DAY 7

 植木鉢が鼻先を掠めて以来、命の心配をするような出来事は起こっていないが相変わらず妙な視線は無くならない。神経はすり減り、満足に食事も睡眠もできず仕事のミスも増え踏んだり蹴ったりだ。


 心配した同僚が昼食を一緒にと誘ってくれ、会社から外に出るとやけにカラスの鳴き声が耳に着く。頭上の電線を見るとびっしりと黒い影が並んでいて同僚が冗談交じりに話す。


「誰かに呪われてるんじゃない?」


 精神が不安定になっている女には十分すぎる程にショックを受ける言葉だった。普段なら笑って冗談の一つも返せただろう。だが、今の精神状態では姿が見えないのも呪いを掛けられたというなら納得できるのではないかと呆然と立ち尽くしていると黒い影が顔の横を掠めていった。


「痛い!」


 鈍い痛みに顔を押さえた手を見ると手はベッタリと血に染まっている。顔に傷を負わせた黒い影の後を追うように空を見上げると片脚を少し浮かせて電線に留まっているカラスと目が合うとまるで歓喜したように大きな声で鳴き女は意識を失った。

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