004 美女しかいない楽園②
10才の頃から次元統一連邦の魔科学師として働いていてたくさんの女子を見て来たが目の前の二人はまさしく10万、100万に1人レベルの子。
ミスコンに出場すれば確実に1位が取れるほどの容姿の女の子が二人もいる。
目の保養に思わず空腹が満たされるようだ。
しかしそれでもファナディーヤの方が美しく思える。ファナディーヤは微笑みを崩さず。脇で俺を見ていた
彼女の場合は神がかった美しさといって良いだろう。それこそ世界を傾けてしまういそうな傾国の美女とも言えるレベル。
俺の前に膳が置かれ、一礼して二人の少女は下がった。去る前にファナディーヤに礼をしている所をみると立場の差が見えてくるようだ。
(目の前のこれはなんだ?)
『米に水を含ませて炊いた物に魚類に野菜、鶏卵もありますね』
(食えば分かるか)
先進世界ではないあまり見たことがない。イメージの中でしかない料理が現実に並べられている。
こういう世界の飯は食えたものではないイメージだが腹は減ってるしなんでも食えるだろう。
『毒はないようです。心置きなくお食べください』
「よし、早速」
「ゼオス様」
ファナディーヤが立ち上がり、料理に手を向けた。
「本日のメニューはシューレイ湖産のスズキのセモリナ粉焼きの香味野菜フレッシュソースです、スズキの調理方法には」
一つ一つ丁寧に説明し始めたのだ。
正直俺的には食べられたらなんでもいいんだが長い。飯が冷めちまう。
「そちらの季節の根菜のピストゥソースは」
「お、おう。とりあえず説明は良いぞ。冷めちまうし早く食わせてくれ」
「作用でございますか」
いつもはああやってメニューを並べて話すのだろうか。ファナディーヤは下がって綺麗に座る。
先ほどの抜けた美貌を持つ二人の少女も礼をしたまま俺の前に控えていた。
じーっと見つめられてすげー食いづらいがまぁいい。
料理を口に運ぶ獲物はこれか。箸だっけ。これも使い慣れてないが経験がないわけではないのでうまくいくだろう。
メインの魚料理に手を出し、口に頬張る。
「っ!」
これは……美味い。
魚に何だ、旨味が染みていてめちゃくちゃ白米が進む。
こういう感じの期待の裏切りは大歓迎だ。どの料理も非常に美味く、どんどん消化していく。
横目でファナディーヤも二人の少女も不思議な表情を浮かんべていた。
まぁ行儀とかそういうアレかもしれん。知るかよ、どうせ俺はここを出ていくんだ。
美味すぎてあっという間に完食してしまった。
「いや、びっくりしたな」
「左様でございますか」
これだけの美味い料理を食べたのはいつぶりだろうか。
最近軍用レーションばかりで栄養さえ取れればいいだったからな。食に対する魅力が消え失せていた。
飯の美味さってやつを思い出させてくれたこのメシを作った料理人に話を聞きたくなった。
「この料理を作った人に話をさせてくれないか」
ファナディーヤが目線で前の少女二人に指示をする。
その内の一人が一礼して立ち上がり、慌てて部屋から出て行った。
そこまで仰々しくするつもりはなかったし、今すぐでなくても良かったんだが。
ドタドタと走る音がして、部屋の前で一度止まり、ゆっくりと横扉が開いた。
「し、失礼致します」
「おおっ」
がらっと空いた扉からは先ほどの少女ともう一人、コックコートに身を包んだ女の子が一人。
「今日のメニューに何か不備がありましたでしょうか。大変申し訳ございません!」
「お!? 違う、違う。めちゃくちゃ美味しかったから話がしたくなったんだ」
「え?」
「ごほん、君の名を教えてくれないか?」
「あ、私はスレーナと言います。この
「まだ若いのにあれだけの料理が作れるのか」
てっきりいかつい職人肌の男が出てくると思ったからびっくりした。
髪をフードでまとめているがぱっちりとした瞳に整った顔立ちのこの子も多分、そうだろう。
「ちょっとフードを外してもらってもいいかな?」
「はぁ……」
スレーナはファナディーヤの方をちらりと見る。頷いたのを見て、スレーナはフードを取った。
栗色の髪が流れて、見立て通りとんでもない美少女であることがわかる。
「美味しい料理をありがとう。すっごく楽しめたよ」
「え……えっ、あ、ありがとうございます」
スレーナは意外そうな表情を浮かべる。素直な気持ちを伝えただけなんだが、感激されたような感じにも見える。
「だ、大丈夫か?」
「い、いえ。男性に褒められたのが初めてでびっくりして……。でも凄く嬉しいです。ありがとうございます」
スレーナは頬を綻ばせていた。普通に褒めただけなのにそんなに感激されているんだ。
ファナディーヤも側の女の子二人もありえないものを見たような顔をしていた。
そういえば、初めてここにやってきた時謝罪から入っていたな。もしかしたら失敗が許されない状況で飯作っているんじゃなかろうか。
ファナディーヤはともかく、前の二人も10代中盤ながら表情以外は微動だにしない。礼儀が神がかっているし、まだこの世界に来てわずかだが……見えてくるのがある。
食事を終えると近くにいた少女達が膳を取り下げて、引き上げていった。
しかし俺がスレーナと話した時以外は微動だにしなかったな。真っ直ぐ一点を見つめて、構えていた。
そう教育されているのか、そうしないといけない環境下なのか。
部屋には俺とファナディーヤのみが残っていた。
「それで……本題に入ろうか」
「何でもお申し付けくださいませ」
ファナディーヤの柔和な笑みと翡翠の瞳に吸い込まれてしまいそうになる。
あまりの美しさに心が奪われてしまいそうだ。美女ってやつは別の意味で強いな。
「さっきスレーナが
「その通りです。魔王が作り上げた楽園と呼べる宮殿、それが光羅宮と呼ばれるのです。さきほどの子達はこの光羅宮で働く姫達であります」
つまり……魔王の居城って所なんだろうな。あの子達の主人が魔王になるってわけか。
「俺を助けた理由、飯まで与えた理由を教えてもらおうか。俺は君の家族である魔王を討った。君だけじゃない。さっきの子達も言えば仕える主人を倒されたことになる。全員から恨まれていてもおかしくはない」
「いいえ、恨むどころか喜んだものが大半でしょう」
「は?」
「魔王は残忍冷徹で人道というものは存在しないお方でしたわ。歯向かうものは容赦なく、味方ですら失敗した者は切り捨てます。対峙したゼオス様もお分かりになるのではございませんか」
「あの男、只者じゃなかった」
マトモでない俺がマトモじゃないって思うくらいだ。きっとよっぽどなのだろう。
味方からも恐れられていたってことか。
「魔王が唯一興味を持つのが美しい女です。女を手に入れるためには関係する全てを焼き尽くし、奪い合るのです」
「美しい女……。まさか!」
ファナディーヤは両手を4回叩く。
すると外の方でガヤガヤと集まる音が聞こえるようになった。
5分も経たない内に静まり、ファナディーヤは大扉を横に開いた。
そこには大勢の女子達が地に手をつけ、俺に向けて礼をしていた。
「ゼオス様。ここにいる皆は魔王に全てを奪われた100人の姫達でございます」
そして何より、その全ての女がとんでもなく美しかった。
「そしてゼオス様。貴方様に全てを捧げる姫達でもあるのです」
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