第12話 奪還

「ボブロスキーの屋敷に行くぞ!」


「あいつはおかしい、みんなわかってたのに恐ろしくて何も出来なかった…」


「でも今ならこいつらもいないしみんなでかかれば大丈夫だ!」


町の人達はボブロスキーに雇われた男達に蹴りを入れると怒りから目をギラつかせてボブロスキーの屋敷へと歩き出す。


ナディアはそんな事よりもルシファー達の事が気がかりだった。


「私…」


消えた魔物達の後を追おうとすると腕を掴まれた。


「ナディアちゃん、いや、ナディア様すみません。私達が間違ってました!」


「今からナディア様の屋敷を取り返しに参りましょう!」


「ちょ、ちょっと待って!」


ナディアが抵抗するのにも構わずに皆は興奮してナディアを引き連れて屋敷へと歩き出す。



ドンドンドン!


屋敷に着くと扉を叩くが誰も出てこない。


町の人達が押し寄せてくると聞いて従者やメイドはボブロスキーを置いてそそくさと屋敷を出ていっていた。


扉をこじ開けて中へと入ると人の声のする部屋へとなだれ込む。


「ボブロスキー!覚悟しろ!」


「お前の悪事はみんな知ってるぞ……」


部屋の中に入り罵倒を浴びせようとするがボブロスキーの姿をみて町の人達は言葉を失った。


ボブロスキーは広いベッドの上で裸になりそのまわりにたくさんの薄着の女性をはべらせていた。


「こ、これは…」


「不潔!」


女性達は目を逸らし、男達は軽蔑の眼差しを浴びせる。


「まさか俺達の金を集めてこんな事をしていたのか…」


「お前ら…で、出てけ!ここは俺の屋敷だぞ!俺が何をやろうとも俺の勝手だ!」


ボブロスキーは出て行けと喚き散らす。


ボブロスキーのそばにいた女性達は服を掴むと自分達は関係ないとサッと部屋を出ていってしまった。


「あっ!待て!まだ何もしてもらってないぞ」


「揉め事はごめんですよー。料金は後で請求させていただきますね!」


女性は投げキスをして部屋を出ていった。


「金なんて払わんぞー!」


ボブロスキーは枕を扉に投げつける。


醜い姿に町の人達は呆れてその様子を見つめていた。


「あんたは終わりだ、これまでの事は国に報告させて貰うぞ」


「ふん、好きにしろ。俺はちゃんとこの屋敷を手に入れた、何をしようと咎められることなんてない」


ボブロスキーは自信満々にベッドに寝そべった。


「ボブロスキー、これが何かわかる?」


ナディアは父親の遺書をボブロスキーに突きつける。


「ナ、ナディア!何故お前が…」


ボブロスキーはナディアの顔をみて顔を青くする。


「そんな事はいい、これはお父様の最後の言葉よ」


「何言ってる?」


ボブロスキーは訝しげながらナディアの持つ紙を覗き込んだ。


そしてそれを読みながら顔色を変えていく。


「ここにはあなたには気をつけて解雇すると書いてあったわ、あなたはこれを私より先に見つけて処分したのね」


「くそ…」


「ボブロスキーを捕まえろ!牢屋に入れるんだ!」


誰かが叫ぶと一斉にボブロスキーを押さえつける。


「ここは俺の屋敷だ!やっと一番になれたのに!」


「こいつの金を取り返せ!」


「こんなのに騙されていたなんて恥ずかしいわ!」


ボブロスキーは捕えられるとようやく諦めたのかガックリと肩を落として下を向く。


町の人達は歓喜の声をあげて喜びあっていた。


そんな様子を一人離れて眺めるナディアは虚しさを感じていた。

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