新入生歓迎会③
「うん。迷った」
“こうりゃくキャラ”から逃げて、森の中をめちゃくちゃに進んだおかげで。私は迷子だ。
何処から来たのかも分からない状態に、お手上げだと空を仰ぐ。
木々の間から見える木漏れ日はまださほど時間が経っていない事を示している。
「マズイな。このままだと大捜索とか行なわれそうだ」
西園寺やそのほか生徒会役員の様子を思い出して。
げっそりしている私の耳に、パキッっと地面の小枝を踏む音が聞こえる。
「おや?立花さんどうしてここに?」
反射的に振り向くと白が立っていた。
今日は白衣を着ていない。スラックスではなくズボンを履き動きやすい格好をしている。
(出たな。。)
あの日保健室で出会ってから、ことある事に顔を合わす。保険医の白理人。破壊力抜群の綺麗な顔面と甘い声。嫌な予感しかしない男だが、今のところバラを咲かせる所は見ていない。だからこそ、得体がしれないのだが……
「えっと、み、見回りです」
近づいてくる白、ジリジリとこうたいする私。微妙な空気が流れる。
「フフフッ、どうして立花さんはそんなに私を警戒するのかな?」
目を離さず少しでも距離を取ろうとする私に、白はクスクス笑い、足を止めてくれた。
「もしかして、この白い目や髪が気になるのかい?他の生徒からも人じゃないみたいって言われるけど……」
白は自身の頬を右手で包みながら、長い髪を揺らし「大丈夫、私は人だよ」微笑んだ。
(いや。そんなのは、どうでもいい事なんだけど……)
人でない者なんて、何度も見てるし会っている。
そもそも、私に関わる奴らは大抵人では無い。
そんな事はどうでもいいのだ。問題は……
「顔がいいから……ッッ!!!」
無意識に口が動いていた、慌てて口をおさえる。
動けたという事は。“強制いべんと”では無い、私の失態だ。恐る恐る白に目を向けると、彼は目を丸くして固まっていた。
「ハハッ!気味悪がる子はいてもそんな事を言われたのは初めてだよ」
白は口に手を当てて、凛とした大人の雰囲気を崩して笑う。
あまりに無邪気な笑顔。彼の周りがキラキラ輝いて見えて私は慌てて目を閉じた。
(は、破壊力が強すぎる!!)
「さて、立花さん。ここは〈宝探し〉の区域から外れてしまってるんだ。近くまで送るよ」
一通り笑った白はスっと私の前に手を差し出す。
何ともないように差し出すその手は、思わず取ってしまいそうになるほど自然で優雅だった。
「あっ、いや!手はちょっと……」
「確かに、子供扱いが過ぎたね」
断った私を何も咎める事無く、白は手を引き先を歩き始める。
私はその少し後に続いた。
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