DAY 4

 一人で抱え込んでも解決しないと会社の同僚に昨日、妙な視線について相談をした。毎日同じ生活パターンだと後をつけやすくなるというので、今日はいつもより早い時間にアパートを出ることにした。玄関のドアを開ける時も、覗き穴から誰もいないことを確認してからそっとドアを開ける。ゴミの嫌がらせもなくいつもの朝より静かで澄んでいる空気を吸って深呼吸してから歩き出す。


 今日は電車ではなく駅よりも近場にあるバス停からバスに乗って会社に向かう。大通りで車も人もそれなりにあり、不審者であっても手が出しづらいだろうとの考えだ。作戦は功を奏したのか妙な視線は感じることなく安心してバスに乗り会社近くで下車し、歩道を歩きだす。


 視線も感じることなく安心しきって歩いていると目の前を何かが勢いよく上から下に通り過ぎ足元でガシャンと大きな音がし、腰が抜けその場に尻餅をつく。


「うっ、植木鉢?」


 周囲を歩いていた人も驚いたように腰が抜けへたり込んでいる女に声をかけるが、放心状態でガタガタと震えながら植木鉢が落ちてきた場所を見上げ鳥が飛んでいく姿を呆然と見ていた。


 ――あと少し落下位置がずれていたら死んでいたかもしれない。


 人だかりに警察官がやって来て事情を説明していると直ぐ横の雑居ビルの誰でも出入りできる廊下にある窓に置いておいた植木鉢が偶然落ちたということが分かった。ただ、窓には低いながらも柵があり植木鉢が偶然落ちるというのは考えにくいという。


 心当たりはないがもしかしたらと思い、警察官に数日前から妙な視線を感じている事とアパートの部屋の前にゴミが散らかっていたことを話す。相手の姿も心当たりもないことから被害届を受理するのは難しいとの事で最寄りの交番に事情を話しアパート周辺の見回りを強化してもらうように行くよう言われた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る