仮面博士
猫は目的地に辿り着くと、『その人』の名を叫んだ。
「ハタダイさーーーーん!」
「ハタダイさん!居たら返事をしてくれニャ!!」
猫はその敏捷な身のこなしを活かしてフロア中を跳ね回ったが、誰1人見つけることができなかった。
「くそっ!なんで誰も居ないニャ!」
「ここだよ」
突如、目の前の空間が歪むと、ぽっかりと穴が開いた。
「んがっ??!?!なんニャ?!?!?」
穴かはそのまま広がり続け、驚くことにそこから人間が現れた。
長髪をオールバックで束ね、無精髭で白衣を纏った、ステレオタイプの研究者のような男だ。
そして、何故かは見当もつかないが、おかしな仮面を被っている。
猫は、直感的に悟った。
コイツだ・・・コイツが元凶だ・・・。
「ハタダイさんをどこにやったニャ?」
「心配しなくても『君と私』の片割れだ。安全は保証するよ」
「ふざけんニャよ?体に聞くニャ」
猫は腰道具からハンマーを取り出して凄んだ。
まずは顎に一撃を入れ、昏倒させ縛り上げてからゆっくり話を聞くとしよう。
『ズズズ・・・・』
マネキンたちが動き出した・・・・。
「一体なんだってんニャ」
マネキンが一斉に猫に向かってくる・・・・。
緩慢な動きだが、普通なら恐ろしさでチビってしまうだろう。
「私は忙しい。しかしだ、追って来てくれ。言われなくてもそうするだろうがね」
また空間が広がると、そのままどこかへ消え去った。
猫は向こう側の景色を見逃さなかった。いや、奴がわざと見せたのだろう。追って来させるために。
「邪魔ニャ・・・・」
猫はハンマーでマネキンの顔を砕いたが、その動きに変化はない。
「ダメージがないのかニャ?」
次に手を砕き、歩みを止めないことを確認すると順番に足を砕いた。
四肢をなくしたマネキンはその場で動かなくなった。
「なるほどニャ」
猫は次々にマネキンを部分的に破壊し、『実験』を行なった。
そして最後の一体・・・・。
猫はマネキンの間合いに入った。
マネキンは無造作に腕を振り上げ、猫を天井に叩きつけた。
「うおっ!?」
「トロくせーがパワーはあるニャ」
猫は天井の石膏ボードにまみれながら、冷静に敵を分析していた。
「こいつは放置しておけねーニャ」
最後の『実験』だ。
足払いで転ばせた後、顔面に踏み砕きを入れた。
するとマネキンは動きを停止した。
「大体わかったニャ」
〈ピリリリリリリ〉
「おわっ」
気が動転して忘れていた。内線PHSがあったのだ。
【もしもし●●●さん?ヤマノウエだけど?】
【ヤマさん!無事ですかニャ?!】
【(ニャ?)こっちの台詞だよ。今どこにいるの?】
【4階ですニャ。ヤマさんは?】
【私は1階にみんなで集まってるよ。とにかく来てくれないかな?】
【すぐ行きますニャ。無事で良かったニャ】
【なんだか●●●さんのほうが無事じゃない気がするんだけど】
【何をおっしゃいますニャ!俺とヤマさんが揃えば無敵だニャ!】
【いつも通りみたいだね。早く来てよ。困ってるんだ】
【ラニャー!!】
【(うん、やっぱりおかしいな)】
猫は同僚の無事を確認できると、嬉しさで飛び上がった。
「速攻で行くニャ!」
猫は再び階段へ向かって跳躍すると、1階へと急いだ。
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