第8話 甘々モーニング
唇に何かが触れた気がして起きた。
「おはよ」
「あぁ……って、そうだったか。俺、一線を超えちゃったんだな」
寝ぼけ眼の瞼の裏に、昨夜の出来事がフラッシュバックする。
思い出すだけで股間に熱が集まるのがわかる。
「ふふっ、こっちも起きたみたいだね」
蠱惑的な笑みを浮かべた新妻さんは俺の下半身を見つめながら言った。
「恥ずかしいからあんまり見るな」
一線を越える前なら手で隠していただろうが、もうそこまでの恥ずかしさはなかった。
「ご飯の前に抜いとく……?」
中学生の頃の瑞葉との
本当は断るべきなのだろうが本能に流されたまま俺は頷いた。
そんなこんなで幸せな朝を迎えたわけだが飯当番は俺らしく、そのために午前五時半に俺を起こしたらしかった。
「ついでに弁当も作っとくか?」
「いいの?」
「俺のを作るついでだ」
「やった!」
新妻さんは嬉しそうに笑った。
いつもなら夜のうちに仕込んでおくけど、そういうわけで準備出来ていなかった。
だが新妻さんが早めに起こしてくれたこともあって時間的には余裕があった。
「見ててもいい?」
「いいけど中身が分かるとつまらないぞ?」
俺なんて自分で弁当を作ってるから正直言ってご飯に対する楽しみなんてのは持ち合わせていない。
「一緒にそばにいたいっていう理由じゃダメ?」
「……好きにしろ」
なんで新妻さんはそういうことを恥ずかしげもなく面と向かって言えるんだ……。
言われた俺がこれだけ照れくさくなってるっていうのに。
かれこれ一時間、あーだこーだと言いながら新妻さんはずっと俺の隣にいた。
新妻さんの分も作るってことでちょっと気張った弁当になってしまったのはここだけの秘密だ。
「チキン南蛮って油で揚げなくても出来るんだ!」
「サラダ油とフライパンさえあればね。でも油で揚げる方が俺は美味しいと思う」
朝は基本時短調理を意識している。
白米とチキン南蛮とサラダとチーズオムレツとソーセージ。隙間にミニトマトをはめたら完成だ。
彩りもある程度意識したつもりだし、これなら見栄えも気にならない。
我ながら上出来だった。
「いただきます」
同時並行で朝食の用意もしたから朝からハードだった。
パチンと手を合わせて新妻さんが箸を手に取る。
……っておい、それ学校に持ってく弁当だろ!
「それ弁当だぞ」
「あっ!ほんとだ、気付かなかった!」
三文芝居もびっくりの棒読みでいうと新妻さんは弁当を横へと避けた。
「む〜、ここに置いておくのは目の毒だよ」
そして抗議するように言うのだった。
絶賛、お弁当は冷ましている最中で蓋をしてないから中身が見えている。
それが新妻さんにはさぞ美味しそうに見えるのだろう。
そんな調子で朝食を食べ終え、俺は自分の部屋に戻って着替えると「一緒に行こう」と言われて新妻さんの部屋の前で待つのだった。
「ごめん、待たせちゃったね」
「今来たところだ」
まるでデートの待ち合わせみたいな言葉を交わして俺たちは家を出た。
「ねぇ、行ってきますのキスは?」
「こんな家の前ですんのか?」
「するでしょ!」
新妻さんはそう言って俺の唇を優しく
「セックスの時よりも照れるかも」
そして嬉しそうにそんなことをのたまったのだった。
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