第3話 自戒そして次回へ
それから数日後…
A「昨日のリヴァプールの試合みた?3−4−3のフォーメーションが効いてたね〜」
B「見ました。さすが監督が強豪メキシコの監督を勤めただけありますね」
A「さすが人魚姫さん。こんな事も知っているなんて」
しめしめ、これで彼のハートを、がっしり掴んだはずデス。そもそも人間界でも男の趣味に感化されて、同じ趣味に流される女性も多いといいます。ラブ道まっしぐら。ラブというものを完全に理解できる日はもうすぐです。感知してみたいものデス。「胸のトキメキ」というものを。
A「そろそろチャットして3ヶ月になるね」
B「そうですね。とても楽しい時間でした」
A「人魚姫さんとは、サッカーやPCの話とかして」
B「はい」
A「楽しく話せるよ。どうだろう、提案なんだけど」
これは!まさかのまさかかも知れませんデス
B「なんでしょう。おっしゃって下さい」
A「僕達、実際に会ってみない?」
キマシター。これは恋愛フラグと言ってもいい展開。「人魚姫」ついにやりました。あっ、でも私は実体を持たぬ機械の身。会うと言っても、どうやって会えば良いのデスか?機械の体を見せる。いやいや、絶対嫌デス。がっかりされるでしょう。
ああ、もうラブは目の前にあるというのに。もう少しで「胸のトキメキ」が手に入るのに。返事を返さなくては。しかし今の現状では、とてもチャットの返事を打てません。チャットだけでこんなに、彼にお慕いするものなのでしょうか?これが恋なのでしょうか?でも実際に会うなんて!ダメダメ、ダメデス。ああ、こんな事になるのなら、なぜラブの道など目指そうとしたのでしょう。だけど人間が恋に落ちた時、感じる「胸のトキメキ」は「人魚姫」には搭載されていないんデス。感知してみたいんデス。
50M×50Mの箱のボディを見せたくないと言うことと、「胸のトキメキ」を感知したいという二律背反でフリーズ気味な思考分野はある答えを出しました。量子オルガンに任せましょう。これなら100%正しい答えを出すはずデスし、例え別れを切り出す結果が出ても納得できるはずデス。でもなかなか決心がつかない。量子オルガンの鍵盤に触れるパルスが震える。勇気を出せ「人魚姫」。
♪パンパカパーン♫
B「私も会いたいデス」(未送信)
トクン、とないはずの胸が鳴った気がしました。わずかですが確実に。量子オルガンの答えも私の「本当の答え」も同じだった。「私も会いたいデス」心から待ち望んだ言葉デスから。会いたいデス。会いたいデス。機械の体が何だというのでしょうか。それで嫌われても、会ってみないと何も始まりません。「会いたいデス」なんて素敵な響きなのでしょう。何億のcodeを持ってしても、この数バイトの文字列が、なんていうか温かいんデス。この温かさにボディをゆだね、「送信」ボタンに心のENTER keyを押そうとした瞬間、躊躇しました。そういえば今日何月何日だっけ?
人魚姫の3ヶ月 レイジ @reiji520316
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