全てを奪われた娘の復讐を手伝ってくれたのは魔族でした。

第11話 父の遺書

【ルシファー様！】

ラビが何かを口に咥えて戻ってきた。

ルシファーはそれを掴むと中を確認する。

「なるほどね、ラビよくやった」

【あいつ最悪！ナディアの家で好き勝手。女と裸で遊んでる！】

ラビはぷんぷんと足を踏み鳴らしている。

ボブロスキーをみてかなり頭にきているようだ。

「ラビの持ってきてくれたこれはナディアの父親の手紙だろう。これがあればきっと家を取り戻してやれる」

あとはナディアが魔物を止めればいいだけだと動き出そうとすると…

「おいおいおい！なんだってこんなに魔物がいるんだ！」

顔の赤い男達が人の波をかき分け前に出てきた。

「なんだあれは？」

ルシファーは何故か不快感に襲われる。

するとラビの毛が逆だった！

【あいつらナディア襲った！ぼくも襲った！あいつら嫌い！】

「あいつらが…」

ルシファーの雰囲気が変わる。

今まで穏やかな表情だったのが一変して冷たい瞳で男達を睨みつけた。

「おら！お前らは退いてろ！俺達が魔物なんて一掃してやる！」

男達は武器を手に取ると魔物達に襲いかかった。

魔物はルシファーの言いつけ通りに男達を傷つけることはしなかった。

ただ攻撃をスルスルと避ける。

【ルシファー様、こいつらどうしたらいいですか？疲れまで相手したらいいのか】

魔物がルシファー様の様子をうかがう。

「そいつらだけは手を出していいよ、少しは魔物の恐ろしさも教えておかないとね…」

【ぼくが行く！】

ラビは誰よりも先に飛び出した！

男達のみぞおちに次々に頭突きをお見舞いする。

「ぐっは！」

「こ、こいつ前に痛めつけたやつじゃ…」

「クソ！」

怒り狂った男達はラビに向かって剣を振り下ろした！

「ラビ！」

すると何処から見てたのかナディアが飛び出してきて間に飛び込んだ。

「きゃっ！」

ナディアは肩を押さえる。

剣先が肩をかすり手に血が滴った。

「もうやめて！」

「お前、生きていたのか！？」

男達はナディアの姿に死人でも見るような顔で驚いていた。

「生きていた？」

町の人達は男達の声に眉をひそめた。

「ナディアちゃんが生きていたってどういう事？」

「あっ、いや…そ、それよりも今は魔物の事だろう！？」

男達は誤魔化しながら魔物に飛びかかった。

「やめて！みんなもういいのお願いだから引いて！」

ナディアはルシファーに向かって叫んだ。

「わかった、そこの娘にこの子を助けられた。それに免じて今回は引こう」

ルシファーは他人の様に冷たい声でナディアに話しかける。

「ルシファー…」

「行くぞ！」

ルシファーの声にラビ達魔物達はゾロゾロと森へと消えていく。

「ああ、それと…こんなものを森で拾った。持ち主へ返そう」

ルシファーは手紙をナディアの前に投げつけた。

それを拾ってナディアは中身の内容に驚き目を見開いた。

「これは…お父様の遺書」

「なんだって！」

町の人達が中身を覗き込む、そこにはボブロスキーの企みに気がついた父が屋敷や財産の全てをナディアに継がせると言うものだった。

「あいつ、これを隠し持ってたのか…」

「俺達も騙された！」

「ナディアちゃんごめん、私たち恐ろしくて…ボブロスキーに逆らえなかったの」

町の人達がナディアに頭を下げてくる。

「よし！今からボブロスキーのところに行って真相を確かめよう！」

「そいつらは縛っとけ！」

ボブロスキーに雇われた男達は町人に押さえつけられ拘束された。