第4話 しらない町
「いい!ラビはここで待ってて、町はさすがについてきちゃ駄目よ」
ナディアはラビに真剣に話しかける。
魔物だけあって普通の動物よりは言葉を理解してそうな節があった。
ダンっ!
ラビは気に入らないと足を踏み鳴らす。
「何か食べ物買ってきてあげるからいい子に待ってて、ラビの為なのよ」
眉を下げると不満そうに腰を下ろした。
その様子にほっとするが堂々と道の真ん中で待ちそうな雰囲気だった。
「じゃあ…ラビこの荷物見ててくれない?こんな大荷物持って歩けないし…」
荷物を木の影に隠した。
するとラビは荷物を守るようにその前に立つ。
その頼もしい様子が微笑ましくなる。
「お願いね」
荷物から貴重品とお金だけ取り出してナディアは町へと再び戻ってきた。
町はナディアが居なくなっていても普通に回っていた。
そこはまるでしらない町のようだった。
ナディアはボブロスキーの事を町の人に聞きながら情報収集をするが、芳しくない。
みんなナディアを見ると不憫そうに見つめてくるが何か言ってくる様子はなかった。
ボブロスキーを恐れてか皆の口は重かった。
知らないところでボブロスキーは町の人達にまで手を伸ばしていたのだ。
大した成果も得られないままラビと食べるパンを買いとぼとぼと戻ってくると荷物を置いたところに数人の男達がいた。
まさかと思いパンを急いでしまうと走り出す。
「何してるの!」
「こっちに来るな!」
男達はナディアの声に振り返ると手で制止させる。
「魔物がいる、今殺すから離れてろ」
「魔物?」
そう聞いて確信すると、ナディアは制止も聞かずに男達の間をすり抜けて荷物の方へと走り出した。
するとそこには傷つきながら荷物を守っているラビの姿があった。
「女、危ないぞ」
ナディアは男達に向き合う。
「この子があなた達に何かしたの?」
「「はっ?」」
奇妙な事を言うナディアに眉間にシワが寄っていた。
「お前大丈夫か?そいつは魔物だぞ」
「わかってるけど…」
ナディアはラビを見つめる、ラビはナディアを見てほっとしたのかその場に倒れ込んだ。
「あっ!ラビ」
ナディアはラビを抱き上げた。
「その魔物は俺達にいきなり襲いかかってきたんだぞ」
「そうだ、俺達は落ちてる荷物を拾おうとしただけなのになぁ」
そう言ってナディアの荷物を手に持った。
「ちょっとそれ私のよ!ラビは荷物を守っててくれたの」
「魔物が守るだと」
二人は顔を見合わせて笑いだした。
「まて、あんたこの荷物の持ち主なのか?なら好都合だ…」
男達の顔色が変わった。
「な、何…」
ナディアはラビを抱きしめて後ずさりする。
「俺達はある人に頼まれてあんたを探してたんだ」
「ある人」
そう聞いてボブロスキーの顔が浮かんだ。
「あんたに生きてられると困る人がいるんだよ、だから大人しくついてきてくれないか?どうせなら最後にいい思いしたいだろ?」
ナディアを見る目がいやらしくなる。
舌なめずりをしてジリジリとにじり寄ってくる。
「や、やめて!」
声が震える。
町までは距離があり声は届きそうになかった。
捕まる!
そう思って目を閉じると抱きしめていた温もりが熱くなった!
「ギャッ!!」
ラビは傷ついた体で男達に体当たりをする。
「うおっ!」
油断していた男のみぞおちに思いっきりラビの角が命中した。
「ピキュ!」
怯む男達を尻目にラビは私の顔を見ると森の方に視線を向けた。
「わ、わかった!」
ラビの視線に逃げろと言われた。
私は震える足をパンっ!と叩くと立ち上がってラビを抱き上げる。
荷物は諦めラビと森の中へと走り出した。
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