エレベーター?
夜遅くまで食事と酒を楽しみ、ラファーガやジンの冒険譚にガリオンの魔物談義。それとローネ先輩の笑い声を楽しんだ夜。
さすがに時間が時間になってしまったので、彼らの拠点に泊まらせてもらった翌日。
「あかんねん、無理やねん」
「いったぁ……」
二名ほど二日酔いになってしまったので、今日はお休み。別行動だ。
朝から街を出てヘンリエッタに帰ってきた。
『艦長、おかえりなさいませ』
「おかえりなさいませ」
「ああ、ただいま」
前回と同じように、メインオーダールームに転移した。前回帰った時には顔を出さなかったヘンリエッタが迎えに出てくれた。
「姉上は?」
「まだお休み中です」
「そうか」
連日外に出て魔物を刈り取ってくれている姉上だ。無尽蔵な体力と魔力、そして魔大陸でも母上に次ぐ実力者と呼ばれる彼女だが、さすがに疲れがあるのかもしれない。
「ちょうど良かったです。いくつかヘンリエッタと相談をしておりました事案がございますので、ジャールマグレン様に確認していただきたいことが」
「ああ、今日は時間があるからいいよ。オレにもヘンリエッタにお土産があるんだ」
『お土産、でございますか?』
「ああ、多種の魔石を手に入れた。どこに置けばいい?」
大き目の樽で五つもある。
『であれば下の階層、回収物資解析室にお願いいたします』
「……案内を頼む」
『モニタリングドローンでご誘導いたします。付いて来てください』
壁の一角が開いて丸いヘンリエッタがでてきた。
「ではわたくしも。ヘンリエッタ、セレナーデ様が起きられましたら教えなさい」
『かしこまりました』
イミュリアを共に、丸い浮遊体の後に続く。
メインオーダールームのドアを抜け廊下を進み、ドアをくぐるととても小さな部屋に案内される。
「随分狭い部屋だな」
「そう、ですね。密閉空間ですね、二人っきりですね、じゅるり」
よだれを拭け。
『エレベーターです。下の階層へ降ります』
「「 エレベーター? 」」
扉が閉まると、部屋自体が動きだした。
「う、動いているぞ」
「で、ですわね」
『階層を上下する専用の移動補助施設です。階段を使わずとも上下が可能ですし、台車などを使用しながら階をまたぐことができるようになっております』
「な、なるほど」
「それは便利ですわ」
「というか今まで教えてくれなかったのはなんでだ」
『申し訳ありません、このように案内する機会がありませんでしたので』
そういえばヘンリエッタから誘導されたのはメインオーダールームからミーティングルーム、食堂や艦長室だ。
同じ階層にあったから使わなかったのだろう。
そんな思考をするが、すぐに部屋が動きを止めて扉が開く。
『副長のおかげでエネルギーに余裕ができはじめました。今まで使用していなかった施設の一部も使用できるようになっております』
ヘンリエッタは言うと、浮遊体が地面に降りる。
オレ達が小部屋から出ると、今度は床が動き出した。
「床が!」
「運んでくれるのですね。これは楽ですわ」
『はい、一部の宙域空間以外での移動補助を行います。重力下か重力制御中でしか使用しません。無重力下では壁のムービングバーを使用いたします』
「どんだけものぐさの人間の考えたシステムなんだ」
「とはいえ楽ができるのはいいことではございませんか?」
『当艦は最長八百メートルの直線の廊下がございます。ドローンによる大型物品の移動だけでは効率が悪いので、必然的にこのようなシステムが必要になってくるのです』
「想像もつかない世界だな」
「ダンジョンって不思議ですわね。先ほどのえれべーたー? でしたかしら。あれは魔王城にも欲しいですわね。キッチンから食材を運ばせるのに待つ時間が減りそうですもの」
「各階に給仕室があるものな」
水なんかを運ぶのに便利そうだ。
『到着いたしました。こちらが解析室にございます』
動いていた廊下が止まり、地面に降りていたヘンリエッタが再び宙に浮く。
扉が開き、部屋の中の照明が付いて、その部屋の中を照らしていた。
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