やるべきことが、見えた!
「結局、オレはダンジョンマスターとして何をすればいいんだ? というかダンジョンマスターってなんなんだ?」
ふと疑問に思ったことを口にした。だって今まで聞いた話って、ダンジョンがどういうものかと、生命の秘薬を手に入れるために情報が必要っていうことだ。
オレのイメージだとダンジョンマスターってダンジョンの奥底でダンジョンコアを守っている守護者のイメージだもの。
『ダンジョンマスターは、ダンジョンの守護の役割が与えられます。自然発生したダンジョンコアはダンジョンマスターを近隣の生物の中で強い個体を無作為に選んで、守護者とします。ダンジョンコアはマスターに力を注ぎ、更に強い存在へと本来は作り変えます』
「強い存在? オレ、強くなったのか?」
『申し訳ございません。本来であればマスターに注がれる力は、当艦を稼働させるために使用してしまったため、マスターの強化はあまり行えておりません』
「なんだよ……」
ガッカリだ。
『ダンジョンコアはダンジョンマスターに力を注ぎ込むと共に、ダンジョンコアを守るように使命を与えます。当艦の認識だと、使命と言うより暗示や強迫観念を植え付けるといったものに感じられますが』
「暗示だと?」
姉上の表情が強張る。
『はい、自然発生したダンジョンコアは人知れず周辺の環境を変え、それと同時にダンジョンマスターを指定します。ダンジョンマスターに指定された存在は、ダンジョンコアを守らなければならないものと認識を強制的に変えられ、以降はダンジョンコアを守るだけの存在に、そしてダンジョンコアを使用し、ダンジョン内にもダンジョンを守るための魔物や罠の配置を行います。これはダンジョンコアから流れ込んだ力と共に、知識として理解をし自然と行われることです』
「ヘンリエッタ! グレンにそのようなことをしたのか!?」
「いや、姉上。オレにそんな認識はないんだけど?」
強くなれている感じも全くないし。
『はい、本来であれば環境を変えながら徐々にダンジョンマスターに浸食していくダンジョンコアの力ですが、今回はダンジョンコアをマスターが起動させたため、上下関係が逆転しております。力の受け渡しはダンジョン内にある程度エネルギーが満ちたら行えるようになりますが、当艦の内臓エネルギーは10%以下。本来であれば地脈からエネルギーを吸い上げるのですが、現在位置は地脈の流れから離れており、それも満足に行えません。当艦の現状を維持することと、当艦内のセキュリティを維持することで精一杯です。こちらに関しては準備ができしだい順次行わせていただきます』
「現在はエネルギー不足、ということか」
『はい。それにエネルギーが一定量を超えて、艦長に力の受け渡しを行ったとしても、艦長が当艦の上位存在である限り、こちらから暗示を行うことはございません』
つまり問題ないってことかな? 姉上が少し心配そうな顔をしているけど。
「オレはオレだから、大丈夫だよ」
「それなら、いいんだが」
「大丈夫。そもそも母上の血を引くオレにそんなものが通じるとは思えないし」
もう一度しっかりと頷いておく。
『艦長には艦長の仕事をしていただきたく思います』
「艦長の仕事?」
『当艦はダンジョンです。神の作り上げたシステムである以上、地脈より吸い上げたイレイザーの力を変換し、魔力に作り変えなければなりません』
「何かを生成すればいいのか?」
『そうしていただきたいのですが、それも今は困難です。当艦の現在位置は地脈から遠く、満足にエネルギーが吸い上げられません。イレイザーの力の吸い上げが行われていないわけではないですが、あまり上位の魔物や高性能なアイテムの生成を行うには、膨大な時間がかかります』
生命の秘薬は恐らく最上位のアイテムだろう。幻の一品とも言われているのだから。
『対処方法として、当艦の移動を提案いたします』
「「 移動? 」」
ダンジョンを?
『当艦は調査船です。現在位置が地脈から外れた位置にいるのであれば、こちらから地脈の通り道に移動すれ解決いたします。そしてそれには、現在当艦を覆っている堆積物の対処と、移動する為のエネルギーの確保が必須事項となります』
ここ、山の洞窟の中らしいからな。
『エネルギー源となる魔力の元、他のダンジョンコアの回収と、魔物の魔石や肉体、魔道具等々の収集をお願いしたくございます』
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