ダンジョン1層からダンジョン最下層に転移する罠とか作るなよ


 俺は今、王都にある世界最大級と言われているダンジョンの最下層にいる。

 辺りを見渡せば大量の魔物、それも俺が瞬殺したとはいえ、街一つ崩壊させる程の力を持つレッドドラゴンを余裕で超えるレベルの化け物が、うじゃうじゃのうじゃうじゃ。

 軽くメガネの神器で鑑定しただけだが、キングキマイラにブラックドラゴン、オーガロードにデスリッチ、デモンモンスターにトゥルーバンパイア、人型の上級悪魔に明らかにアレの形をした超級悪魔マーラ様と。なるほどね。馬鹿じゃないのか?


 敢えてもう一度言おう、俺とイトは王都にある世界最大級と言われているダンジョンの最下層にいる。そんでもってその最下層にいる化け物が可愛く見えるレベルの最強クラスの魔物達に囲まれている。

 もちろん自力で辿り着いたわけではない、転移トラップに嵌ってしまって転移をしてしまったのだ。


 それもダンジョンの1階層から。


 意味が分からないが事実なのだ。そもそも論としてダンジョンの1階層から転移トラップなんていう高度なトラップがあること自体がおかしいのだが。


 まあ。うん本当に何でこうなった。


 ―――――――――――――――――――――――

 かくして何故こうなったのか時を戻せば数日前に戻る。


 イトの装備を買って作って、魔改造を施した後、宿でゆっくり体を休ませてから、山田学園を目指して王都に走った。

 俺が魔改造した成長の短剣のおかげでイトの走るスピードが恐ろしく上昇し、僅か3日で王都まで辿り着いた。

 本来ならばもっと時間がかかる道のりではあったはずだが、まあ、確実に人間をやめている俺と成長の短剣によって人外の力を手に入れた俺とイトの本気の走りだ。

 それはまあ。行けるわなって話だ。


 だけどここで大きな問題が起きた、受験までまだ時間がある問題だ。

 具体的には受験まで後1か月もある。


 いや、正確に言えば1か月-4日なのだが。まあ、どちらにせよ時間がある。

 とどのつまり暇ということだ。

 それでも初めての王都ということで俺もイトも結構新鮮な気持ちで楽しく観光が出来た。

 王都にあるケーキ屋さんを巡ったり、掘り出し物がないか、市場を見て回ったり、鍛冶屋にも顔を出した。

 流石に神器はなかったが、市場の方には結構よさげな掘り出し物が見つかったし適当に転売をしてお金を稼ごうかとも思ったが、別にお金に困ってる訳でもないし、現実世界の方で欲しかったカードやフィギアが転売されてアホ程高くなった嫌な思い出が頭に過ったので何となく転売は辞めておいた。

 俺のアイテムボックスの中に死蔵されている。

 いやまあ、アイテムボックスの中に死蔵されているっての考えたら転売して市場に出した方がいいかもしれないけど。

 といっても市場で手に入れた掘り出し物は美術品がほとんどで美術品以外となったらば対象者を呪う禁忌指定されてる魔法がふんだんに使われているヤバい代物が3つだけだったが。うん、やっぱりアイテムボックスに死蔵しておこう。


 そんなこんなで1週間程イトと楽しく王都を観光をしてたが、正直俺もイトも飽きて来た。

 当たり前の話だ。王都が広くて大きいって言っても平民?の俺とイトではそもそも行ける場所に限りがあるし、ある程度金に任せて買い物もして楽しんでたら、それは飽きるって話だ。

 じゃあ、何をしようかとなった時に、王都には世界最大級と言われているダンジョンがあるというのを知った。

 なんなら世界最大級と言われているダンジョンがあるからこそ、ここを王都としてひたすらに栄えて行ったというのも知った。

 それは凄いなと思うと同時にそうだダンジョンに行こうとなった訳で、即行動のワクワク気分でダンジョンに潜って、潜って10分くらいで突然転移トラップに引っかかってダンジョンの最下層に転移した。


 という訳で今に至るという訳だ。

 


 ・・・・・・・・・



 馬鹿じゃないのか?

 やっぱり意味が分からないよ・


 因みにメガネの神器で鑑定したらこの最下層はダンジョン255階層だった。



 ・・・・・・・・


「なんでダンジョンの1階層から255階層まで飛んでるんだよ。馬鹿野郎~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

 俺の魂の叫びがダンジョンに響き渡った。

 最強クラスの魔物に囲まれている普通は叫んじゃいけないのだが、余りの意味の分からない事態に叫ばずにはいられなかった。


「ご主人様。どうしましょう。震えが止まりません」

 俺は健康指輪の神器のおかげが、それとも元々の精神性が異常なのか。最強クラスの魔物を前に割と余裕があった。

 だけとイトは違った、震えて怯えている。

 俺はそんなイトの頭をそっと撫でてやる。


「大丈夫だ。安心しろ。俺がいる」

 なんてカッコつけて行ったが、余裕なんてのは一ミリもない、俺だけならば健康指輪の神器もあるし無理やり全員皆殺しというのも出来なくはないが、今はイトがいる。

 ミスラの指輪があるのでイトも実質的には不老不死に近いが、ブラックドラゴンによって喰われたりしたら、それもどうなるか分からない。

 下手したら腕を破壊されてミスラの指輪の効果が発揮されずにそのままデッドエンドってのもあり得る。


 だから、俺はイトをある程度守りながらこの状況をくぐり抜けなければならないということだ。

 

 うん。無理じゃね?どうやってこの状況をくぐり抜けれるのですか?誰か教えてくれ。


「同士よ。それはお主の眷属か?」

 俺が一人で悩んでいたらトゥルーバンパイアが俺に話しかけて来た。

 同士という余りにも意味の分からない言葉に頭が???でいっぱいになる。


「もしかして、お主はいきなりここに転移して戸惑っておるのか?」

 今度はデスリッチが顎の骨をカタカタさせて俺に質問してくる。

 一瞬、返答に戸惑いつつも俺はデスリッチからもトゥルーバンパイアからも敵対意思のようなものを感じなかったので、正直に答えることを決めた。


「は。はい。いきなりここに転移して戸惑ってます」


「そうだったのか。そういえば1階層に一定上の実力を持った存在のみに用意された完全ランダム転移トラップがあったのう。どうやらお主はそれに引っかかったようじゃな」

 いや、何その質の悪すぎる転移トラップ。しかも完全ランダムで最下層を引く確率って、辛すぎだろ。


「まあ。よい。それでお主は元の場所に戻りたいかのう?」


「それは、もちろん戻りたいです」


「そうか。では、戻り方を教えてやろう」


「え?いいんですか?」

 デスリッチって確か死を振りまく最悪の厄災だったよな?え?普通に親切なのだが。


「ああ、同士が困っておるのじゃ、手助けをするのは当たり前のことじゃ」


「ああ。そうだな。確かにそうだな」


「当たり前の話だな」


「ワレモドウイダ」

 他の最強クラスの魔物達もその言葉に同意をしだす。

 つか、何ださっきから言ってるその同士ってのは?

 ずっと気にはなってるのだが、なんかこう意味を聞くのが怖いのだが。いやまあ無知は罪だからな、聞いてみるか。聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥ってね。


「その。同士ってどういう意味ですか?正直に言うと俺は君たちの同士になった覚えはないんだけど」


「ハハハハハ。何を言っているのだね。その理を超えた魔力量、理外の領域にいる。まさしく我らの同士ではないか」

 理を超えた魔力量、理外の領域、そして今の状況。これだけのピースが揃ったのだ。俺の頭の中にいるライトノベル脳が一つの仮説を生み出した。


 つまり、この最強クラスの魔物達は理を超えた魔力量もとい理を超えるレベルの力を持っている存在を同士として認識して友好的に接するという特性のようなものがあるのだ。

 言い換えればこの魔物達は全員、理外の領域に至る何かを持っている化け物であり、もしも俺の魔力量が理外の領域に至っていなければ容赦なく殺されていたということだろう。

 うん。怖すぎませんか?


 まあ、いいか。今はこの状況をありがたく利用させて貰おうか。


―――――――――――――――――


 面白いと思って頂けましたら星やハートを頂きました嬉しい限りです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る