弟子卒業と魔力倍増

「さてと、じゃあ、師匠の所に戻りますか、イト今から転移するからしっかり俺に捕まってくれ」


「はい、分かりましたご主人様、それとあの、さっきはごめんなさい、ご主人様の胸で一杯泣いちゃって」

 反省しているのか犬耳と尻尾が垂れ下がっているイト。俺はその犬耳をゆっくりと撫でる。あ、めちゃくちゃモフモフで気持ちいい。


「気にしなくていいよ、イトがそれだけ辛い思いをしたのを知っているから、何ならもう少し泣いていくか?」


「もう、からかわないでください、イトは大丈夫です。それとあの、ありがとうございます」

 元気になったのか、犬耳と尻尾がピンと立ち上がる。うん、可愛いわ。それとやっぱり犬耳がモフモフで気持ちい。ヤバい何時間でも触れそう。


「あのう、ご主人様、そんなに犬耳触られると恥ずかしいです」

 顔を赤らませながらイトがそう言ってくる。なるほど、ラノベのように犬耳は性感帯に近い部分なのかな?そうなると流石に今は止めておくか。後で本で調べよう。

 でも、もう少し仲良くなったら尻尾と犬耳を存分にモフモフさせてもらお。


「ああ、ごめんごめん、さてとじゃあさっきも言ったけど俺の師匠の住んでる家に転移するから、俺にしっかり捕まって」


「はい、こうですか」

 俺の胸のあたりに手をまわしてギュッと抱きついてくれるイト、うん可愛いわ。凄く可愛いわ。


「じゃあ、転移するね。詠唱・空間よ空間よ、我は望む師匠の住まう家の目の前を、我は望む、そこへ転移せんことを、空間の理よ、空間という概念よ、ああ、我が声と魔力に答えて我とイトを転移させたまえ。空間魔法・集団転移」

 (結構ゆっくり詠唱してます)




 ――――――――――





「ほい、到着」


「ここが、ご主人様の師匠様の家ですか?」


「ああそうだよ、さてとじゃあ家に入ろっか」


「はい、ご主人様」

 そうして、俺はイトと一緒に師匠の家に入った。


「おお、お帰り、ケンジ早かったのうって?どうしたのじゃ、その獣人はそれにその魔力と感じからしてみて、ケンジ、お主まさか主従契約の儀を行ったか?」

 イトを見るなりすぐさまそう反応をする。やっぱり分かるか。まあ師匠はかなり知識豊富で実力があるからな。それは分かるわな。


「流石師匠ですね。やっぱり分かりましたか」


「分かりましたかって、そりゃあ伊達に年を取ってないからのう、まあ主従契約の議を結んだのじゃ、そのお嬢ちゃんを一生大切にするんだぞ」


「分かってます師匠。一生大切にします」

 俺は堂々と言い切った。この言葉に一切の嘘偽りはない。俺は俺の為にそしてイトの為にも絶対にイトを大切にしようではないか。

 そんな俺の言葉に照れたのかイトが少し顔を赤らめている可愛い。


「うむ、ならよしじゃ、では、お嬢ちゃん少々至らぬところがあるかもしれんが儂が直々に鍛えた男じゃ、きっとお嬢ちゃんの事を幸せにしてくれるだろう」


「はい、ありがとうございます」

 師匠と俺のやり取りを聞いて更に恥ずかしくなったのか顔を赤くしながらイトが恥ずかし気に言った。

 ヤバいわ可愛い、今すぐ抱きしめてなでなでしたい、師匠がいるから出来ないけど。辛い。ピエン。


「あ、師匠、そういえば、レッドドラゴン討伐してきました、取り敢えずこれが証拠です」

 俺はそう言って空間魔法・異空間からレッドドラゴンのぼろぼろになった頭部の一部を出す。

 ぶっちゃけ氷嵐や強すぎたせいで原型を留めないくらいボロボロだからな。別の魔法を使えばよかったかも。


「凄いな、もう討伐してきたのか、それに強固な鱗を持つレッドドラゴンをこんなにするとは、やはり、儂じゃあもう適わないな、ならば、ケンジいや、クサカベ・ケンジよ。儂、ダンバルト・ケットル・モリヒルストマの名において弟子の卒業を証明する」

 師匠がそういった瞬間、最初弟子入りした時のように俺の胸が光だし、そして、魔力が一気に倍以上増えた。


「師匠、いきなり魔力が増えました」


「うむ、そうじゃろう、これは儂の持つ神器・【師弟試練の勾玉神器】の効果によるものじゃ。この神器を持つ儂に弟子入りした相手は弟子入りと同時にその時の実力によって課題と弟子として修行する期間が神器を通じて儂にのみ示されるのじゃ。そして修行期限内に課題をクリアするとそれ相応の報酬を神器を通じて弟子が得るという補助型の神器じゃ」


「そんな、凄い神器があるんですか、流石です師匠」

 自分でいるのもアレだが俺の魔力は師匠からの拷問?虐め?のおかげで化け物多い、ただでさえ世界でもトップクラスの魔力を持っていたのだが。それが2倍だ。

 控えめに言ってチートだ。もうめちゃくちゃ過ぎる。


「うむ、そうじゃろう、そうじゃろう、さてと、ではケンジよ今からどうするんじゃ?このまま、儂の家に残るもよし旅に出るのもよしじゃ、これからの道は自分で決めるのじゃ」


「では、師匠、私はイトとともに旅に出て、奴隷狩りに襲われ奴隷にされてしまったイトの村の人達を助けようと思っています」

 後、関わってた犯罪者共(それを買って非道なことをしてる金持ち連中含め)を皆殺しにしようとも思ってるが、これは師匠の心臓の安定のためにも言わないでおくか。


「それは険しい道になると思うが、まあケンジ、お主ならばきっと大丈夫じゃ、頑張るのじゃぞ、それとこれを持っていきなさい」

 そう言って師匠が俺に灰色で豪華な飾りつけなんかは一切ないが、かなりの魔力と感じられるローブと何かが詰まった革袋を渡してくれた。


「このローブは儂が昔討伐した灰竜の鱗をすり潰して魔法の布に混ぜ、灰竜の血に漬け、儂ふくむ優秀な魔導士10人で、サイズ自動調整・自己再生・物理耐性・魔法耐性・魔法効果増進・身体強化・隠密の効果を付与したローブじゃ。まあ大切に使っておくれ。そんでその革袋には当面の生活費として幾らか大金貨と金貨を入れておいた。しっかり活用しておくれ」

 本の神器で一通りの一般常識は知っているから、このローブがそれこそ国宝級レベルの代物であり、またこの革袋に入っているお金がどれだけ大金なのかが理解出来た。


「ありがとうございます、師匠、大切に使わせていただきます」

 師匠の思いやりに少し涙が出てきそうになった。

 でも、グッとこらえる。ここで俺が嬉し泣きするよりも俺が笑って出る方が師匠は喜ぶだろうから。


「うむ、大切に使っておくれ、それで、どうする今日は泊まっていくか、それとも出発するか?」


「もう出発しようかと思ってます、手遅れになる前に出来るだけ早くイトの村の人達を助けに行かなければなりませんから。でも、一段落したらお土産と楽しい話を持っていきます、楽しみにしてください」

 師匠への感謝をこめて笑ってそういう。


「フォ、フォ、フォ、それは楽しみじゃのう、では。気を付けるのじゃぞ」


「はい、気をつけます、師匠も健康に気を付けてください」


「うむ、分かっておる」


「では、もう行きますね。師匠、本当に本当にいろいろとありがとうございました」


「儂のほうこそ、ケンジ、お主と過ごした日々は楽しかったぞ。お礼を言うならこっちのほうじゃ」


「師匠、では行ってきます」


「うむ、土産話楽しみに待っておるぞ」


 そうして、俺は約3か月過ごした師匠の家に別れを告げて、イトの村の人達を探す旅に出た。


 ――――――――――――――――――

 因みにイトの村の人達を救う話は結構早めに終わります。

 そっから、学園編や冒険者編にダンジョン攻略編、勇者との邂逅編等々をやっていきたいと思っています。


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