第43話 幼馴染、再び
「俺達が気づかなかったと思う?」
翌日の放課後、家の近くの曲がり角で私は過ぎたはずの過去と出くわした。
「なんで逃げたか聞きたいなぁ〜って」
正直関わり合いたくは無かったが前後を挟まれる形になり私は歩みを止めざるを得なかった。
「自分で考えれば分かるんじゃない?」
口を聞きたくも無い悠佑と朱音の二人。
私の家を知る二人は必ず私がここを通ると踏んで待っていたのだろう。
目的は嫌がらせ。
二人はあの頃から何ら変わっていなかった。
「おいおい、俺達は幼馴染だろう?そんな口の利き方しなくてもいいじゃんか」
馴れ馴れしく私の肩を叩く悠佑の手は不快感しか感じさせなかった。
でも声に出そうものならまたなにか言われそうな気がして、私はそれをぐっと堪えた。
「黙っちゃってどうしたの?」
そう言って浮かべる朱音の笑顔は私の目には邪気に塗れたものにしか見えない。
何が幼馴染だから、なの?
今の私に言わせれば、
仮にも「幼馴染=仲良し」と唱えるのなら、彼らはその仲良しな相手を嘲笑っていた人でなしだ。
考えれば考えるほど、その声を聞けば聞くほどに気分は滅入る。
「どうもしてない。今さら私に話すようなことなんてある?」
彼らが関係を終わらせる原因を作り私が自分の意思で終わらせた交友関係。
「私と悠佑が付き合い始めたくらいから、何か陽菜が冷たくなったじゃん?悠佑を取っちゃったことについては悪いことしたなって思ってるんだよ?」
口振りだけは申し訳なさそうに、でも口角は吊り上がっていて笑みを隠せていない。
「え、マジで!?陽菜は俺のこと好きだったの!?」
白々しい口調で驚いてみせる悠佑。
「陽菜の気持ちも知らずに、ごめんな?仲直りしようぜ?」
悠佑が手を差し出してくる。
今更仲直りを申し出るとか、魂胆丸見えだ。
彼らは付き合っていて私は仲間外れ。
その関係を面白がろう、嘲笑ってやろうっていう考えは見え透いている。
「今思えば、悠佑のことが気になっていた自分が嫌い。こんな人のどこが良かったのかな」
その手をとることはこっちから願い下げ。
思ったことをそのまま口にした。
すると悠佑はたちまち苛立ちを露にした。
「なんだと!?てめぇっ!」
そして振り上げた拳が私を狙って―――――。
◆❖◇◇❖◆
最近、早見さんに教えてもらったスーパーへの近道。
一週間分の食料を買い込んで重たくなったマイ買い物カゴと保冷バッグを両手に俺は帰り道を急いでいた。
だが聞き覚えのある名前が聞こえます気がしてふと足を止めた。
「陽菜の気持ちも知らずに、ごめんな?仲直りしようぜ?」
声の方に視線を向けると男女二人と早見さんが曲がり角に見えた。
喧嘩でもしたのか?
仲直りという言葉に俺は勝手に考えを巡らせた。
だがその考えが間違いだということに気付かされた。
「今思えば、悠佑のことが気になっていた自分が嫌い。こんな人のどこが良かったのかな」
早見さんは明らかに拒絶していることに加えて、見たことの無い二人。
たぶん二人は早見さんの中学校の同級生で……そして早見さんを裏切った人達なのだろう。
過日、屋上で聞かせてくれた話を思い出した。
そのまま物陰から様子を見ていると
「なんだと!?てめぇっ!」
感情をあらわにした男の声に振り上げられた拳。
俺は考えるよりも早く動いていた。
振り下ろされた拳を両の手で受け止める。
「なんだお前」
面白くなさそうな男の声、注意は俺に向いたらしかった。
「い、和泉くん!?」
殴られることを覚悟してかギュッと目を瞑っていた早見さんは俺のことに気付いたのか声を上げた。
「今なら傷害未遂で済むが?」
俺は低い声ですごんでみせた。
「チッ、興醒めだ」
男は女を連れて逃げるように消えていった。
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