新入生歓迎会①

《5月13日》


【土曜日、私達は近くの山に来ていた。暖かな日差しが木々の間から差し込む。私は清々しい空気を胸いっぱいに、吸い込む。今日は新入生歓迎会当日だ】


(だから、何で山なんだよっ)


行動とは裏腹に、私は悪態を着く。

新入生歓迎会がハイキングなんて、小学校の遠足かと。


(いや、今日日小学生ですらもっといい所行くんじゃね?)


そんな事を考えながら進む私の周りは生徒会のメンバーで固められている。

今から行うレクリエーションの進行を務めるためだ。私と新谷が案を出し、生徒会の協力で完成したレクリエーション。〈宝探し〉

実際にはどんな案を出しても、最終的に宝探しに落ち着くので。案だしなんて時間の無駄なのだが。


『それでは、班に別れてスタートしてください。宝の種類は3種類それぞれ点数が違います!』


自然で遊ぶと言う縛りの元。案出しをやるのだが、今回はカヤックの体験と言う案を出してみた。もちろん、この山にそんな体験ができる場所が無いことは折り込み済み。物は試しで、会場が山から変わらないかなぁとか思っての行動だ。

結果はご覧の通り宝探し。

全くもって無駄な時間をすごした。


『一番点数が高かった班は、この後の昼飯、美味い肉をゲット出来るぜ!!』


【私たちの考えた企画は宝探し。3種類のそれぞれ点数が違う宝を集めて点数を稼いでもらう】


【点数が高かった班から順に。お昼班でやるBBQのお肉が追加されると言うものだ】


【新谷くんの掛け声に、男子が盛り上がる。女子たちはイマイチ乗り気ではない様子。そこで私はもう一度声をかけた】


『それに加えて、なんと。五つ星ホテルの〈ルート賀川〉から極上スイーツ食べ放題チケットを高得点班にプレゼントします!』


【〈ルート賀川〉芸能人やセレブ御用達の高級ホテル。私たち学生では遠く及ばない最高級のスイーツ食べ放題。西園寺会長の計らいにより商品にすることが出来た】


【私の宣言をきいて、女子達もやる気を出したようで日に焼けるからめんどう、虫キモイなどの否定的な声がしなくなる】


『それでは、用意!!!……スタート』


私の宣言と同時に、蜘蛛の子を散らすように有象無象達が森の中へときえる。


『いい感じしゃん?』


片眉を上げて、笑いかけてる新谷にセリフを返しつつ。この場をどうやって離れるか考える。

普通に考えて、私達実行委員は次のBBQの準備をしなければならないのだが……

何故か少し時間があるからと、誰と一緒に行動するかを選ぶ選択の時が来る。その誰かを選ぶと新入生歓迎会終了までそいつと過ごすはめになる。


(いや、そもそも教師達の協力が一切無いことのがおかしいから!!)


周りを見渡すが、大人の姿は一切見えない。

周りにいるのは生徒会のメンバーのみだ。


会長の西園寺はもちろん。副会長の京極もいる。


(京極真也。こいつ、仕事が忙しいとか言ってる割に高確率で生徒会室に居るんだよなぁ。来なかったらいいのに)


『お昼まで、少し時間が飽きそうね。ねずみちゃんはどうする?』


そんな事を考えていると。手が止まっていたのか書記の言ノ葉雪がはなしかけてくる。

生徒会唯一の女性で京極の婚約者。彼女は何故か私の事をねずみちゃんはと読んでくる。意味が分からない。けれど言ノ葉はどの“るーと”でも比較的まともな部類の人間なので安心はできる。


「ねぇ、西園寺眞。普通に考えてこの企画は予算オーバーだと思うんだけど」


声がした方に視線を向ければ、天田が新入生歓迎会のしおりを西園寺に突きつけていた。

あの“いべんと”の翌日。天田はちゃっかり会計職に着いていたのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る