第4話 害獣駆除
市街地の一角にある交差点を幾重にも重なった銃声が満たす。
真鍮製と鋼製の空薬莢がアスファルトの地面を跳ね、甲高い金属音を奏でる。
「右3匹!トラックの影!!」
「あいよ!」
永田が指差し、その方向にある中型トラックの残骸とその裏から飛び出て来たハウンド3匹に向けてタラニが発砲する。
廃車の上にバイポッドを立てているRPK-74M軽機関銃の掃射によってハウンドは3匹共に動かなくなった。
20匹以上いたハウンドは余裕で片付けられそうだったが、まだ5匹のハウンド・リーダーが残っていた。
ハウンドなどの様な魔物は、種類ごとに更に「リーダー級」、「コマンダー級」、「ジェネラル級」の3段階に分けられた上位個体が存在する。
今回は魔物の中でも最弱種であるハウンドのリーダー級なので、そこまで苦戦する相手ではないが、他種のコマンダー級或いはジェネラル級なんかが来てしまったら防衛隊の主力部隊をぶつけなければ瞬殺は必至だろう。
過去に何度かコマンダー級との戦闘を経験した事のある永田だが、現在ではただひたすら「出来れば二度と会いたくない」という恐怖混じりの感想だけが脳内に焼き付いている。
リーダー級のハウンドは大型バイク程度の通常種と比べ2倍近いサイズ差があり、それでいて動きも機敏。
「ハウンド・リーダー、5匹全部来るぞ!!」
フィブルスが銃口を向けるその先にあるのは、猛スピードで此方に向かって来る5匹のハウンド・リーダー。
「ケラーダ、左の3匹に制圧射!!俺はグレネードを使う!!」
「了解!!」
猛士の銃座に搭載されたQJZ-89重機関銃の銃口を周りの瓦礫や廃車を撥ね飛ばしながら向かって来るハウンド・リーダー達に向け、ケラーダが引き金を引く。
大口径の12.7mm弾が堅牢な筈のハウンド・リーダーの外皮を貫き、弾頭の運動エネルギーで内臓をズタズタに掻き回す。
内臓が挽肉と化し、致命傷を受けたハウンド・リーダー達は奇怪な鳴き声を上げながら地面に倒れ込んだ。
今回の遠征で唯一の重火器であるQJZ-89はこの部隊の貴重な高火力の兵器だった。
左側の3匹をケラーダが抑え込んでいる間に、永田はM320グレネードランチャーを懐から取り出す。
40mmの破砕榴弾を装填し、光学照準器を覗き込む。
中心の光の点と右側にいる2匹のハウンド・リーダーの姿を重ね、一呼吸置くと引き金を引いた。
子気味良い発射音と共に放たれた破砕榴弾が空を切る。
ハウンド・リーダーはそれを回避しようとし、その身を翻す。
何mとある巨体が空中を舞い、そして永田の放った破砕榴弾を躱した。
直撃を躱し、獲物が自身の間合いに入ると確信したハウンド・リーダー達はその直後に側方からの爆風に襲われる。
凄まじい爆風と全方位に超音速で飛散する夥しい数のタングステン製ペレットがハウンド・リーダー達の全身を貫いた。
一瞬で蜂の巣と化した2匹は暫く痙攣した後、静かに絶命した。
「戦中じゃ西側最新鋭の装備だった歩兵携行型40mmエアバースト弾と、フリエン先生が込めてくれた炸裂術式による爆発力強化…やっぱ最高の組み合わせだな」
M320のトップレールに装着されていた光学照準器は動体、熱源感知機能に測距機能を併せ持っておりそれによって正確に測定された敵の位置情報を無線で装填された破砕榴弾に送信。
放たれた弾頭はその送られたデータ通りの位置で炸裂するようになっている。
対人装備の為、本来ならばハウンド・リーダーなどのような中型、大型の魔物には大きな効果は見込めないがフリエニカが弾頭に込めた炸裂術式によって爆発の威力を大幅に増大している。
「あんま使いすぎんなよ、これから何匹の上位種が出て来るか分かんねえんだからな」
「大丈夫だっての、まだ14発もあるぜ」
ヴィエの忠告に永田は左手をひらひらと振りながら答え、再び猛士の車内に戻った。
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