仮面の迷宮

デラシネ

ペルソナ

「う・・・・」


目を覚ますと、非常灯の明かりが頼りなさげに周囲を照らしていた。


ということは、非常電源はまだ生きているようだ。


崩れ落ちた天井の石膏ボードと照明器具、倒れた什器やトルソーなどの瓦礫を確認できる。


閉店後だったので、既に売り場に客はいない。


誰も残業していなかったのだろうか?同じフロアには店員もいなかった。



「ヤマさん!いますか!?」


「どうなってる?・・・いや、そんなことより・・・」


こんな緊急事態に何を考えているのだろうか?


それでも脳裏に過ったのは『あの人』のことだった。


「とにかく、向かうしか・・・・」


瓦礫で塞がった通路を確認すると、『あの人』のいる売り場までの最短距離を頭の中で描いた。



「こういう時、設備員ってのは便利だニャ」


何度も増改築や再開発を重ね、迷路のように複雑化した館内を知り尽くしている。


「急ぐニャ・・・・」


同僚のことも、館内に残っていた人も心配だ。


しかし今は、『あの人』の無事を確認しなければ気が気でない。



早く行かなければ・・・・しかし、一体何が起こった?


・・・・揺れてもいないし、火災報知器もスプリンクラーも作動していない・・・・。



何か、嫌な予感がする・・・・。

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