結婚の挨拶ですか?
俺とイトは冒険者ギルドに行き受付嬢に事情を説明しつつAランクの証明書を見せたら簡単にイトの村の人達を保護してある場所まで案内された。
流石Aランクだ。力がありますね。手に入れておいて良かったよ。ありがとう怖い人、じゃなかったギルドマスター。
そんな訳で案内された場所にはたくさんの獣人族の人達がいた。
幸いというべきか怪我をしている人は結構いたが、大きな怪我をしてる人はおらず。また攫われてから数日しかたっていないのと。多分商品価値低下を防ぐためか、ひどい扱いをされている人もほとんどいなかったし、食料も最低限与えられていた。
ようは。それなりに皆元気だったということだ。
それを見たイトはその中から二人の獣人族に飛び込んだ。いや。二人のなんて言い方はおかしいな、イトの両親の胸に飛び込んだ。
うん。感動の再開だな。
襲われて奴隷にされ、二度と会えないと思っていた家族との再会だ。
これはなんか少し泣けてきた。
いや、まあイト以外はあったことないんだけど、イトとの主従契約の時に流れ込んだ知識というか記憶によって結構、情?みたいなのを感じてしまう。
「お母さん。お父さん。無事でよかった~~~」
イトの嬉しい声が聞こえて主である俺としても嬉しいわ。
いや。本当に助け出せてよかったわ。
さてと俺はこの感動の再開に水を差すような野暮な男ではないし。外に出て本でも読んでますか。
俺は一人そう思い、外に出てさっき読んでいたラノベを読み始めた。
それから暫くして、ラノベがクライマックスのいいところでいきなり何か俺の腹に突っ込んできた。
「ご主人様。どうしていなくなったりしたんですか。私を捨てないで下さい」
イトがそう泣きながら俺の服を掴む。ヤベ超かわいいなって。待て、捨てないでってそんなつもりは一切ないんだが。
「イト、俺は別にイトを捨てたわけじゃない。ただ家族との感動の再開だから俺は少しお邪魔かなと思っただけだ」
「そんなことはありません。イトとご主人様はもう主従契約を結んだ身です。何があっても一緒にいてください」
イトが俺にそう泣きながら上目遣いで懇願してくる。うん、こんな顔でそう言われたら断れないな。というか破壊力が強すぎる。
ナデナデしよう。
「ああ。ごめんなイト。俺が悪かったよ。イトといつまでも一緒にいると誓うよ」
「ありがとうございます。ご主人様、ではあのう、そのう、ご主人様のことを両親に紹介したいのですがよろしいですか?」
紹介って、まあ確かに普通に考えてみれば俺はイトと主従契約を結んだんだ。
それを両親に紹介するのは当たり前だな。ただ何というか結婚を前提にお付き合いしてますって彼女の父親に土下座するような変な感じがする。
「ああ。大丈夫だぞイト」
俺がそういうとイトの顔がパ~って明るくなる。
「ありがとうございます。ではこちらに来てください」
そしてイトの案内でイトの村の人達が保護されている場所に連れられた。
イトの両親の方から俺とイトに歩み寄ってくる。
「君がケンジ殿か。イトから話は聞いたよ。どうかどうかイトを幸せにしてやってくれ」
そういきなりイトの父親に頭を下げられた。
ナニコレ?俺はイトと結婚する感じのあれじゃん。いや、まあ主従契約を結んでるわけだからある意味あってはいるけど。
つか、逆じゃね?結婚だったら俺の方から娘さんを幸せにしますって頭を下げんへん?我ながら馬鹿なことを考えてるな。まあいいか。俺らしいし。
「分かりました。絶対にイトのことを幸せにして見せます。だから娘さんを私に下さい」
俺はまあ元々イトのことを幸せにするつもりだったし、ついでに何となくのノリ?のようなものでそう言い切って頭を下げる。
完璧に結婚の挨拶ですね。はい。
「そうか。ありがとう。ケンジ殿」
イトの父親が俺に深々と頭を下げる。
「イト、いい人を見つけたわね。奴隷にされた時は完全に終わったと思ったけど。それを簡単に救い出して、今こうして保護までしてくれる。そんな力を持った人なんて中々いないわよ。よく捕まえたわね。流石私の娘よ」
イトの母親がそんなことを言い出す。うん、捕まえたって、まあ、あながち間違いでもないけど。でもまあ確かに俺って結構力は持ってるからな、世界でもトップクラスどころか最強レベルの魔力にぶっ壊れチート神器を3つも持ち、魔法を使えばお金も自由に稼げる。ついでにギルドランクもAやしね。
俺超有能やん。我ながら凄いな。
「ちょっと、お母さん、そんなことをご主人様の前で言わないでよ」
イトが照れながら母親に文句を言う。その姿は本当に家族って感じがした。いやまあ家族なんやけど。
「さてと、じゃあ、これからどうしますか?俺の力を使えば元の村を完全な状態以上に戻したうえで二度と奴隷狩りが入ってこれないように強力な結界を張ることが出来るけど」
せっかくなので俺はそう提案をした。
まあ、可能なら元の村で暮らせるようになった方がいいだろうっていう俺なりの配慮って奴だ。
「え?本当ですか。そんなことが出来るのですか?」
イトの父親が偉く驚く。まあ確かに驚くはな。実際結構凄いことを言っている自覚はあるしさ。
「はい出来ますよ。何なら今からでも村に戻って直せますよ」
「それはぜひお願いします」
イトの父親がそう言って頭を下げる。
「じゃあ。今から直して来ますね。イト行くよ。詠唱・空間よ空間よ、我は望むイトの住んでいた村を、我は望む、そこへ転移せんことを、空間の理よ、空間という概念よ、ああ、我が声と魔力に答えて我とイトを転移させたまえ。空間魔法・集団転移」
かくして俺はイトと一緒に村へ転移した。
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