第16話 飼い主と猫
「今日はありがとうね!また明日もお願い!」
早見さんはそう言うと帰っていった。
「陽菜のくせに上手くできてる……ッ!」
俺が早見さんを見送っている間、美緒はさっき作ったばかりの人参のシフォンケーキを口に運んでいた。
「お前は何様だよ」
「強いて言うなら怜斗くんの正妻候補?」
おっふ……照れるじゃねぇかよっていかんいかん。
「陽菜は見込みがある。このままお菓子作りの弟子にしてやるといい」
相変わらず誰目線か分からない口調で人参のシフォンケーキを食べては紅茶を飲んでを繰り返している。
「そんなに飲むと後からトイレに行きたくなるぞ?」
確か紅茶には利尿作用があるはず。
むくみを抑える効果なんかもあるが……。
「え、利尿剤入り?」
「ちゃうわ」
「まさか……今夜はそういう嗜好……?」
「邪推すな!」
怒涛のツッコミ二連撃。
絶対楽しみながらやってるだろこれ。
「まぁ、たまには変わったことシないとマンネリ化しちゃうから、私はいいよ?」
「部屋が汚れるんで却下」
「なら汚れないメルヘンチックな部屋に行く?」
「国際宇宙センターにでも行ってくれ」
なぜ国際宇宙センターなのかと言えば、あそこでは水再生システムにより尿を再利用して飲料水にしてるからだ。
「んもう、いけずぅ〜っ!」
「はいはい、そろそろ気が済んだか?」
この一週間で俺は、だいぶ
「流石にそこまでアブノーマルなのは私でも無理だからね?」
「そもそもやりたいとは思わないから気にするな」
AVなんかで目にしたことも無いわけじゃないが俺にはハードルが高い。
カリオストロの城に名前の似たアレなんかは絶対に無理だ。
「それはそうと飯作るから手伝ってくれ」
「ん、いいよ。どっちの部屋なの?」
「お前の部屋だ」
俺の部屋の冷蔵庫はすっからかんだしな。
「ひょっとして今、私って怜斗くんに求められちゃってる?」
「あぁ、美緒の部屋の冷蔵庫とキッチンをな」
しょうもないことをのたまう美緒の背中を押しながら俺は部屋を出た。
◆❖◇◇❖◆
「知ってる?」
「何がだ?」
広くないバスタブに二人で上手く身体を収めながら話すのも日常になって来ていた。
新婚の夫婦かよってくらいのイチャイチャ度だ。
「猫ってね、多頭飼いを嫌うんだよ?」
「どうして猫の話になるんだ?」
脈絡のない会話に俺が疑問を呈すると
「その答えは自分で考えて欲しいかな」
美緒はそう言うと俺の下半身のソレをデコピンした。
「何すんだよ」
「節操なしになるかもって思って躾といた」
「俺がそんな人間に見えるか?」
「中学生で捨ててる人の言うことなんて信じれないなぁって。中学生の性交体験率って五%なんだよ?」
「その五%に美緒も入ってるだろ」
「ふふっ、それもそっか」
ひとしきり二人で笑いあった。
そして美緒は俺に向き直る。
濡れそぼって艶めいた体が視界いっぱいに広がった。
「飼い猫は一匹でいいんだからね?ちゃんと飼い猫の感触を覚えて貰わないと」
向き直った美緒は蠱惑的な笑みを浮かべて腰を降ろした。
その日の風呂は、二人とものぼせ上がってしまったのだった。
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