第5話 企業戦士とエンディング

「そこに俺の豪快なタックルが入ったわけよ」

「それで、彼とはその後どうなったんですか。」

森下がそう尋ねてきた。

「しばらくは連絡を取り合ったり飲みに行ったりしていたんだか、俺の本社異動を機に疎遠になってしまってな」

俺はさも残念そうにため息をつきながら、「いいやつだったんだかな」と呟いた。

「変な縁もあったもんですねえ...

さ、もう少し頑張りましょうか。」

俺の話がつまらなかったのか、森下の野郎は早々に切り上げた。まだまだ帰れそうにはなかった。



(しっかし言ってもよかったのかなーこんな話)

ガラガラのホームで電車を待ちながら、そんなことを考える。

(気持ち悪い話をする変わり者だって思われたりしてないかな?)

電車はあと数分で到着するようだったが、今晩のこの人の少なさはあまり経験したことがなかった。

(まあいいや、明日も早いし、帰ったらベットにダーイブするかぁ)


(カツッ カツッ カツッ)


(ん、ご婦人も残業かあ こんな時間までお疲れ様です なんてね)


(カツッ カツッ カツッ)


(俺と同じとこに並ぶのか? 他のとこなら人はいないのに。)




突然首筋をヒルが這うような悪寒を感じ、咄嗟に振り向いた。


(なんなんだ)


振り向いたものの、そこには何もおらず、到着する電車のライトに照らされた俺の影が震えているだけだった。


(カツッ カツッ カツッ)


背後から足音がすると同時に、強い力で後ろへ引っ張られる。俺が最後に見たものは、横から俺めがけて迫り来る電車と、お歯黒だけの顔だった。





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ミス.ブラックの意のままに ゴキヴリメロン @dktry

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