第2話 あれは、論外ですよ。
西陣織の職人さんの長男にして京都市役所勤務の温厚な方が書くも書き切れないほどのお言葉を用いてお怒りになられたような事件ですが、この方ならずとも、あの事件を「擁護」するような意見は、岡山に戻ったところで、何一つ聞くことなどなかったことは、言うまでもありません。
当時私は、大検(大学入学資格検定。現在のいわゆる高認の前身)や不登校、さらには高校中退問題で活動をされていた玉野市在住の真鍋照雄氏と懇意にさせていただいておりました(今も親交があります)。
その真鍋氏も、この事件には大いにお怒りでしたね。
そりゃあんた、そうでしょう。
不登校、当時はまだ「登校拒否」というネーミングが残っていた時代。
無理やりにでも学校、程度ならまだいいが、どこぞやらに隔離して「矯正」しようなどという発想からくる取組などに、真鍋氏のような方が賛意を示すわけもない。
さらに、その年の9月。
大学の後期の授業料免除の申請をするため、その保証人の署名捺印をいただくべく、大学合格までいた養護施設に参りまして、当時の園長にお会いして、まあ、よもやま話ともつかぬことになるのはいいとして、この話を持出したところ・・・、
「あれは、論外ですよ」
それだけ。たった、それだけ。
まあ、当然かどうかなど論ずるまでもないでしょう。
この方自体は団塊世代で私の両親より少し年上の方でして、若い頃はなんだかんだで入所児童に対し今なら「体罰」ともいえるようなこともされていました。
とはいえ、理不尽なことをされる人ではありませんでしたから(だからと言って免罪されるわけでも正当化されるわけでもないが、ここはそれを「糾弾」することが目的ではないので、ここまで)、そりゃあ、そんな「暴力」を通り越したようなことをする人物の言動に賛意どころか理解さえ示すわけもない。
人のお話もさることながら、こういう事件ともなれば、週刊誌が情報を出してきますわな。近くのコンビニで、「風の子学園」という見出しが表紙にあろうものなら、ともあれ、立ち読みしましたよ。
この頃だったかな、こんなこともあったね。
ある時、そんな感じで週刊誌を読んでおりましたら、知人のグループとお会いしましてね、それで、週刊誌を読んでいると言っていたはずが、翌日以降、私は何と申しましょうか、コンビニで、「エロ本」を読んでいたことにされてしまっていました。
ま、これも、口コミの広がり方の典型と言えば、そうやね。
閑話休題。
さすがに、エロ本でも読んで煩悩を満足させているわけにもいかなくなってきたことを感じた私、何はともあれ、現場というものを自分の目で確かめてみようという気になってきました。
要は、事件の現場に足を運んでみよう、ということです。
大体私自身、いわゆる高校時代、大検という制度がどんなもので、どうすれば受検でき、さらに合格できるのかを、岡山県教育委員会の学事課に行って情報を得たり、さらには「大学入学資格検定便覧」という本を大手書店で見つけて購入したりと、そういうことをきちんとやってきた人間ですからね。
そういう人間が、そのくらいのこと考えないはずもなかろう。
というわけで、さらに1カ月ほどたち、秋もたけなわとなったこの年10月半ばのある日曜日。
私は、朝少し早め程度の時間帯の電車に乗って、三原へと向かいました。
今も同じ電車が走っているこの区間ですが、当時は、もはや少数派となった湘南色でボックスシートの115系電車がこの地域の主力。
いつものように、いつもの電車に乗る間隔で、約1時間30分ほどだったかな。
とにかく、目的地へと向かいました。
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