Aランクになったど~~~~~~~

 かくして俺は怖そうな人というか怖い人によって案内されたのは冒険者ギルドの最上階の部屋だった。

 その部屋はまあかなり良さげな部屋だった。金銀ピカピカというわけではないが。宝石や金が程よく散りばめられて、置いてあるもの全てが匠の技を感じさせられる木の家具であり凄く落ち着けるような空間、というか和室だった。

 絶対転生者の影響だろうなと思いながらも和室の中央にドンと置いてある椅子と机に何とも言えない違和感を抱く。

 ただ一人でこのファンタジー世界で和室に裸足で座るって文化ってのを根付かせるのは難しいわなって思い納得する。


「どうぞお掛けください」

 怖い人にそう言われる。

 俺はおとなしく椅子に座るって、うわ。この椅子凄いフカフカで座り心地がいいな。


「さて、大魔導士様。この度は真にありがとうございました。魔物暴走の一件しかり、奴隷騒ぎの一件しかり、もしも大魔導士様がいなければこの町は魔物どもに荒らされ。地下ではクズ共のよって人身売買がされるという最悪な状況になっていました。この冒険者ギルドのギルドマスターとして心から感謝いたします」

 そう言って頭を下げられた。

 うん。なるほどね。この怖い人。ギルドマスターだったか。そうなると皆の態度も納得がいくな。いやはやいやはやですね。


「お顔を上げてください、ギルドマスター私は人として当たり前のことをしたまでです」

 俺はギルドマスターということで敬意を払った方がよさそうな気がするので一応拙くはあるが敬語を使う。


「いえいえ、そうは行きません。私はギルドマスターとして大魔導士様には報酬を支払わなければなりません。というわけでどうぞこれをお納めください」

 ギルドマスターが俺に金貨・大金貨の入った袋を渡してくる。俺はそれを受取ろうかと思ってふと思う。

 今回の報酬、お金よりもギルドランクのほうがよくないかと。

 師匠のところにいるときに本で読んで知ったのだがギルドランクをAまであげるのに正攻法では1年以上確実にかかる。理由としてはBクラスに上がるための試験条件の一つに1年以上ギルドに在籍が含まれるからだ。

 それは俺としては少々というか、かなり面倒なのでな。出来る限り早くAランクになりたい。Aランクってだけで結構色々特典がつくし、イトがいる今冒険者ランクAの称号は何かと役に立つ。


「いえ。これは要りません。ギルドマスターその代わりに私のギルドランクをAで登録してください」


「え?そんなことでいいのですか?大魔導士様の実力があれば1年程あればギルドランクAまで簡単に上げれると思いますが?」

 その1年が面倒なんだよな。


「いや。それで大丈夫です。それに逆に言えば1年は絶対にかかるということでしょう。それはとても面倒じゃないですか。その点、こうやって最初からAランクで登録すればその面倒をかけずに済むのでね。後はまあ、私はやろうと思えばお金なんていくらでも稼げますから」

 お金をいくらでも稼げるというのは本当だ。本を使って手に入れられる莫大な知識と転移魔法を空間魔法を使えば超絶簡単に転売もとい商売が出来るし。

 錬金魔法を使えば炭をダイヤモンドに変えることとかも容易だしね。うん。マジでお金に苦労する未来が見えないわ。


「なるほど。確かにその通りですね。分かりました。大魔導士様にギルドランクAをあげましょう」

 ギルドマスターは俺の言葉に納得して報酬を約束してくれる。よし、これで俺は面倒そうだったギルドランク上げをしなくてすむ。ありがたいですね。


「そうですか。ありがとうございます」


「いえいえ、こちらこそありがとうございます。ではギルドの証を作成する為の機材をお持ちしますのでしばらくお待ちください」

 ギルドマスターは俺にそう言って頭を下げて部屋を出る。


 俺は適当に本の神器を使ってライトノベルを読みながら待つこと3分。


 ギルドマスターが水晶と小型のプリンターのようなものを持って戻ってきた。


「では、大魔導士様こちらの鑑定水晶にお触れください」


 俺は水晶に触れた。

 そうすると小型プリンターから一枚のカードが印刷されて出てくる。


 そこにはこう書かれていた。


 名前・ケンジ 性別・男 職業・大魔導士

 ギルドランク・A

 魔力・SS

 身体能力・B


 うん。マジかよ。簡易的なステータスっぽいのが出てしまったよ。

 というかこんなのあったな。よくよく考えたら本に書いてあったな。いや、すっかり忘れていた。お恥ずかしい。

 まあいいや。にしても職業・大魔導士か凄いな。ほんでもって魔力・SSって明らかに狂った数値だな。

 えっと確か本には人間のランク最高値はSって書いたあったけな?エルフとか魔族で最高がSSだった筈。ようは物語に出てくるような伝説の勇者の魔力がSで、物語に出てくるような邪悪な魔王でSSとかそんなレベルってことだ。

 そう考えるとかなり凄い、いや凄いとかのレベル余裕で超えてるな。俺って人間でありながら、伝説の勇者を超えて、物語に出てくるような邪悪な魔王と同レベルの魔力保有者ってことになるからな。

 更に言えば健康指輪の神器があるから実質的な魔力切れは起こらないと。

 なるほどね控えめに言って人外の化け物だな。


「いやはや。流石大魔導士様ですね。いやケンジ様とお呼びした方がよろしいでしょうか?」

 ギルドマスターが明らかに俺の能力値を見て驚きながら俺にペコペコと頭を下げる。なんかこう凄く腰が低い。

 さっきまでのあの強そうな感じは何処へいったのやらやら。心なしかオーラが凄く怯えている。なんかごめんなさい。


「いや。別に大魔導士様でいいですよ。ケンジ様は流石に少々恥ずかしいです。あ、それではギルドカードも貰えましたし、私は今からやることがって、あ、そうだ。ギルドマスター頼みがあります」


「大魔導士様の頼みとあれば出来る範囲であればなんだってこなしますよ」


「では、ギルドマスター、多分捕まっていた元奴隷達の中に数日前に村ごと奴隷にされた獣人族がいると思うのですが、その人たちと会わせて貰えませんか?」


「分かりました。その程度の事でしたらいつでも大丈夫です。大魔導士様の都合が良い時に私含め受付嬢にでもお聞きください。すぐに会える準備をいたしますから」


「そうですか。では数分後にもう一回来るからその時に会わせてもらいますね。というわけでまた。空間魔法・空間転移」

 俺はイトの所に転移した。


 イトはまだぐっすりと眠っていた。

 俺は結界を解除し。イトの体をそっとゆらしながら声をかける。


「イト。起きろ~、起きろ~、イトの村の皆を助けたぞ~」

 しばらくゆすってあげながら声を掛けたらイトが目を覚ます。


「あれ、ご主人様・・・」


「ああ、イト目が覚めたか。朗報だぞ。お前の村の皆を救ってきたぞ」


「え?本当ですか?ご主人様・・・村の皆が・・・」

 イトが俺の言葉に目を丸くし驚き泣き出した。


「ちょっと、泣くな泣くな泣くな。嬉しい気持ちは分かるが泣くのは皆と再会してからだぞ」

 俺はイトの頭を撫でながら声をかけた。


「はい。そうですね。ありがとうございます。ご主人様」

 イトは泣き止み俺にそう言ってくれる。


「じゃあ一緒にイトの村の皆に会いに行くぞ」


「はい。行きましょうご主人様」

 かくして俺とイトは宿を出てイトの村の人達にあうために冒険者ギルドに向かった。


 ――――――――――――――


 冒険者ギルドランク上げるのやろうかと思ったけど。なんか面倒くさくなったのでスキップさせました。

 後、主人公は知らないけど、怖い人もとい今回登場したギルドマスターはかなりのベテランであり元Sランク冒険者、過去には王都のギルドマスターを勤めていた経験を持ち、かなりの権限を持っている。

 普通のギルドマスターは精々Bランクまで上げるのが精一杯だが、彼だけ特別にA ランクまでランクを上げることを許可されています。


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