違和感

「結論から言うと、ここは時間が停止してるニャ」


「何を言ってるんだ?」


カチョウがまたもや邪魔だ。


猫はもう面倒臭くなっていた。



「黙って聞いてろニャ」


「ひっ・・・」


ドス黒い瞳で睨み付けると、カチョウは完全に萎縮してしまった。



「電波が来てニャいのは外界から切り離されてると考えられるニャ」


「正面口の件も説明できますね」


「それと・・・・」



「アサギさん、変なこと聞くけどニャ」


「な、なんです?」


「腹減ってるかニャ?」


「い、今はあんまり・・・」


「じゃあ喉は?」


「は?」


「乾いてるかって聞いてるニャ」


「いえ・・・特に・・・」


「トイレは?」


「なんでそんなこと?・・・!」


皆、気付いたようだ。



「時間が止まってるから腹も減らないし、喉も乾かないニャ」


「ありがたいことに非常電源も切れないようだニャ」



「ヤマさんもきっと無事だニャ、殺しても死ニャねーようなおっさんだニャ」


「みんな無事だったのはヤマノウエさんとリンドウさんのお陰です」


「流石はリンドウさんだニャ」



リンドウが照れ笑いを隠し切れずはにかんだ。


「でも、どうします・・・?」


「恐らくだけどニャ・・・・」


「ん?・・・あれ・・・?」


リンドウの体が・・・透けてゆく・・・?


「ああ、『僕の番』は終わりみたいです。それじゃ、お先に」


リンドウは何かを悟ったようだった。



「何処に行くニャ!」


リンドウは透明になって消え去った。



アサギが親友を失った猫に声を掛ける。


「●●●さん、辛いでしょうけど」


「・・・・進むしかないニャ」



「ねえ」


サンジョウが猫の顔を覗き込んで来た。


「みんな、少し後ろ向いててもらえる?」


サンジョウがそう言うと、猫以外の3人は察して後ろに向き直った。


「ん」


「え?」


「あーあ、もっとちゃんと話しとけば良かったな」


そう言うとサンジョウの体も消え始めた。


「なんで・・・・サンジョウさんまで・・・・?」


「心配しなくてもまた会えるわよ」


そう言い残すと、サンジョウも消え去った。




〈ゴゴゴゴ・・・・〉


今度は2階が崩れ始めた。


「とにかく、上に行くしかないニャ」

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