第10話 誤解

「でもそんな事したら魔物達が悪者になっちゃう」


心配してルシファーや魔物達をみつめる。


魔物達は姿形は恐ろしく見えたがナディアに対して何かする訳でもなく大人しく待っていた。


その行動は人間と変わりない様に見えた。


「元より嫌われた身だ、今更どうこうなっても気にしないよ」


ルシファーの言葉に魔物達も頷く。


「でも…」


「ほら、これだけ集めたのに何もしない方が迷惑になる。ナディアは早く離れて、一緒にいるところを見られたら計画が台無しになるよ」


ルシファーに優しく背中を押される。


ナディアは何度も何度も振り返りながらその場を離れていった。


魔物達やルシファーが見えなくなるとナディアは前を向いた。


ここまできたら腹をくくろう!


町に入り魔物達が来るのを待っていた。




※※※




「じゃあみんな、話した通りに頼むよ。でも決して人を傷つけないように」


【【【【はーい】】】】


【まぁルシファー様の頼みなら仕方ない】


【でもあの人間僕らの事、怖がらなかったね】


「ナディアはそういう人間なんだ」


ルシファーは嬉しそうに魔物達に話した。


魔物達はルシファーに頭を下げると散らばりながらゾロゾロと町へと向かった。


町の入り口近くに来ると町人を確認する。


町の住人は魔物達が分からないのか、それとも恐怖からか口を開けて固まってしまった。


「た、大変だー!魔物達が町を襲いにきたー!」


町の住人は叫びながら町の中心部へと走っていく。


【まだ何もしてないのになぁ…】


【顔をみて怯えられるのはやはり気持ちいいもんじゃないな】


魔物達は呆れながら町へと入る。


門を少し壊すとそれを見ていた女性が驚き尻もちをつくと叫び出した。


「きゃあー!魔物に襲われたわ!」


自身は何かされたわけでもないのに転んださいに怪我をしたと逃げだす。


その様子に男達は武器を取り出した。


「ボブロスキー様を呼んでこい!どにかして俺達の町を守るぞ!」


町の男達はボブロスキーの屋敷へと走り出した。


他の者は桑や鎌を持ち魔物達に向かって構えるがその足は震えていた。


魔物達が近づくとその分にじり下がる。


「ボブロスキー様の用心棒達が来るまで耐えればいいんだ」


「そうだ、この為に高い金を払ってるんだからな」


町の者達が口々に話し出す。


「じゃあそれを待つか…ラビもまだのようだしな」


ルシファーは魔物達に待機を命じる。




その頃屋敷では町の者の報告にボブロスキーの顔が歪んでいた。


面倒くさそうに手であしらう。


「そのくらい自分達でどうにかできないのか?なんでもかんでも人に頼むのはどうかと思うぞ」


ジロっと睨む。


「あんたが何かあったら面倒見るから自分を支持しろって言ってきたんだろ!これなら前の町長の方が数倍よかった…」


「なんだと!!」


町人の呟きに大声をあげる。


「まぁまぁ、こんな時の為に俺達がいるんだろ」


すると数人の男達が奥から酒瓶を持ったまま出てきた。


「じゃあお前ら頼むぞ」


「はいはい、ボブロスキー様は女の子とゆっくり遊んでて下さいよ」


「え?」


「馬鹿!なんでもない!ほらさっさと行け!」


首を傾げる町の男達を追い出してボブロスキーは屋敷の扉を閉めた。


「ほら、騒ぎは何処だ案内しな」


酔っ払いの男達に不安を覚えながら魔物達が集まる場所に連れていった。

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