第七羽【疲労困憊】
家に帰り、靴を揃えて脱ぎ、手を洗ってリビングへ。
ちなみにマンションだ。
「ただいまー」
「おかえりー、随分遅かったわね。どこまで行ってたの?」
キッチンから母の声が聞こえる。
こっちを向いてはいないので、俺が傷だらけだし、ドラゴンを抱えていることに気づいていない。
「雷来山。あとさ、ドラゴン飼っていい?」
「え? ドラゴン? ドラゴンってニュースの?」
キッチンから出てきて、俺の方へ駆け寄ってくる。
「うわアンタ傷だらけになっちゃって、お風呂大変そうねぇ。
この子がドラゴン? ちっちゃいわねぇ〜。
私はいいけど...このマンションペット禁止よぉ?」
「あぁ、それなら...」
そう言ってミユルを、抱き抱えている赤子をあやすように揺らして、喋るように促す。
その内容は、俺が話したことを基準にミユルが自分で考えたことだ。
「ワ、ワラワは犬のように吠えたり、猫のように暴れ回ったりせん...
毛も落とさぬし、身体もちっこいから量は食わぬ...
じゃから住まわせてほしい。頼む!」
少し声が震えていて、顔も俯きながらも真っ直ぐな目でそう伝えた。
「いいわよ〜。パパも許してくれるでしょ」
随分とあっさり決まった。
元から許してくれるとは思っていたが、ここまで早いとは。
「やっぱりな。よかったな、ミユル」
「よかったのじゃ...もうこれで芋虫を食わんで済む...」
それから俺は、ミユルの愚痴をだらだろと聞いていた。
どうやら七日以上山の中で、草や虫を取って食っていたらしい。
動物が少ないやら、毒草を食べてしまったやら、いろいろ大変な思いをしたそうだ。
それと、ドラゴンは俺たち人間が気づく前からこの世界と別世界を行き来しているらしい。
いつから居るのか、いつまで居るのか、誰も知らない。
父さんが帰ってきて、ミユルが住むことを二つ返事で了承してくれた。
「ドラゴンかぁ、カッコいいなぁ!」などと、カブト虫を見つけた小学生のようで、なんだか親近感、同族嫌悪を抱いてしまいそうになる。
そんな話をしていると晩飯の時間に。
晩御飯は、拳一つ分のハンバーグ二つに味噌汁とご飯。
二つ? おかしい、いつもは三つなのに...
角の丸まった机の上を眺めると、父さんのは二つ...いつも通りだ。
母さんのも二つ...これもいつも通り。
俺の横に、机の上に立っているミユルの分を見ると...三つ。
盗られた...!!?
晩御飯と明日の朝ごはんの分が...しょうがない、仕方ないんだこれは。
美味しそうに頬張っているから、もう止めることはできない。
「うむ!この肉の団子は美味しいのぉ!
ワラワの屋敷の侍女にも負けておらん」
「あらそぉお? ありがとね」
「うむ! それにこの地で汁物も食えるとは───」
食べてしまったあとは、ミユルが風呂に入りたいと言って聞かないので、先に入れてやり、浴室の外で待っているとすごい音を立てて溺れてしまった。
少し大きな桶に水を溜めてやっていたのに、調子乗って浴槽に飛び込んだらしい。
そのあとは、ミユルがすぐに寝てしまったので、いつものようにゲームをしてベットに入った。
ミユルは、俺の部屋の机の上に置かれた毛布いっぱいのカゴで丸くなっている。
ちなみに俺は昨日から夏休み、明日は何して過ごそうか。
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