紋章
「俺は元の場所に戻る、いやこのダンジョンから出たいのだがどうすればいい?」
「何を言っているのだ。同士よ。普通に転移魔法を使えばいいじゃないか?同士ならば使えるだろう?」
言われて気が付く。
確かにそうじゃんと。我ながら何でこんな簡単なことに気が付かなかったのだろうか。いやはや恥ずかしい。恥ずかしい。
「じゃあ。イト。帰るか」
「はい。ご主人様」
かくして俺はイトと転移で帰ろうとしたらデスリッチに引き止められた。
「まあ。待て、せっかく久しぶりに同士に会えたのじゃ。もう少しゆっくりしてはどうじゃ?」
俺自身は正直もう少しいてもよかったが、何ならむしろ俺の知らない知識や貴重な経験を得ることが出来そうだから、この最強クラスの魔物達と話をしていたいくらいだけど、隣にいるイトを見たら、今の状況(最強クラスの魔物達に囲まれている)に酷く怯えているのでやめることにした。
まあ、でも無理もない。
今この空間はダンジョンの最下層というだけあって恐ろしいなんて言葉が生ぬるく感じるような、控えめに言って頭がおかしいレベルの魔力濃度が漂ってる。
そんでもって最強クラスの魔物達の持つ独特な覇気?力?圧?のようなものがかなり漏れてて空間が悲鳴をあげてるし。
控えめに言ってかなり心臓には悪い場所になってるな。
おそらく普通の人だったらこの空間に入った瞬間にショック死するレベルだな。むしろイトはよく耐えた方だな。
「すまんが、俺の大事なイトが具合を悪そうにしてるんでな、一旦、戻らせてもらうよ。今度は俺一人で来るよ」
「そうかそうか。分かった」
「分かってくれたらなら良かった、じゃあ、詠唱、」
そうして俺はいつもの様に詠唱をして集団転移で帰ろうとした時だった、デスリッチにまたもや引き止められた。
「同士よ。いまだに詠唱などという非効率なことをしておるのか、そんなことせずとも自分の体に詠唱破棄の紋章を刻み込めばいいのではないか?」
なんか、とんでもないパワーワードが聞こえた。詠唱破棄の紋章。明らかに強そうだ。
でも、俺、初めてこの言葉を聞いたのだが?それに紋章を刻むって、え?タトゥーみたいに彫るってことか?
「なんじゃ?もしかして詠唱破棄の紋章の刻み方を知らないのか。しょうがない。では儂がお主に刻んでやろう。ほれ」
デスリッチが俺の方に手をかざした。
たったそれだけで俺の左手の甲の部分に文字通り紋章のようなものが現れる。
色は黒色、見た目は本当に紋章。ラノベとかゲームで見るようなカッコ良い感じの紋章だ。
「これが詠唱破棄の紋章?」
「ああ。そうじゃ。まあ、詳しく紋章について知りたければ儂が生前に書いた、紋章遊び大全完全版(1300ページ)でも読むのじゃな。まあ、見つけるのは恐ろしく大変じゃと思うがのう。なんせ写本含めこの世界に3冊しか存在してないからのう」
それが本当ならば確かに探すの無理だな。というか無理ゲーだろ。
いや、待てよ。
俺には最強のぶっ壊れチート神器。本の神器があるやん。
全部解決したよ。
後で読もっと。
さて、今度こそ帰るか。流石にイトをこれ以上待たせたくないしね。
「じゃあ。俺は今度こそ帰るよ。詠唱破棄の紋章はありがとう。有効に活用させて貰うよ。集団転移」
かくして俺はイトと一緒にダンジョンの一階層に転移した。
―――――――――――――――――――
ダンジョン1階層へと戻った瞬間にイトが膝から崩れ落ちた。
「大丈夫か?イト」
「は、はい。もう大丈夫です。ご主人様。ですが、あそこは余りにも心臓に悪かったです。いや怖かったです。どうしてご主人様はアレが平気なんですか?」
イトは酷く怯えていた。
「どうして平気って言われても。普通に平気なだけだけど?まあでも無理もない。かなりの魔力があったしな」
「いや。魔力じゃないです。あの空間そのものです。あそこは上手く説明出来ないですけど、なんかこう、なんかこう。ひたすらに、ひたすらに、気持ちが悪かったです」
「気持ちが悪い?どういうことだ?」
「いや。そのう、ご主人様は本当に何も感じてないのですよね?だってあの空間はまるで死が強く具現化したような、いるだけで死に当てられて、そのまま殺されてしまいそうな、あの空間にいるだけで体が何かに侵食されるような。そんな感じのナニカを覚えました」
イトは酷く震えていた。
その怯えはさっきの非ではなかった。
声はか細く、体は小刻みに震え、その眼はあの奴隷狩りという地獄経験をした時よりも恐ろしいものを見たというレベルで濁っていた。
なるほど。これは緊張の糸が解けたってことかな?あの場所にいた時は無理やり恐怖を抑え込んでたってことか。
「すまない。イト。それほどあの場所がイトにとって苦痛だったとわ。ごめん、もっと早く出れば良かったな」
「いえ。大丈夫です。ですが、そのう今日は私を抱きしめて眠ってくれませんか?そのう、じゃないと眠れそうにないので」
上目遣いだと・・・。
うちのイトが可愛すぎてヤバい。
いや。不謹慎な上に人の弱みに付け込んでる感あるけど。何このご褒美。最高すぎませんか?
「ああ。分かったぞ、もちろんだともイト」
「ありがとうございます。ご主人様」
かくして宿に戻って、適当にイトと一緒に魔法の特訓をしたり、イトと一緒に本(俺は件の紋章遊び大全完全版(1300ページ)を読んだりしながら、夜はイトを抱きしめて寝ました。
え?抱き心地?
とても良かったです。
え?紋章遊び大全完全版(1300ページ)はどうだったかって。
正直書いてある内容がこの世界の魔法の常識を一から全部ひっくり返した上で、更にその3つ上をいくレベルで濃くてヤバい内容だった。
1300ページって長すぎん思ったけど、むしろ逆だ。よく1300ページでまとめられたと思う。そのレベルだった。
一応全部読んだし、おいおい紋章を活用した魔道具を作ったり、場合によって自分の体に紋章を刻んでくよ。
まあ、気になったらあの場所に転移してデスリッチに聞けばいいしね。
―――――――――――――――――――
紋章の件はおいおい説明していきます。
更新が遅れた理由はバイトが死ぬほど忙しかったのと、モチベーションがなかったからです。
つまり私が悪いということです。
本当に心の底から申し訳ございません。
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