頑張り屋で可愛い娘

 年末年始。和花菜は私とのんびりしたいのをグッと堪えて、冬休み開始時から毎日勉強に勤しんでいる。私も休みに入ってからは、家事などを済ませた後に甘いものを持って和花菜のわからない所を教えたりしている。私もまだある程度内容はわかるので、大体の事は教えられてはいる。ただ、和花菜が問いている問題を見ていると逆にたまに私がわからない事があり、その場所は和花菜がしっかり解けていたりするのでそんな時成長や頑張りを感じられたりする。

 今日も家事が一通り終わったのでスーパーで買ったロールケーキ片手に和花菜の部屋に向かうと、机に伏せてすやすやと眠っていた。起こすかどうか迷ったが、ここのとこ疲れていたみたいだったし、なにより安らかな寝顔で眠っていたので起こさない事にした。

 

(可愛い……)


 一緒に寝る時は暗くてよく見えないし、朝はわざわざ眺める時間が無かったり寝ぼけていたりだったが、今こうして娘の寝顔をじっくりと見ているとふとそんな事を思ってしまった。


(……伶菜に似てて、ちょっと違う寝顔)


 伶菜の寝顔は可愛さもあるが、綺麗という感想が一番だったが、まだあどけなさの残る彼女はとても可愛い寝顔だった。


(それでも、大きくなったなぁ)


 ただそれ以上に、小さい頃から見てきた娘の成長を実感する。娘ももう、自分の将来を見据えて行動していく歳なんだなぁ。


「いつも私の為に一人で頑張っている寧音母さんのために、ちゃんと恩を返したいから、いつか対等に支え合っていける存在になりたいから」


 そんな時、少し前に言われた言葉を思い出した。違うよ。和花菜は私なんかより良い人を見つけてさ。私が失った幸せを取り戻せるくらい幸せに過ごしてよ。


「ロールケーキ、冷蔵庫に戻さなきゃ」


 寝ている娘の背中に掛け布団をかぶせて、部屋を後にする。

 目から少し、涙がこぼれた。これはきっと、娘の成長を喜ぶ涙だ。そう考える事しか、私にはできなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る