第27話 二人に重なる過去(1)
ここでいいかな?
二人の後を気付かれないように追いかけて行って、書棚の本と棚板との隙間から二人が見れる場所を見つけた。
「キスして?」
そう言った美緒ちゃんは熱っぽい視線を和泉くんに送る。
「家ですれば良くないか?」
「だって最近マンネリ化してるなぁって。もうちょっとドキドキ欲しくない?」
ピッタリと和泉くんに体を寄せながら蠱惑的な表情で誘惑する美緒ちゃんの姿は、普段の眼鏡キャラとは程遠い。
えっちのときはあんな顔をするんだ……。
多分クラスの男子達が見たらイチコロになってしまいそうな表情。
「そりゃ毎日してたらマンネリ化もするだろう」
和泉くんは呆れ交じりに言うと美緒ちゃんの唇を奪った。
もちろん舌と舌とを絡めるディープなやつ。
やっぱり二人ってそういう関係だったんだな……。
そこは二人だけの世界で余人の立ち入る隙間はない。
「こっちも触ってよ?」
美緒ちゃんは和泉くんの手を掴むと胸へと誘導した。
「お前、またあの下着なのか?」
「だって今日は体育ないから着てもバレないかなって」
どんな下着かはわかんないけど多分、大人な下着だということは容易に想像がつく。
話終えると再び互いの唇を貪り合う二人。
美緒ちゃんは和泉くんの腕の中に収まってされるがまま。
「なんだかんだ言って怜斗もやる気じゃん」
いつしか二人の手は降りていって互いの下半身をまさぐり始めた。
そんな二人を見ているうちに私の心はどういうわけか痛み出した。
「あれ、どうして……?」
この痛みの理由を知る私は、自問自答した。
でもそんなことがわかるはずが無くて締め付けられるような痛みにただ二人から目を背けることしか出来ない。
「んっ……はぁん」
艶かしい美緒ちゃんの声を背に私はその場を去った。
◆❖◇◇❖◆
『直感は、無理に感じようとしてもだめ。答がでるまでには時間がかかるものなの』
中学校時代、そんな誰かの受け売りを口にしていた幼馴染が私にはいた。
「陽菜ー、今日わたし委員会の仕事あるから先に帰っててーっ!」
家も近くて私ともう一人の幼馴染を加えた三人で登下校を共にしていた私は、ある日そんなことを言われた。
彼女の名前は
「わかった、じゃあ先に悠佑と帰ってるね」
私が朱音にそう言うと彼女はニコッと笑って言った。
「悠佑くんも委員会の仕事あるみたいだから無理かもよ」
このとき、私は疑いを抱いてしまった。
そんな気持ちさえ抱かなければ辛い思いなんてしなくても済んだのに、今でもそう思う。
「わかった先に帰ってるね」
そう言って私は一人で帰るふりをした。
「下駄箱まで見送ってあげる」
朱音はそう言って付いて来ようとしたけど私はそれを断った。
「委員会の仕事があるんでしょ?そっちを優先していいから」
それでも朱音は付いてきた。
だから私の疑いは益々深まった。
私が悠佑のことをいいなって思ってることはもとより朱音もまた同じような感情を抱いている節があった。
だから朱音が私のいない所で悠佑に告白するんじゃないかって。
「じゃあね!」
下駄箱で私を見送ると朱音は踵を返して教室へいそいそと戻っていく。
だから私は朱音と同じ委員会の友達に電話で訊いた。
『ねぇ、今日って委員会ある?』
お願いだから有るって言って。
遅まきながらに私は願った。
でも友達の答えは違った。
『無いけど?』
『そう……』
聞きたくなかったその答えを聞いた私の足は下駄箱へと向いた―――――。
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