第02話 過ぎ行く夏

大学合格に漕ぎ着け、更なる作詞作曲に追われる日々の中で、

POPS-Kの川上店長さんから勧められた

YAMAHA QY70と言う型式のシーケンサーと言う

作曲マシンを手に入れて、楽曲完成の再起に賭けます。

作曲のノウハウ本には、

「どんなアーティストも、最初は誰かのコード進行をなぞった」

と、あったので、

ジャパニーズインディーズの『Hi-STANDARD』の超有名曲

「STAY GOLD」のコード進行だけを入力して、

そのハーモニーから感じ取れるメロディーを、

出来るだけ原曲から遠く遠くに構えて、一音ずつ置いて行きました。


「PASSING SUMMER」直訳すると【過ぎ行く夏】。

記念すべき第1曲目のタイトルは蝉を主人公にした歌を書きました。

自宅のパソコンに歌詞が残っていたら、この作品の末尾に掲載する予定です。

その後も、コード進行だけを形どった音源データから、

新しいメロディーを創作して、英語で歌詞を書いて、

ジャパニーズインディーズっぽくアレンジ。

徐々にコツを覚え始め、ミニアルバム位なら製作出来そうな構えに成った頃、

一気に窮地に立たされる出来事がありました。

頼まれた訳じゃない、

自分で立候補したウェディングソングが全く形に成らなかったのです。

スランプ過ぎて、コード進行を抜き取る過程すら、おこなっていませんでした。

先ず、ふたりを祝福する歌詞が浮かんで来なかった。

世の中に対して、斜に構えていた訳では無く、

寧ろ、感動を皆と分かち合いたかったのに、

今で言う気分性障害のような状態になってしまい、憂鬱な気持ちに支配されました。

(それだけシーケンサーを凝視したと言う)自分の努力の賜物なのか、

その頃極度の疲れ目で、体感的には視力が一気に落ちたような錯覚に陥りました。

寝起きする自室の棚を見詰めても、本の背表紙がぼやけて読み取れない。

曲は出来ない、視力が落ちたように感じる……

負の材料はたったこれだけで充分でした。

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