DAY 3

 昨日、会社を遅刻し仕事も失敗続きで朝になっても気分は重いままだった。それでも、会社に行かないという選択肢はなく今日も着替えて部屋のゴミを集め鞄とゴミ袋を持ってアパートを出る。が、玄関のドアを開けると何かがドアに当たり廊下を見て唖然とする。


 アパートの廊下に生ゴミが散乱している。しかも女の玄関の前にだけ酷くゴミが散乱していた。


「夜に生ゴミを玄関前に置くのは止めて頂戴ね」


 玄関のドアを開けたまま固まっている女にアパートの住人が注意をするが、むろんそんなことはしておらず言い返そうと口を開こうとするがアパートの住人は無視して部屋に戻って行った。


 ――私じゃないのに。


 文句を飲み込み生ゴミをこのままにもできず慌てて鞄を置いて箒でゴミを片付ける。のんびりしていると二日連続で会社に遅刻してしまう。自分のゴミ袋と誰かのゴミをゴミ捨て場に捨てに行くとゴミを漁りに来ていたのか、人の気配に驚いたカラスが飛び立つ。


 ――気持ち悪い。


 誰だか分からない人の生ゴミを処理するのは生活を覗いているようで、あまり気持ちの良いものではない。溜息を吐いて肩を落とし歩き出すと妙な視線に背筋がゾクリとして立ち止まる。


 ここ数日、妙な視線が付きまとっている気がしているが、もしかしてこのゴミもその誰かの仕業なのかと不意に恐怖が背筋を駆けあがってくる。振り返る勇気もなくその場から走り出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る