第3話 恩返し

朝の日差しと、鳥のけたたましい鳴き声にナディアは目を覚ました。


「んー、何よこんなに早く…」


なんか体も痛い、目を開けて周りを見渡し 一瞬自分が何処にいるのか分からなくなった。


少し落ち着くと自分が追い出された事に気がついた。


「そうだった…」


寝ても変わらない現実にため息をつくと昨日のうさぎがまだそばにいた。


「あれ、あなたまだいたの?」


もしかしたらまた食事にありつきたいと思っているのかも…


ナディアはカバンを漁るとまたパンを取り出す。


「あなたも食べる?パンはコレで最後になっちゃうけどね…」


パンを二つに割ってうさぎにに差し出す。


うさぎは少し匂いを嗅いで大丈夫そうだとパクッとかぶりついた。


それをみてナディアもパンを口に運ぶ。


「これからどうしよう」


ため息をつきながら隣を見ると美味しそうにパンを食べてる気楽なうさぎがいた。


「お前はいいなぁ…」


頭を撫でると頭に何か突起のようなものがある。


毛をどかして見ると角が生えていた。


「角?もしかしてあなた魔物?」


「ピキュ?」


真ん丸な瞳で首を傾げて見つめてきた。


「可愛い…じゃない」


うさぎはナディアの足にふわふわな頭を擦り寄せた。


「魔物って怖いのかと思ってたけど動物と変わらないのね…それよりも人間の方がよっぽど怖いわ」


ナディアはうさぎの魔物を撫でた。


「さてと、私は行くわね」


荷物を持つとうさぎにお別れをいう。


「あなた人懐っこいから気をつけてね、あなたを捕まえようとする人間だっているんだからね」


わかっているのかいないのか…うさぎは首を傾げた。


だが今は他に構ってる暇はない、どうにかあの男に一泡吹かせてやりたい。


ナディアはとりあえず町の近くに戻ることにした。


森の中を歩いていると後ろから着いてくる音に振り返る。


するとうさぎがピタリと足を止めた。


「あなた、着いてきてももう私は何も持ってないわよ」


うさぎはそんな事を求めている訳じゃないと言うように不機嫌に足を鳴らしてナディアの横に並んだ。


「一緒に行きたいの?仲間は?」


うさぎはナディアの前をぴょんぴょんと元気よく跳ねる。


「仕方ないわね、でも面倒は見れないわよ」


ナディアはそういうとカバンからリボンを取り出す。


そしてうさぎのそばにいき屈むとうさぎに向き合った。


「野良だと狩られちゃうかも知れないから首輪を付けときなさい」


ナディアはうさぎの首にリボンを巻いた。


「ふふ、似合う。可愛いよ」


うさぎの頭を撫でると少し不機嫌そうにする。


「可愛いってやだった?まさか…オスなのかしら」


お腹を覗こうとするとペシッと手を叩かれたが、ふわふわで気持ちがいい。


「ごめんね、じゃあ男の子なのね…うさぎじゃあれだしなんか名前をつけてもいいかな」


じっと見つめると可愛い瞳で期待したように見上げてくる。


「うさぎだし…ラビでいいかな」


少しガックリとした感じでラビは下を向いた。


安直なのは認めるけど名前をつけただけいいよね。


ラビは仕方なさそうに頷いた。


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