39.ソロ・ソロリーヌの頑張り:魔法革命の裏で起こっていたこと
「うぅうう、ぜんぜん、減らないよぉ……」
リス獣人冒険者、ソロ・ソロリーヌは半べそをかいていた。
それもそのはず、スライムの数がぜんぜん減らないのである。
数時間、棍棒を振るうも目の前には、うじゃうじゃと現れるのだ。
「共同依頼でお友達もできるかもなんて思っていた私が馬鹿だったのかなぁ」
冒険者ギルドで紹介される共同依頼には2つの側面がある。
一つは冒険者同士が協力することで、効率よく仕事を終えられること。
そして、もう一つは冒険者同士の交流を深め、連携を強めることだ。
ソロは冒険者を始めて以来、ずっと一人で活動していたが、そろそろ仲間もほしいと思っていたのだ。
彼女は名前がソロというだけで、別段、ソロファイター志望ではない。
ただちょっとだけ、他人に話しかけるのが苦手ではあったが。
しかし、こんなにスライムが多いのでは交流を深めるどころではない。
しまいには雨まで降ってきて、冒険者たちは皆、避難してしまった。
(私ってどうしてこうなんだろう。私は自分が嫌いだ……)
雨宿りをしながら曇り空を眺め、ソロは自己嫌悪に陥る。
勇気を出して他の冒険者に話しかけることのできない自分を。
「スライムが多くて困っちゃいますね」ぐらいの社交辞令の挨拶さえできない自分を。
外交的な種族として知られるリス獣人であるが、彼女はとりわけ落ち込みやすい性格だったのだ。
(こんなのだから私には友達も仲間もできないんだ……)
ソロは頭を抱えて、さらなるダークモードに突入。
その裏ではアンジェリカが巨大なスライムを破壊し、ライカがとどめをさしていたのだが知る由もないことだった。
「そっちに逃げたよっ!」
ソロはアンジェリカの声で我に返る。
そうだ、まだ戦いは終わっていないのだった。
自己嫌悪におぼれているわけにはいかないのだ。
「あわわっ!?」
ソロは木陰から一歩を踏み出そうとするも、木の根っこに足を引っ掛けて盛大に尻餅をつく。
しかし、不思議なことにお尻は痛くない。
まるで着地点にクッションが用意されていたかのような感覚があるではないか。
「あれ?」
そこには赤いスライムが潰れているのだった。
偶然とは言え、最後の一匹のスライムを倒してしまったのである。
お尻は汚れたとはいえ、お手柄なのは間違いない。
「おめでとう!」
「おめでとうございますっ!」
「おめでとうだぜっ!」
「おめでとう!」
アンジェリカやライカなどの冒険者が集まってきて、笑顔で拍手をしてくれる。
皆が皆、これで仕事が終わるのだとスッキリした顔をしていた。
「ありがとう!」
満面の笑みのソロ。
彼女は少しだけ自分のことを好きになれる気がしたのだった。
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