偉大なる魔導士様(主人公)は依頼を出すそうです

 転移した先では魔物の大群と騎士やら冒険者やらが死闘を繰り広げている最中だった。

 因みに圧倒的に魔物優勢である。

 俺はこの光景を見ながら、攻撃魔法で魔物を全部文字通り肉片にするか、騎士と冒険者の人達を治癒&強化させるか悩んだ。

 悩んで、落ちついて考えたらこんな乱戦の中、攻撃魔法をぶっ放なしたらダメじゃん。俺のせいで新たな犠牲者が出ることに気が付いた。

 という訳で後者だな。それが一番安全そうだ。


「さてと。詠唱・我が願うは勇敢にも魔物の群れから人々を助けようと奮起した冒険者、騎士の諸君らである。我は彼らを癒すとともに敬意を示す、ぼろぼろになりながらもこの町を救うべく立ち向かった彼らに、そして、彼らに我は微力ながら力を与える。治癒魔法・集団再生・強化魔法・集団身体強化」

 俺の放った魔法はまたたくまに傷つき倒れていた、冒険者を騎士達の体を癒し、力を与えた。


「うお~~~~~~、力が湧いてくるぞ~~~~~」「こんな所でへばってたまるか」

「やるぞ~~~~、まだまだ、俺は戦えるぞ」「傷が癒えた、力も沸く、最高だぜ」

「魔物なんてぶち殺してやれ」「この町を守るのは俺達だ」「もう、魔物の好きにはさせるか」

「我らの底力を魔物どもに見せてやるぞ」「おう、気合を入れるぜ」

「お前ら、行くぞ~~~、俺らは最強だ~~~~~」「そうだ」「そうだ」「そうだ」

「オ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

 彼らが自分で自分らを鼓舞して、魔物の群れに突撃する。

 一応もう少し援護しますか。


「呪魔法・身体低下・防御低下」

 俺は呪魔法を使い魔物達の能力を下げた。

 その結果は圧倒的だった。傷が癒え、身体能力が強化された彼らとは逆に、傷も癒えておらず、能力が下げられた魔物、どちらが勝つかなんてのは明白過ぎる程明白だ。

 あっという間に、それこそ、大人と子供ぐらいの差で殺されていく魔物達、もはや可哀想ってくらいにぼっこぼこにしていく。


 そして10分後


 魔物達は一匹残らず殲滅された。


「さてと、しっかりと結果を見届けたし、イトの所に戻りますか。空間魔法・k」

 俺が魔法を唱えようとした時だった。


「お待ちください、偉大なる魔導士様」

 さっきまで戦っていた、冒険者に騎士達が一斉に俺の方を向き頭を下げた。(冒険者は一部頭を下げていないが、騎士は全員頭を下げている)


「偉大なる魔導士様の魔法により、我らは救われました。もし、偉大なる魔導士様がいなければ私共は皆魔物の餌として食われ、我らの愛するこの町も蹂躙されていたことでしょう。今回の恩をお返しいたしたいのですが、どうすればよろしいでしょうか?」

 一人。元は豪華だったのだろうが、魔物との戦闘でボロボロになったであろう鎧を身に着けている指揮官のような人が俺に頭を下げてそう言ってきた。


「いや、そんなこと言われてもって、いや待てよ。じゃあお願いしようかな、俺今から獣人を攫い奴隷にしているクソったれた犯罪者どもを血祭りにあげようと思ってたんだけど、その協力をしてくれないかな?」

 我ながら良い事を思いついたわ。彼らとしても恩を返せたと気負うことがなくなり、俺としても非常にスムーズに事が運べそうでラッキーと正に一石二鳥だな。


「分かりました、では、我ら黒我騎士団は全力を持ってその犯罪者どもを血祭に上げるお手伝いをいたしましょう」

「おいおい、黒我騎士団だけじゃなくて、俺ら冒険者も手伝うぜ、何一度は死んだも同然のこの命、あんたの為なら何だってするぜ」

 冒険者の何人かがカッコいいことを言いだす。

 これは普通にありがたいかな、冒険者の力を使えば俺の空間魔法・空間把握では把握しきれない対象者の具体的な顔や、実際の状況やらを把握して貰えそうだし、その他、陽動やら奴隷救出にも活躍するだろう。

 人手はあるに越したことはない。


「それはありがたい。あのクソったれた犯罪者を血祭に上げるのを手伝ってくれ。てなわけで早速行きますか」

 俺は早速、犯罪組織に地獄をみせにいくかと思ったら引き止められた。


「あの、すみません少し時間をいただけませんか、この魔物の死体の処理をしないといけないので」

 結構な人数が俺に賛同して協力を申し出てくる中、一人魔導士っぽい人が申し訳なさそうに手を挙げて俺に言ってきた。


「あ~、ごめん、ごめん、確かに魔物の死体をそのままにしていたら、病の温床にもなるし、血の匂いに誘われて魔物が寄ってきたりと結構危ないからね、てなわけで、空間魔法・異空間・風魔法・吸引」

 俺が魔法を唱えた瞬間魔物の死体は宙を浮き俺の出した異空間に吸い込まれていく。


「いや、これだけじゃ不十分かな、聖魔法・クリーンからの土魔法・土壁・土壁強化・土強度上昇」

 魔物や人の血で汚れていた地面が城壁が一瞬でキレイになり、魔物の攻撃により少々ボロボロだった城壁に新しく壁が覆いかぶさり、新品同然の様になる。

 我ながら凄い魔法だな。魔力消費は中々にエグイが。


「流石ですね。偉大なる魔導士様、私共がまともに修復しようと思ったら3日はかかるであろう作業を一瞬で終わらせるとは」

 逆に3日で終わるのかよ、結構ボロボロだったぞ。俺みたいな魔法は使えないだろうに流石異世界スゲー。


「まあね、あ、そういえばこの魔物の死体いる?結構ぐちゃぐちゃだけど、ある程度は使えると思うけど」

「いやいや、素材は要りません、全て偉大なる魔導士様がお使いください、冒険者もそれでいいか?」

 俺の質問をさっきの指揮官って感じの人がそう答えてくれる。

 まあ、確かにかなりボロボロだったしいらんか。ここはありがたく貰っておこう。


「いや、それは、少し納得いかないね、確かに俺たちは魔導士様のおかげで命を救われた。だからといって、追加報酬として分け与えられている魔物の素材を、はい、そうですかって渡せるわけがないだろ」

 一人の冒険者の声に対して、一部の冒険者は「命があっただけ良かった」だの、「魔導士様に渡すべきだ」だの、「俺らは魔導士様に命を救われているんだ、素材ぐらい渡していいだろ」って意見がでるが、一部の冒険者は俺を否定するように、「俺らだけでも勝てていた」だの、「あんたのやったことは余計なことだ」とか、「何で俺らがお前に素材を渡さなければいけないのだ」とか、結構ボロクソ言ってきた。


 まあ、もちろん、言わんとしていることは納得できるし、別に俺自体めちゃくちゃこの魔物の素材が欲しいわけでもない。

 ただ、今から素材を分けるだ、なんだとなったら面倒で手間がかかる上に、その間に奴隷商人に逃げられる可能性だってある。そうなるのは絶対に避けたい。じゃあ俺一人で行くかって思ったがせっかく得られる協力をなしにしてしまうの困る。非常に困る。

 じゃあ、どうするかって・・・どうしようか?ん?あれ?・・・いい方法があるやん、絶対的に平等で誰もが納得できる万能アイテムが。

 そうお金だ。

 最強にして最高のアイテムお金があるじゃないか。


「分かった。分かった。じゃあ、冒険者には私から依頼を出そう。報酬は今この場にいる冒険者一人に金貨1枚ずつ、何か大きな功績を上げたら最大で大金貨1枚の特別報酬を出そう、ほんでもって依頼内容はさっきも言ったが獣人を奴隷にするクソったれた犯罪者どもを血祭りにあげることだ。そして騎士団の諸君らには俺の魔法で武器防具に付与魔法をかけてやろう。その代わりに、今回の魔物の素材は俺が貰うそれでどうだ?」

 俺のその依頼に対して返ってき答えは熱狂だった。


「うわ、マジかよ、そんな簡単な依頼で金貨1枚は上手いな」「それな、それにこれだけ人数がいるんだ絶対に失敗はありえない」「それに特別報酬大金貨1枚はデカすぎる」「普通にあのぐちゃぐちゃの素材配分するよりも利益は高いかもな」「後、騎士団には付与魔法ってのも流石だな」「それな、というか、俺は金貨一枚よりも今の装備に付与魔法をかけて欲しい」「それな、彼ほどの魔導士だ一体どれだけ凄い付与魔法を使えるんだ」「うむ、我ら黒我騎士団としても偉大なる魔導士様の付与魔法はかなりありがたい、むしろ、色々としてもらいすぎて申し訳ないぐらいだ」

 様々な意見があがる。

 俺は把握魔法でそれらの意見を把握してもう一つ案を出す。


「なるほどね、じゃあ、報酬の金貨1枚の代わりに付与魔法をお願いしたい人がいたら付与魔法をするよ。てなわけで、早速だけど犯罪者を血祭りにあげに行こうか、逃げられたら困るしね」


 かくして犯罪組織は魔物の大群を壊滅させる程の力を持った騎士団及び冒険者ら合計100名とぶっ壊れチート神器を持った怒れる最強さんの手によって血祭りにあげられることが確定した。


 ――――――――――――

 補足説明

 金銭価値設定

 ものすごく大まかに言えば。

 大金貨・・・100万

 金貨・・・10万

 銀貨・・・1万

 銅貨・・・1000円

 小銅貨・・・100円

 の10進法です。


 なお、物価は日本よりもある程度安い世界となっており。

 小銅貨2、3枚出せばしっかりとしたご飯が食べれます。

 銅貨1枚出せばそこそこ良いご飯が食べれます。

 素泊まりだけであれば銅貨1、2枚って所はザラにある感じです。

 まあ、異世界ですから。

 因みに師匠は元が金持ちなので主人公に適当にお金を渡したって感じです。具体的には大金貨10枚と金貨10枚以上。控えめに言って金銭感覚馬鹿ですね。


 因みにご都合主義ですが大金貨の方は合金であり、僅かですが価値の高いミスリルに本当に極僅かにアダマンタイトが混ざっています。

 という訳でかなりの価値を持っています。


 ――――――――――――


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