キスから始まる主従契約

「え、俺のフャーストキス」


 あまりの一瞬の出来事で反応出来ず俺は初めてのキスをされた。

 何となくだが少しだけ唇はかさついていたけど心の方が温かくなったて、ん?胸のあたりが光っている。

 比喩とかではなく俺は自分の胸を見ると本当に光っていた。

 普通にピカピカに光っていた。


「え?いや待て、胸が光ってる何だこれって?あああ、痛い、頭が痛い、記憶が流れ込む記憶が思い出が感情が流れ込んでくる」


 その瞬間俺に存在しないはずの記憶が流れ込んでくる。


 それは森の中にある村とある村の記憶。

 自分達だけで、そのたった一つの村だけで完璧に自己完結している獣人達が幸せに暮らしている。否、幸せに暮らしていた記憶であった。

 誰にも迷惑をかけずに彼ら彼女らは暮らしていた。

 皆笑顔で幸せで、時には喧嘩もするけどすぐに仲直りする。皆がある種の家族のようなもので定期定期に宴会を開いては楽しく騒いでした。そんな本当に幸せそうな村の記憶。

 それが突如として現れた悍ましく禍々しい人間という化け物によってこれでもかと壊され蹂躙される地獄のようなひたすらに辛く悲しい記憶。

 抵抗した男は殺されるか捉えられて奴隷に女は抵抗も虚しく犯され、玩具にされ奴隷にされる。

 老人は価値がないとそのまま斬り殺される。

 本当に地獄のような光景。人間という悍ましく禍々しい吐き気を催す邪悪が行った非道極まりない行動。

 そこから命をかけて何とか逃げ出すも、欲に溺れてギラギラの目をした人間に追い回される恐怖が、絶望が、そしてそれを助けた俺に対する忠誠が感謝が流れ込んでくる。流れ込んで来た。


「ああああああああああああ、痛い、痛い、痛い、ハあああ、ハあああ、ハあああ、痛くない、収まったのか?」

 俺は自分で驚くほどに汗をかいていた。

 それだけあの記憶はきつかった。辛かった。苦しかった。恐ろしかった。おぞましかった。


「あのう、ごめんなさい、ケンジ様、いやご主人様、まさか主従の儀の記憶継承がそんなに辛いものだなんて思っていなくて」

 犬耳美少女いやイトが可愛い犬耳をしょんぼり下に垂らさせながら俺に謝って来る。

 そして俺は何となくこの記憶の正体を理解した。


「いや、気にしなくていいよ、もう痛くないから、それと・・・辛かったね。悲しかったね。悔しかったね。でももう大丈夫俺が付いている。だから、今は安心して泣いて良いんだよ」

 俺はそう言って、イトをそっと優しく抱きしめた。

 何故そんな事をしたかというとイトの記憶が断片的にだが流れ込みどれだけ辛かったか苦しかったか、寂しかったか知ったからだ。

 そして、それを少しでも軽減させてあげたくなったからだ。


「う、あああああ~~~ん、う、あああ、お母さんもお父さんも、お兄ちゃんも隣に住むお爺ちゃんもお婆ちゃんも、色んなことを教えてくれたお姉ちゃんも皆攫われたっよ、辛かったよ、怖かったよ、うあああ、うえ~ん、う、グス、ご主人様、ご主人様、ずっと一緒にいてください、イトの前からいなくならないでください」


「ああ、一緒にいるよ、イトは本当に頑張ったさ」

 俺は泣きじゃくるイトの頭をポンポンと撫でて言った。

 そっから俺はイトが泣き止むまで10分間ずっとイトを慰め続けたのだった。

 その代わりに俺の服はイトの涙に鼻水でぐちゃぐちゃになってしまったが。まあ犬耳美少女の涙と鼻水だ。

 きっと俺の服も本望であるとか思うだろうな。


 ――――――――――――――――――――

 補足説明

 犬耳美少女もといイトの行った主従契約の儀について。

 一応本編の方で軽く説明しますが。

 先にどんな効果が知りたいという人もいると思いますのであるていど詳しく説明します。

 主従契約の儀は獣人族が一生に一度行える秘術です。互いに主従の関係になっても良いと心の底から思わないと契約は成功しません。

 契約方法は獣人側が明確に従になりたいという意思を持ちキスをすれば成立します。因みに成立すると少しの間胸が光ります。何で光るかっていううと、記憶継承で互いの心を繋げるための演出です。

 この秘術を知っているのは森の奥に住まい、かなり原始的な生活をしている獣人くらいです。獣人国なんかではほとんど知られていません。

 この秘術を使用すると、主の方は従の記憶を断片的に継承すると共に深い愛情を抱くようになり、余程なことが無い限り決して見捨てませんし酷い扱いもしません。

 その上、主は従の持つ身体能力の50%を得ることが出来ます。

 従の方は、逆に主の持つ魔力の50%を得ることが出来、主の事を決して裏切れなくなり、主の為に何でもするようになります。


 一応補足で更に説明を加えると、主人公が途中で犬耳美少女の事をイトと呼び始めたのは、この主従の契約の儀により記憶を断片だが継承し名前を知ったからです。

 犬耳美少女もといイトが一生に一度しか行えず契約が成立すれば相手の命令が絶対となる主従契約の儀を行ったのは、それしか方法が無いと思うと同時にそれが最も自分の幸せにつながると考えたからです。

 イトの状況的には頼れる人もいなければお金も持っていない、むしろお金の為に奴隷として売られそうな状況、故郷は滅ぼされている。そんな中に現れた悪人を簡単に殺し、恐ろしいドラゴンさえもいとも簡単に滅ぼす程の圧倒的な力を持っていた主人公。更には優しく自分に好意的な印象を抱いてい。これはもうすがるしかないと考えたためって感じです。

 後まあご都合主義ですけど、獣人族は基本的に強者に凄く惚れやすいです。


 補足説明・レッドドラゴンの弱すぎないか?

 今回倒したレッドドラゴンはそれなりに強いです。というかドラゴンは普通にこの世界では化け物に分類されます。

 具体的には50人編成の熟練の騎士団一つと熟練の魔法使い30人を集めて犠牲を出しつつ何とか倒せるってレベルです。

 町なんかに出現したら、対処が遅れたり普通に町が崩壊するレベルの力を持っています。

 だってレッドドラゴンは空を飛んで火のブレスを吐き多少の傷ならば簡単に再生する化け物ですよ。

 一人で戦って勝つ主人公が大分異常です。

 因みにもし、イトがいなくて普通に一対一だった場合は、風魔法で空を飛び、氷魔法で氷の剣を生み出して、首にぶっ刺して殺していました。

 つまり主人公は化け物みたいに強いという事です。

 それでいと主人公は事前に情報を集めるタイプの人間であり、本の神器を使って絶対に勝てるような試合でも、ある程度は調べます。情報を得ます。決して油断しない人間です。ようはほとんど隙が無いという事です。

 うん。作者としても主人公チートだと思うわ。


――――――――――――――――


 後、イトの村をこんなことにした胸糞悪い盗賊組織は割とすぐに主人公の手によって制裁という名前の虐殺を受けますのでご安心を。


 クソ、どうでもいいかもだけど、今回のタイトル見て一番最初に新妹魔王が頭に過ったわ。いやまあ内容としては違うけど。なんか主従契約の所が。

 もういっそのこと獣人やらエルフやら竜人やら天使やら魔族やらを片っ端から主従契約させて主人公を更なるチートへ持ってくか。wwwww。

 それはそれで面白そうだな。

 ※一応新妹魔王は全巻持ってます。wwwww。これこそ本当にどうでもいい情報やな。

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