第3話  引っ越し  

「真人くん、随分渋いハーレーに乗ってるんだね」


「先輩から譲ってもらったバイクなんです、古いけどいじるのが楽しいんで」


「そうなんだ、この里山へ来る道は狭いけどバイクなら楽しいだろうね」


「はい」


「実は私も若い頃CB750《シービーナナハン》に乗ってたんだよ」


「そうですか、バイクはやっぱり気持ちいいですよね」彼は微笑んだ。


木々の緑の中を坂道を登りログハウス横の駐車場へ到着する。


私はトラックのエンジンをかけ、アルミの箱になっている後ろへ行くとパワーゲートのスイッチを押した。

ゲートが下に降りてドアを開けると中にたくさんの段ボール箱が詰まっている。

真人くんはトラックの横に書いてある『第一音響』の文字を不思議そうに見ながらそばへ来た。


「このトラックは昔バイトをしていた音響屋さんのトラックでね、引っ越しするなら使って良いと言われたんだけど、新しいトラックは傷付けたら嫌だから一番古いヤツを借りて来たんだ、そしてら壊れそうな音がして不安だったよ」私は笑った。


「へ〜音響屋さんでバイトしてたんですか?俺バンドやってたんですよ、でも事情があって今日解散しちゃったんですけどね」少し寂しそうな表情だ。


「そうなんだ、バイクの後ろにスティックが刺してあったからドラマーなのかと思ったよ」


「そうです、下手くそドラマーです」真人君は照れくさそうに笑った。


ゲートを少し上げて段ボール箱を取りやすくすると「じゃあ早速運んでもらおうかな」とお願いする。


「はい!」真人くんは段ボール箱を一度に数個持ち上げ手際よくリビングへ運んでくれた。


小さい箱が有ると志音が嬉しそうに運んだ。

リビングでは美夜子が箱に書いてある文字を見ながら仕分けしている。

ダンボール箱を運び終わると美夜子はウッドデッキにジュースやお菓子を運んで来た。


「休憩しましょう」そう言ってダンボール箱をテーブルがわりにして置く。


4人は腰を下ろすとしばらく休息する。


「あっ、とーたん!そんなにお菓子を食べちゃダメですよ!」そう言うと私からお菓子を取り上げた。


「あはは……最近血圧が高めでね」笑って真人君を見ると、真人くんはクスクスと肩を揺らした。

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