第31話 大きな蜂からのメッセージ

 かの場所で手を合わせ、その地を去ろうとしたその矢先。

 少し大きめな生命体が、私の耳元に寄ってきました。

 ふと見ると、それは、大きな蜂でした。

 攻撃されるのかと思いきや、そうでもない。

 別にこちらも、攻撃の意図はなかったからね。

 軽く振り払うように、その場を立ち去ることに。

 かといって、かの蜂さんには、手を出していません。

 うっかりすると、刺されかねませんからね。


 それから少し態勢を整え、もう一度周囲を見渡しました。

 すでに、蜂さんは私の目の届かないところに。

 なぜか、写経された紙の置かれた場所の近くに、ミリンダの瓶も。

 これは1980年代から90年代初めのものと思われる。

 ある意味この瓶も、歴史の証明者なのではないか。


 スマホの時計を見ると、頃合いな時間に。

 三差路から来た道を戻ることにします。

 少し小高くなった位置から、再びあの現場を。


 今度は、灯台がしっかりと見える!


 そう、小佐木島に明治時代に建設された、あの白い灯台。ネット上ほうでは確認していたのですが、来てこの方、しっかり見ていなかった、あの灯台。

 前回も、見た記憶がなかったのです。

 32年前は、いうに及ばず。当時はネットもなく、小佐木島を含む三原近辺の旅行ガイドブックを確認した覚えもありませんでしたからね。それは仕方ないにしても、前回来た時にはすでに、ネットで確認できていたはずなのに、見えなかった。

 でも、今回は、行きの高速艇からはもとより、島に来ても、ちゃんと見えた。


 ああ、灯台って、ここにあったのか!!


 もう、そうとしか言いようのない状況でした。

 人間って、案外、あっても見えない、見えていないものってあるのか。

 そんな思いを抱かずにはいられませんでした。


 しかし、なぜ、これまで灯台が見えなかったのか?

 今回ようやく灯台が見えたのは、なぜ?

 ひょっとすると、あの蜂さんのおかげかもしれない。

 あの蜂さんは、私に何かのメッセージを託すべく、やって来たのでしょう。


 一生のうちに一度しか会わない動物なのに、それが強烈に心に残る。

 そんな経験、以前にもありました。

 あれは、母方の関係者からの縁談を拒絶したとき。

 先方は母の若い頃の勤務先の病院の院長夫人。その方の家に伺った時、何匹もいる猫様の中の1匹、それも、院長夫人が一番かわいがっていたというキジトラ柄の猫様が、他の猫が私を遠巻きにしている中、院長夫人や母と同様に、膝の上に乗ってきたことがありました。回数的には飼い主やその知人程ではないにしても、3回のうち1回か2回のペースで、私に乗って来たのです。

 あの時の記憶が、帰り道を進むにつれ、よみがえってきました。

 ひょっとして、あの蜂さん、私にこの問題をしっかり語り継げというメッセージを託してきたのかもしれない。


 そんなことを思っているうちに、小佐木島の港に到着。

 あと10分ほどで、帰りの高速艇がやって参ります。

 今回、帰りはなんと13人ほどの乗船予定。

 今日も、前回同様釣り人が多いようです。天気もいいし。

 あとは、地元のおばあさん。恐らく島民の方かと。

 ひょっと、32年前に道を聞いた方かもしれない。まったく記憶にはないが。


 さて、先ほどの高速艇は予定時刻にやってきました。

 帰りの船では前回同様船内でお金を払って運賃を精算。これ以外方法ない。

 帰りも、あの灯台、はっきりと見えました。

 かくして十数分のうちに、三原港に予定通り戻って参りました。


 さあ、これで昼飯にできるぞ。

 そこから先は、次回に。


 追記:その週の火曜日、滋賀県首長会議にて東近江市長の不登校とフリースクール関連における問題発言がマスコミに大きく取り上げられ、世上を大きく騒がせることとなりました。

 やっぱりこれは、あの蜂さんからのメッセージだったのかもしれません。

 その件について、一仕事することになりましたから。

~ 詳しくは、該当作品群をどうぞ。

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