって転生させます」

「てん、せい……ですか……」

「はい、しかしこのまま転生してもすぐにモンスターに殺されるでしょう。だから貴方に『回復チート』を授けます」

「ありがとうございます、神様!!!」

「では転生!!!」


【転生後】


「ぐぉぉぉぉ!!! 熱い! 痛い! どいういうことや!!!」

「ここは『地獄』です、腹を切り裂かれ、マグマに放り込まれ「ちょいちょい待て! 違う!!! これ違う!!!」」

「何が違うん? ちゃんと転生したやん?」

「『地獄』に転生してどうするん! しかも『回復チート』って! 永遠の地獄やないかい!!!」

「……足らんかったんや」

「なにが?」

「『徳』がや……」

「どういうこと?」

「生前、やりたい放題したあんさんは……異世界でもやりたい放題しようと転生した……そのつけが回ったんや……」

「そんな転生があってたまるかい!!!」

「めんどくさいなぁ~つき合わせといて、それはないやろう。ならくろはんならきちんとした神様役が出来るんやな?」

「おう、勿論や!」

「なら……ワイが転生するけん、神様役たのんます」

「任せときや!」


★リバース!★


「……いつもニュースばっかでおもろないな、テレビ。ちょっくらweb小説聖典でも読みに行こうか」

「ピーンポーン!」

「……ん?なんや、チャイムの音? このご時世に新聞の勧誘か? 無視しとこ」

「ピーンポーン! ピーンポーン! ピーンポーン! ピーンポーン! ピーンポーン! ピーンポーン! ピーンポーン! ピーンポーン! ピーンポーン! ピーンポーン! ピーンポーン! 」

「うっさいわ!!! しゃぁない! 出たろうか……(ガチャ)。あんたさっきからうっさい……で?」

「よろしくお願いします! 転生してください!! このままじゃ世界が崩壊するんです!!!」

「……(バタン)」


「よろしくお願いします! 転生してください!!! 「ちょいまて! なんで神様玄関前で土下座しとんねん!」」


「最近は異世界転生をしたがらない人もおるんや」

「そんな人おるん?!」

「よく考えてみ? くろはんや、電気があり、ネットがあり、上下水道が充実し、娯楽ごらくあふれている日本におるんのに、どうして異世界にいかんといかんのん?」

「え、それはさっきしろはん言ったやん。「異世界にいってちやほやされてスローライフしてハーレムつくって神になりたい」って。それなんちゃうん?」

「……ワイ気付いてもうたんや……転生するなら、現代日本でもええんやないんかなって……」

「身も蓋もない事を……」

「ワイ転生するんやったら、楽に生きたい!!!」

「じゃぁ最後! 最後にワイが神様やるけんしろはん転生し! これで終わりな!」

「おう!」


★リバース!★


「……」

「……」


【転生】


「そして悠久ゆうきゅうの時が立ち、しろは『無』へと帰ったのであった「ちょい待ち!!!」」

「なんや、一番楽な方法やろ」

「確かに楽やけれども! 『無』ってなんや『無』って!!!」

「何もなければ、何もしなくてもいい。これほど楽なことはないやろ? 差し詰め名付けるならば「転生したら『無』だった ~楽な生活を願ったら何もなかったけど、神様これは違うんじゃないですか?!~」ってとこか?」

「そんなんあってたまるかい!!!」


「「どうも、ありがとうございました!!!」」

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「ワイ、異世界転生したいねん!!! 」 【架空お笑いコンビ『リバース』】 蒼田 @souda0011

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