スクワーチウォーカー
「「「 チチー! 」」」
熱烈歓迎された……姉上が。
「うむ」
満足そうである。しかしかなり数がいるな、ダンジョンに魔物を運んでる奴らだけでも結構いたのに。
「ようこそだチチ、我らが守護者様、チチ」
「しゃべれる個体がいるんだな……」
魔人と呼ばれるほどの力はないだろうけど、それなりに知識がある魔物もいる。こいつもその中の一種だろう。
「チチ、どのようなご用件でしょうか! チチ!」
「ああ、お前達の住処を見せて貰いにきた」
「チチ! ご案内いたします! チチ!」
しゃべれるスクワーチウォーカーは、そう言って穴倉の中に潜った。
いや、穴が小さすぎて入れないのだが。
「穴を広げるか?」
「それじゃ彼らの外敵が入ってきちゃうよ」
姉上が物騒な提案をしてくるが、それは却下である。しかし参ったな、カメラで記録をしたいのに、オレではこの穴に入れない。
「連中に持たせるか?」
「どうだろ。さすがに暗闇は確認できないみたいだから、もっていかせても真っ暗な穴が記録されるだけな気が……とりあえず周りの景色だけでも記録しておくか」
「まあそれがいいか」
オレが方向性を決めて周りにカメラを向けて動かす。
「チチ、来ないチチ?」
「穴が小さくて入れんよ」
「チチ! それは大変だチチ! 守護者様が入れないと守って貰えないチチ!」
「ああ、そのことで相談があるんだが。ダンジョンって知ってるか?」
「知ってるチチ! 北の山脈にあるチチ!」
「北の山脈? オレ達のダンジョンとは別のダンジョンか」
「チチ! 守護者様はダンジョンをお持ちでしたかチチ!」
「あたしではなくて弟のだがな」
「すごいチチ!」
目を輝かせてこちらを見るしゃべれる個体、可愛いな。
「ああ、オレのダンジョンにもお前達の家を作りたいと思ってな。家は地面に穴を掘って住んでるみたいだが……」
「チチ! 地下には水が湧くチチ!」
なるほど。川から離れている場所に巣穴があるとは思ったが湧き水が出ていたのか。
「森がいいのか?」
「森に住んでるチチ! 木の実が多く取れるここがいいチチ! 芋虫もいるチチ!」
「雑食なのか」
まあ魔物だし虫も食うか。
「お前達のためにダンジョンの中に住処を作ってやりたい。家は地面のがいいのか?」
「壁に囲まれて出入りができればどこでもいいチチ!」
「それは大丈夫だな。ダンジョンの中だからお前達以外には、いまのところ地竜しかいない」
「地竜は仲良しチチ! あいつらウチらを食わんチチ!」
竜種が食うにはお前達は小さいからじゃないか?
「たまに背中を掃除するチチ! そしたら地面を掘ってくれるチチ! 掘った地面には虫がでるチチ!」
「そ、そうか」
それも採取をしないといけないな。
「地面の中も安全じゃないチチ、土蛇やワームが来たら大騒ぎチチ」
「そうか、そういうのがこない場所に引っ越さないか?」
「こないチチ? そんな場所ないチチ」
「作るんだ。ダンジョンの中だから敵が来ない場所を用意できる。食べ物も水も用意しよう」
「地面に住まなくていいチチ?」
「巣穴を地面に掘っているみたいだが?」
「できるなら木の上に住みたいチチ! 地面の中はかゆくなるチチ!」
どうやら地面の中に住むのは、安全を目的とするためらしい。
「そうか、なら大きな木も必要だな。たくさん用意してやろう」
ダンジョンでは自然環境を自分で設定できる部屋がある。そういうものは作れるとヘンリエッタが言っていたから大丈夫だ。
「チチ! お引越しチチ! 全員呼んでくるチチ!」
「そ、そうか」
途端に地面の巣穴に潜り込んで姿が見えなくなるスクワーチウォーカー。随分あっさりと決まってくれたな。
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