第9話 ルシファー

ルシファーはナディアが眠りにつくのを確認するとそっと席を立ち部屋を出る。


部屋の扉に魔法をかけて自分以外は外からは入れないようにした。


【ナディアは大丈夫?】


部屋を出ると扉の前にラビが座り、心配しながら見上げてきた。


「ああ、眠ったよ。その間にラビはナディアの家を探ってきてくれるかな」


【任せて!】


ラビは急いで向かおうとするとルシファーが苦笑して止める。


「待って、そのまま行ったら目立つからね。人から見えなくなる魔法をかけておくよ。それでも気をつけるんだよ」


【うん!】


ラビはわかったと足をばたつかせる。


ルシファーが扉を開くとすごい勢いで飛び出していった。


「あとは…」


ルシファーは他の仲間に声をかける為に家を出て行った。



※※※



「ナディア、大丈夫?もう夜だよ」


「ん…」


ナディアは優しく起こされて目を開ける。


すると目の前にルシファーの顔があった。


「わっ!」


今にもぶつかりそうな程の距離に慌てて飛び起きて布団で顔を隠した。


「よかった、元気そうだね」


慌てる自分とは裏腹にルシファーからは落ち着いた声が返ってきた。


気にした様子もなく一歩下がる。

その様子にナディアも気持ちが落ち着いた。


「お、おはよう」


「おはよう、顔色も良くなったね」


「うん、いっぱい寝てスッキリしたみたい」


ナディアはベッドからおりて立ち上がって伸びをする。


「よかった、ならこれから行こうか」


ルシファーがサッと手を差し出す。


あまりにも自然な仕草にナディアはその手を掴んだ。


ルシファーは嬉しそうにその手を見つめる。


「どこに行くの?」


「それはもちろんナディアの家だよ。いいかい今から言うことをよく聞くんだよ」


ナディアは首を傾げてルシファーを見つめた。



ナディアは町に向かいながらルシファーからこれからの事を説明される。


その内容は今から町を襲うというものだった…


「そんなのダメだよ!」


「本当に襲うわけじゃないよ、その前に君が止めればいいんだ」


「でもどうやって…ルシファーさんは人にしか見えないしそれにルシファーさんに酷いことなんて出来ないよ」


「それはフリでいいよ、ちゃんとこっちもやられたフリをするし…それにみて」


ルシファーが暗闇の中を指さす。


ナディアは目を凝らして暗闇を見つめると、一瞬何か暗闇が動いた気がした。


驚きルシファーの手をギュッと握りしめてそばによる。


「怖がらなくていいよ、僕の仲間だから」


じっと見ていると目が慣れる。


暗闇からはラビの様な魔物達が現れた。


「これみんな魔物なの」


その数は町の人達と同じくらいに見えた。


「これくらいいた方が真実味が出るだろ、じゃあナディアは僕達から離れてていいタイミングで止めに入るんだ。何もしない口だけの男より英雄の少女の話なら皆も信じるだろ」


ルシファーにそう言われるがナディアは気が進まなかった。

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