獣人差別とオタク達は凄いって話
俺は町の中に入って驚いた。
何故かというと、混乱が一切起きていなかったらだ。
一応今この町は恐るべき魔物の大軍に襲われているはずだ。
それなのに、この落ち着きよう。まるで何もないように当たり前の生活を繰り広げている。それだけこの町の騎士団を冒険者を信頼しているというのか。
・・・・・・・・・・
何というか凄いな。
まあ、一瞬魔物の大群が来てることに気が付いてないのではと思ったが、あれだけ派手に騎士やら冒険者が城壁に集まってて気が付いていないなんてのもあり得ないからその可能性はないな。
そう思うとやっぱり凄いな。まあ俺にはさして関係ないか、取り敢えず宿を探して気絶しているイトをベットに寝かせてあげないといけないな。
「風魔法・浮遊からの本の神器よこの町のお勧めの宿が載っている本を探して、そのページを開け」
イトをお姫様抱っこしてる為、両手が塞がっている俺は本の神器を魔法で浮かせて、ページを開いてから確認する。
暫く魔法でページをめくりつつ読んでいたら一つ中々に条件的に良い宿を見つけた。
ここからかなり近い距離にある宿木の宿という場所であり、価格も良心的で獣人差別等がなく料理も非常に美味しく素晴らしと高評価がされていた。
念の為に他の本に変化させて、それらも読んでみるが、似たような感じの評価がされていたので、おそらく本当のことだろう。
「よし。これは宿木の宿、一択だな。獣人差別がないってのが特に気に入った」
そんなわけでてくてくてくてくっと歩くこと3分。
あっという間に宿木の宿に到着した。
早速店の中に入る。
「いらっしゃいませ~~~、お泊りですか、それともお料理ってすみません、お泊りですね」
入ると活発的で良い感じに日焼けしている、多分俺と同い年くらいの女性がそう言って出迎えてくれた。
しっかし、何故俺がお泊りって、ああ、そういえば俺は今、イトをお姫様抱っこしてたな。そりゃ、お泊りってわかるわな。
「はい、そうです、すみません、お金は両手が空いたらすぐに払いますので、まず、この子をベットに寝かしてあげてもいいですか」
「あ、はい、大丈夫です。では部屋にご案内します」
「ありがとうございます」
そう言って彼女に部屋に案内してもらった後、部屋に置いてあった大きなダブルベットにイトをそっと置き布団をかぶせてあげる。
「よし、ようやく両手が使える、空間魔法・異空間」
俺は魔法を唱えて、師匠から貰った硬貨の入った革袋を取り出した。
本で確認した二人部屋一泊分料理付きの代金である銀貨1枚の10倍の価値を持つ金貨を一枚取り出して案内してくれた娘に渡した。
「取り合えず、10日分よろしく」
「はい、10日分ですね。ありがとうございます。では、町の大時計で夜の5時~10時の間に夕飯が食べれますので忘れないでください」
そう言って彼女は部屋から出て行った。
町の大時計って、そういえばこの世界は異世界人もとい俺らみたいな地球人のおかげで結構時計の普及が進んでたな。時間も日本基準やしそう考えると楽でええな。
「さてと、イトは寝てるし、特に急いでやらなければならないこともないし、ゆっくり本でも読みますか」
俺は一人そう呟くと、本の神器を開き獣人の差別について調べ始めた。
1時間後。
なるほどね、結構分かってきた。まずこの世界には人間・獣人・エルフ・魔族の4種族が主な種族らしい、その中でも人間が一番数が多く大陸を支配しているらしい。
そんでもってやはりというべきか、欲深い人間は多種族に対して結構な仕打ちをしていたらしい。それはもうかなり残酷で残忍で薄々予想はしてたけど吐き気を催すレベルの酷い仕打ちを。
しかしながら、異世界から強力な神器を持った異世界人が「獣娘神」とか「ツンデレエルフは国宝だ」とか「魔族がなんだ、羽も角も立派な個性だ、そして興奮する」とか、まあ、オタク達が結構はっちゃけて欲望丸出しにして、ガンガン他種族に対して講和を進めていったらしい。流石同士諸君だ。
その結果、某大統領よろしくで奴隷解放宣言が行われて全ての国においての犯罪奴隷と借金奴隷以外の奴隷の開放がなされた。ようはほとんどの人間以外の他種族を奴隷から解放した訳だ。
ほんでもって一部の国ではあるが他種族に対する差別もなくなり、普通にハーフが生まれ街中を堂々と歩けるぐらいに他種族との講和が進んだらしい。マジでオタク達凄いな、ありがたい限りやわ。そんでもって心の底から尊敬出来るわ。
まあそれでも、一部の国や地域では他種族の違法な奴隷化や差別はなくなっておらず今も苦しめられている人はかなりいるらしい。
人間やるなと言われたらやりたくなるっていう嫌な考え方だな。
つまり、イトみたいな人達がまだまだいるってことだ。
「なるほどね、イトの住んでた村の人は多分違法奴隷として扱われていそうだな。ほんでもって、違法奴隷ってのはかなり危ない代物だ。バレたら死刑か奴隷落ち、罪としてはべらぼうに重い。だから基本的にばれないようにかなり準備をしている。もちろ、森の中とか洞窟の中に隠れるケースはある。
だけど、奴隷は基本的に金持ちに販売するものだ。それなのに人里離れた森や洞窟に金持ちがわざわざ来るとは考えにくいな、するとじゃあどこでやる?人が集まりやすくて、バレにくい場所、例えばこの町の地下とかかな?
よし、じゃあ、早速地下を探してみますか。空間魔法・空間把握・・・・・・・」
俺が必死に空間魔法・空間把握で地下の様子を探っていて、何となくだが大勢の人の反応を把握できた直後だった。というか奴隷商と捕まっているイトの村の人達の把握が出来た直後だった。
ドン
いきなり、大きな音がなった。俺は驚いて慌ててその音の方向に向かって空間魔法・空間把握を行使する。
そして、俺が把握したのは大型の魔物含む魔物の大群により、倒れ伏す冒険者に騎士団に慌てて逃げてる魔法使い達。
ほんでもって城壁を破壊しようとしている破壊力持ってそうな凶悪な魔物達だった。
・・・・・・あれ?これ?ヤバくない?普通にヤバくない?いや待て待て待て待て、やっぱりヤバいだろこれ普通に。少し語彙力がおかしくなりそうなんだけど、いやこれ、このまま魔物の群れが城壁破って侵入してきたらこの町多分滅びはしないだろうけど、かなりの被害を受けることになりそうだな。
もしもそんなことになったらせっかく見つけたイトの村の人達及び奴隷商が逃げるぞ。そうなったら探すのはかなり困難だぞ。
・・・・・・・・・
俺は眠っているイトの横顔を見る。
幸せそうに眠っていた。
そしてそれと同時にイトの家族を救い出せたらって考える。
それはとても重要なことだ。少なくとも今ここで魔物の大群を放置すれば、犯罪組織に逃げられるかもだし、最も最悪な可能性として逃げるのに邪魔だからと商品価値の低い男の獣人奴隷が殺処分される可能性だってある。
もちろん今から一人で助けにいくっていうのもあるが、やはり時間に追われるってのはきついし、もたもたしてて最悪の状況になったら、それこそ後悔してもしきれない。
そうなると手は一つしかないな。
「ハア、しょうがない、助けに行きますか。一応イトの身に何かあったらまずいんでね。結界魔法・物理結界・悪意結界・魔法結界っと、からの、空間魔法・空間転移」
かくして俺はイトに三重に結界をかけた後、空間魔法・空間転移を使い町の城壁へと飛んだのであった。
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少しでも面白いと思って頂けたら嬉しい限りです。
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