009 魔科学師ゼオスの実力②
『マスター。容赦なくいきますか?』
(それでいい。この世界のルールに乗っ取ろう。敵対者は皆殺しってな)
「な、なんなんだ!」
「ひ、ひえええええ!」
「うわあああ!」
ダークネスブラスターで直線上に極太の砲撃をぶっ放す。
何も残るはずがない。それなりの火力で撃っているからな。
やはりあの魔王が特別で雑兵は大したことなさそうだ。
200人ほどいた先遣隊の8割は吹き飛ばすことができた。
残り2割も殲滅するとしよう
「ランダムで3人だけ逃せ。それ以外は潰していい」
『承知しました』
「ネクストセット、フォトンシューター・マルチロック」
砲台から100を超える魔力弾を作成、そのまま逃げる先遣隊の兵達にぶつけていく。
クロの演算処理も利用した誘導弾故に逃げ切ることはできない。
逃げまどう魔王軍の兵士をプチプチと潰していく。
たった2回の攻撃で先遣隊を滅ぼすことができた。
わざと残した3名の兵が怯えて後ろに逃げていくのをそのまま見守っていた。
「相手の戦力も大体わかった。さっさと全滅させよう。クロ、ガードアーマーの展開」
俺の全身を防具服が出現し、全身を包み込む。これがガードアーマーと呼ばれる防御魔法の一種だ。
これで何があっても俺の本体に被弾することはない。
魔王級がたくさんいれば話は別だが……あの時だって魔力が残り10%を下回っていたんだ。
今は魔力が50%近く回復している。
茂みの中にいたファナディーヤが近づいてくる。
「あれだけの数をあっと言う間に倒されるなんて」
「……思った以上に大したことないな。ファナディーヤ。ここで待っていろ。さっさと終わらせてやる」
「いいえゼオス様、わたくしも連れていってくださいませ」
「この先は虐殺。地獄かもしれんぞ」
「故郷を滅ばされ、家族を皆殺しにされて、無理やりここに連れてこられて姫にされたことより地獄ですか?」
それほどではない。
やっぱ魔王軍は滅ぼした方がいいんだろうな。
「俺の背中に乗れ。さっきみたいに手を掴むのはさすがに戦いづらい」
「え、あ、はい」
ファナディーヤは俺の背に乗るのを躊躇していた。
「どうした?」
「その……男性に密着するのは初めてなので」
「それで身も心も捧げるなんて良く言えたな」
「仕方ないではありませんか! そういった経験がないのですから!」
ぶんぶんと随分と可愛らしく怒ってくる。
魔王の元に何年いたか知らんが、ずっと手を出されなかったのなら当然か。
ファナディーヤはゆっくりと俺の後ろから密着する。
「えい」
ファナディーヤがしっかりとしがみつく。
その感触と顔を近づけてくる甘い匂いに意識がそちらにいく。
飛び立つのをやめて、もうちょっとこのままでいたい。
『背部のガードアーマーの出力が落ちてますよマスター』
(うるさい)
ちっ、アーマーが固すぎて胸の感触がわからん。
せっかくあのド級の胸が近くにあるというのに……まぁいい。
俺の首の横にいるファナディーヤの顔を覗く。
しかしまぁ……、本当に綺麗だ。奴らも正当に守ると言えば彼女達の心を手に入れられたかもしれないのに。
「そんなに見られると恥ずかしいですわ」
「悪い。じゃあ行こうか」
いつまでも見ていたい美しさがあったがそれは終わってからでいいだろう。
ファナディーヤを連れて飛びあがり、本陣に向けて飛ぶ。
「ゼオス様は戦に慣れておられるのですか?」
「10年近くずっと戦場に出ていたからな。指揮するより前に出る方が得意だった」
「クロ様も形を変えられたりしております。どういう原理なのか気になります」
「戦いが終わったら説明してやるよ。お、見えてきたな」
林道の手前で大軍がいることを確認した。
空に逃げているおかげでまったくバレないな。
この世界の戦闘は制空権を取れば半分勝ちかもしれん。
ようやく先遣隊の生き残りがやっと本陣にたどりついたようだ。
「大きな騒ぎになっていませんね」
「砲撃魔法で全滅なんて……誰も信じないだろうしな」
「ではどうするのですか?」
「信じさせればいい。素早く飛空するからしっかり捕まっていろ」
俺はクロをランチャーモードにしながら射程範囲まで近づく。
ここまで近づいてようやく兵達が俺たちの存在に気づいたようだ。
「セット、ダークネスブラスター・ワイド」
空からの強襲に魔王軍は慌てふためいていた。
ダークネスブラスターは俺がよく使用する直線砲撃魔法。
威力、射程、魔力消費がピカイチでいろんな用途に使用している。
ワイドは拡散式だ。威力や射程は下がるもののより多くの敵を葬り去ることができる。
大した防御力もないみたいだし、これで十分だ。
「ゼオス様、敵の攻撃が来ます」
敵兵が杖を掲げた。杖の先に魔方陣が出来て、何やら全員ブツブツと口走っている。
『詠唱しているようですね』
(足を止めているのかよ。いい的だな)
そういえば魔王も何か唱えていたな。
チャージだったら俺もすることはあるが、戦場でぶつくさ言ってたらあっと言う間にやられちまうぜ。
敵の攻撃を観察するために攻撃を止め。発動した魔法を確認する。
「ほぉ」
火の弾や水の渦、風の刃などが飛んできた。
やはり俺の使っている魔法とは違う。自然ゆかりの魔法攻撃。どういう原理なのだろうな。
「ゼオス様!」
「避ける必要はない」
防御魔法は防具服であるガードアーマーだけじゃない。
魔法は俺の周囲に2メートル範囲張り巡らされたそれによって魔法攻撃は飛散してしまった。
これが防御魔法プロテクションバリア。貼れば全方位の攻撃を全て遮断する。
バリア内にはファナディーヤもいるので彼女が傷つくこともない。
1000人以上の魔道士から続々魔法攻撃を受けるが全てプロテクションバリアを抜けずにいる。
弱い、弱すぎるぞ……魔王軍。
『マスター注意を』
(む?)
クロが指示してきた右下方向から巨大な炎の矢が迫ってきてバリアにヒビを入らせた。
なんだ強力な攻撃もできるんじゃないか。
だがバリアはいくらでも張り直すことができる。さらに魔力を増やして強固にすることもできる。
万に一つも抜かれることはない。
ただ、あれを高頻度で連発されるとちょっと怖いな。
(警戒するか)
『不要かと。あれを出すのに30人がかりで10分ほど詠唱をしておりました』
それだけの人員と時間を使ってその威力かよ。
俺が10分もチャージしたらここ一帯焼け野原にできる砲撃魔法が撃てるぞ。
(クロ、詠唱時間が長い者を優先してマルチロックしろ)
「セット、フォトンシューター・マルチロック」
俺の魔力であれば一度に1000個の魔力弾を出すことができる。
クロの演算処理能力を使えば1000個を効率よく順番に打つことができる。
詠唱が終わって魔法を放つ瞬間に撃破されるなんて悔しいよなぁ。
「セット、ダークネスブラスター・ウェイブ」
炸裂プログラムを込めたダークネスブラスターを地面に放射。
地面にぶつかる同時に爆裂が波となって広がり、敵軍の魔道士達を飲み込んでいく。
はじめからこれを打てばよかったな。フォトンシューターでちまちま潰すの魔力の無駄だった。
「凄い……凄いですわ。この力があればわたくしも!」
「ファナディーヤ?」
「ごほん、ゼオス様、本陣が見えて参りました。勝利は目前です」
結構衝撃的な虐殺を行なっているのだが、この美女は嫌な顔一つ見せない。
心底この結果を望んでいたように見える。
ファナディーヤも他の100人同様連れ去られた時に故郷や家族を失ったんだろうか。
まぁいいさ。俺は魔科学師として10年生きて、たくさんの命を奪ってきた。
こいつらは奪ってもいい奴らだ。そう思うしかない。
本陣、疾風のルゲルという男が戦場の様子に困惑しているのが見えた。やはり制空権を取ると本陣に直接行けるから楽だな。
やつの目の前に降り立った。
突然の来訪にルゲルと護衛達が大騒ぎとなっていた。
ルゲルは大きな声で叫ぶ。
「ひっ、ぜ、全員……こいつを殺せ!」
「セット、フォトンアロー。ルゲル以外を殺れ」
今までの追跡弾ではなく、制御の難しい殺傷性の高い矢の魔法弾を大量に生み出して真っ直ぐに射抜く。
全矢、ルゲルの側面を通過し、奴以外の魔道士を瞬時に全て葬った。
「やぁ……あんたがルゲルか。あんたの軍隊弱いな。もう少し骨のあった方がよかったぞ」
さて、どうやって処理しようか。
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