第40話 ペア決め

 中間テストが終わればすぐさま体育祭の準備や練習に追われることになる。

 

 「参加種目数の少ない人で生徒会種目の二人三脚リレーの枠を埋めて欲しいでーす」


 一周二百メートルのトラックを五十メートルずつ四組で走るらしい。


 「――さんと、和泉さん、早見さん、新妻さんの八人が丁度、一種目少ないことになってるのでこの中から二人組を組んで欲しいです」


 クラスの体育委員に名を呼ばれたクラスメイト達は自然と一箇所に集まった。

 人数で言えば女子五人、男子三人。

 必然的に男子と女子のペアが生まれてしまうわけで……。


 「悪いが和泉、矢野は頂いてくぜ」


 俺に向かってニカッと笑ったクラスメイトの石渕は呑気バカの矢野と肩を組んだ。


 「そうか……」


 俺の意思に関わらず女子と組むことが確定してしまったわけだ。

 さすがに残った一人と俺が組むのでは、その一人が傍から見たら余り物というわけで、少しばかり可哀想な気がした。

 これは、俺から誰かにお願いしに行くべきか……。

 幸いにして女子の方は話が纏まっていないらしい。


 「誰か、俺と組んでくれる奇特な人はいないか?」


 美緒なら頼めば組んでくれそうだが、強要するようでそれは良くないだろう。

 俺が声を掛けると五人全員の視線が俺に集まった。


 「私、組むよ」

 

 一番に声を上げたのは早見さんだった。

 もっと腫れ物に触るような目で見られるかと思ったが意外とそうでも無いのか……?


 「怜斗くん、私でもいいんだよ?」


 美緒がチラリと早見さんを見てから蠱惑的な表情で俺を見た。


 「なんというか、そんなこと言ってくれるとは思わなかった。もっと嫌がられるかなって」

 「和泉くんと組むことが罰ゲームになっちゃうとでも思った?」


 早見さんは笑いながら言った。


 「正直言ってそう思ってた」

 「そんなことは無いから安心して。一人暮らしで自炊してるっていうのは割と皆知っているんだ。それからしっかりした人っていうのが和泉くんの印象になって、割と好感度高めだよ」


 途中まで合っていた目を最後は逸らしながら早見さんは教えてくれた。


 「そうなのか?」

 「でも私達、陽菜ちゃんや新妻さんほど強い気持ちな訳じゃないから二人のどっちかと組んじゃって」


 黙っていた三人のうち一人の女子がそう言って早見さんから少し距離を置いた。

 後はそっちで決めちゃって、そういうことなのだろう。


 「ということなら二人のうちどっちかに一緒に組んでもらおうかな」


 幸いにして二人ともよく話す相手なので助かった。


 「なら私が」

 「美緒ちゃんもたまには他の女子と仲良くして欲しいから私が組むよ」


 なんか一歩も譲らない雰囲気が漂っているのは何故だ……?


 「私は理由を付けなくても怜斗くんと組めるんだけど?」


 美緒が挑発的な視線と言葉を早見さんに浴びせる。


 「理由を付けてるって……そんなもんなしで私も組んでみたいの!」


 その挑発に乗せられて早見さんは大声で言った。

 そして恥ずかしいのな顔を赤らめて俺を見つめた。


 「こうなったら和泉くんが選んで!」


 美緒が期待に満ちた目を俺に向ける。

 組みたいとか言われるとは微塵も思って無かったので選ぶのが難しい……。

 で、結局は―――――


 「「ジャンケンポン!」」


 運に任せることにしたのだった。


 「か、勝った!」

 「私を選んでくれなかった責任はベッドの上で、わかってるよね?」


 美緒が冷たい声で耳打ちしてペア決めは終わったのだった。

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