第三羽【始まりはいつも唐突】
それはそれは偉そうで、自分のことをどう考えているのか知りたくなってくる。
ちょっとばかしムカついたが、自分は大人なので子供をあやすように接しよう。
それでもやっぱりイラつきは抑えきれず、枝を掴んでドラゴンを落下させ、片腕で掴む。
「おにぎりでいいか?」
「う、うむ。 許してやろうではないか...」
ドラゴンをぬいぐるみを大切に持つように抱え、不安定な道を歩き、下山する。
幸い、先ほどの変な人には出会わなかった。
その道中でドラゴンが─
「変なところを触るでない!」とか、
「変態!」とか罵ってきた。
どうやら女の子のようだ。
ドラゴンを自転車のカゴに入れ、全速力でペダルを漕ぎ、山を駆け降りる。
ガタガタ揺れて漕いでいるこっちは楽しくなってくるが、乗せられているほうはそうでもないらしい。
そのままコンビニに直行だ。
「なんじゃ、おにぎりというのは握り飯のことじゃったか...」
和風ツナマヨシーチキンと焼きおにぎりを、外の自転車のカゴに待たせていたドラゴンに渡すとそう言われた。
「穀物は好きではないが...まぁよい」
嫌なら食うな、そう思いつつもおにぎりを包んでいるプラスチックの袋を開けてやる。
そのまま食いそうだったからな。
「具は魚介の肉の食感のくせに珍妙な味がするのぉ、どろどろした変な物のせいじゃ。
海苔もパリパリしておらん。
じゃがまぁ、不味くはない。 ギリギリ合格じゃな」
焼きおにぎりも似たような態度をとってきた。
文句を言っていた割にはペロリと平らげ、次は水を所望しだした。
「飲み水はないのか? 食事するなら水は必要じゃろう」
やっぱりしゃくに触るような態度だ。俺でなければ嫌われていただろう。
わざわざ買いに行くほど優しくないので、飲んでいたペットボトルを飲むか、と差し出すとものすごい勢いで拒否してきた。
「うえーっ、誰がお主と間接キスなどするか!
ワラワが今ちびっ子みたいな姿をしているからといって舐めた真似をするでないぞ。
これでも里の長になるものじゃからな!」
「里ってどこの?」
会話を続けながら自転車を押し始める。
人が全然いないとはいえ、店の前でずっと駄弁っておくわけにもいかないからだ。
「
そうじゃ、言っとらんかったのぉ。
ワラワは別世界からの介入者じゃ」
やっぱりというか、わかりきっていたことだった。
非科学的な物が否定されている世界で、ドラゴンとかいう不可思議な存在を平時の物として受け入れる人間ではない。
「なんじゃ、もっと吃驚するかとおもったわい。淡白なやつじゃ」
俺の反応は二の次だ、というトーンで話を続ける。
基本的に我田引水な性格らしいが、里の長になることが認められるのだろうか?
「まぁ、ワラワが来たくて来たんではないがの。
それにワラワの姿も変じゃ、こんなトカゲのような姿ではない。
ほんとはもっと蛇のようにスマートなのじゃ。
...まぁ基本は人型じゃがの」
この後もまだまだ自分語りが続く。
適当なタイミングで相槌を打っていたらゴキゲンになり、ある程度こちら側からも話を振れるように。
「これからなんて呼べば良い?ドラゴンさん」
「これからぁ〜? 一緒におるのか?
まぁ美味い飯を捧げてくれるなら許さんこともないが...
...名前は大事じゃ。固有の存在をさし示し、表現できる。それがそれ足りえることをな。
一つだけなら教えてやろう」
一族名?名字のことだろうか。
どっちがいいか悩んでいると、突然ドラゴンが声を荒げた。
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