第20話 瓦礫
中堅都市イーにて、
街を炎が飲み込み、街の人々を殺戮していくカイ。
街を飲み込んていく炎から莫大なの煙が出ていた。それを狐達の病気の原因の発生源を探していたリーシアが見つけたのは、白狐達の住処を出発してから3時間程経った川幅が10メートル程ある大きな川を見つけてた時だった。
「な、なにあれ…」
川の上流にあるイーから立ち込めた煙が空に広がって流れてくるのを見上げながら呆気に取られていたリーシアだったが、川が血で赤に染まり人の死体が流れて来るのが目に入った時、考えるより先に体が動いていた。
イーに向かって走り出したリーシア。
白狐達をその場に残し、自分に身体強化と移動速度上昇の魔法を掛け、川に沿って空を流れる雲よりも速く、自分に吹く追い風よりも速くイーの街まで走り抜けた。
リーシアが都市の入り口に到着すると街は見る影もなくなっていた。
「な、なにこれ…」
リーシアからそれ以上の言葉が出てこなかった。
ゆっくりと入り口にあったであろう城門が崩れてできた自分の身長の2倍ほどある瓦礫の山を乗り越えると、真っ黒に焼けこげた人の形をしたものが道に転がっていたり、瓦礫の下から飛び出していたり、またそこら中から小さな黒い煙が上がっていた。
見渡す限り目につくような炎は上がっていなかったことから、どうもここら辺一帯は焼き尽くされた後らしい…
遠くの方に、動いている何かとポツンと立っている人影を見つけた。
リーシアは走ってその人影に近づいた。
そこに立っていたのはカイに容姿が似た人物だった…
「え…」。リーシアは驚きを隠せなかった。
死んだと思っていた奴に似た人間が目の前にいたのだから無理はない。
リーシアは「カ、カイだよね?」とその人影に恐る恐る尋ねた。
「リーシアか、久しぶりだな」とその人影は答えた。
間違えなくカイだ。
そう確信したリーシアは、カイの近くに寄ってカイをよく見ると、前に見たカイとはだいぶ風貌が変わっていた。
顔には無数の黒紫色に光っている亀裂が無数に走っていて、黒紫のオーラを放っていた。
「死んだんじゃなかったの?ここで何があったの?」とリーシアはカイを問い詰めた。
そよ風が1回吹いたあと、カイは口を開いた。
「俺はあの騎士団に暗殺されかけた。いや、暗殺されて1度死に近いところまでいったが、俺のスキル、超耐久が発動して殺されきれなかったというのが正しいな。ここで何をしていたかについては、この街を滅ぼしていた、が答えだね。」。
とても乾いた言葉が返ってきた。
感情も何もない、機械が話しているようにリーシアは感じた。
「とにかくヴェルカ達の所に行こう。そこで何があったか話そうよ。」とリーシアはカイを連れて行こうとした。
だが、カイは「それは出来ない。これからまだやることがある。」と言ってこの場を立ち去ろうとした。
リーシアは立ち去ろうとするカイを腕を掴んで引き止めた。
「腕を掴むのをやめてくれないか?」とカイが言った。
「どこに行くつもり?逃げないで」
リーシアはカイを逃さないようにより一層カイの腕を強く掴んだ。
カイはため息をつき、「邪魔をすると言うのなら、例え前に一緒に旅をした仲間であっても容赦しない。じゃあな。」。
カイがそう言って歩き出した。
リーシアはカイを止めようと何かを言おうとした。
その瞬間、リーシアの視界が地面に落ちていった。
「ゴホッ、ゴホッ…。な、何が起きたの…?」
リーシアは訳がわからない状態だった。
地面に体がついている感覚が無く、口から血を吐いていた。
「リーシア、お前さんの体内の至る所に穴を開けた。これでしばらくは動けないはずだ。だがまぁ、死ぬことはないから安心しろ。ただ、3週間は絶対安静にしないと死ぬからな。」とカイはそう言い残して、赤色の筒らしきものを取り出し、それから伸びる紐に火をつけて、それをリーシアの近くに置いてこの場から姿を消した…。
リーシアは、赤色の筒がダイナマイトに見えた。
これがもう少ししたら爆発して、私死んじゃうんだ…
そう思った。
火が紐のほとんどを燃やし尽くし、もう少しで赤色の筒にまで火が近づいてきた。
リーシアは唾を飲み込んで自分が死んでしまうこと覚悟した。
そして、赤色の筒にまで火が到達して筒が燃え出した。そして赤色の煙が出始めた。
「え…?」とリーシアは驚いた。
実は、カイが置いていったものは赤の煙が出る発煙筒だったのだ。
発煙筒だったと言うことが分かって安心したことで体から力が抜けていき、そしてその後すぐにリーシアは気絶した。
目が覚めると、リーシアはベットで寝ていた。
ベットの周りにはベットに寄りかかって寝ているヴェルカ達がいた。
「あぁ、目が覚めたんだね、よかった‼︎」とヴェルカがリーシアに駆け寄った。
リーシアが目覚めたのを見たヴェルカ達は安堵して、リーシアに街であった事の話をし始めた。
エレーナの話によると、街がある方角から大量の煙が上がっていたのを発見して急いで街に向かっていたら、赤色の煙に気付いてそっちにガリアと2人で向かったら私が倒れていたので王都の治療院まで運んできたのだという。
エレーナは緊張が解けて力が抜けてきた様で椅子に腰を下ろし「でもとにかく命に別状がなくてよかった。まぁ、お医者さんが3週間は絶対安静だって言ってたけどね」とリーシアに言った。
後にガリアに聞いた話では、あの街で生き残っていたのはリーシアと白狐達だけだったそうだ。
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