第6話「開幕リード、失敗!」

 狗郎いぬろうは、取り巻き連中と一緒にカラオケに行こうと校門へ向かっているところだった。


「勝てば、あの高岡たかおか理姫りひめを奴隷に?しかも相手プレイヤーは、クソ雑魚ブサイク……!?」


 彼は、あっさりと食いついた。


「ただし、ゲームに影響するような命令を奴隷にするのは無しね。じゃないと、面白くないもの」

「いいぜ。その程度の条件、安いもんだ」


 理姫りひめは、俺が狗郎いぬろうの命令で負ける可能性も潰してくれた。


 俺達が勝てば、狗郎いぬろうが俺の奴隷となり、命令することで冷奈れいなを奴隷から解放できる。


 今度こそ、絶対に勝つ。




 俺達は再び化学室のテーブルにつき、審判シンパンダ立ち会いの下、対戦を始めた。


 今回は周囲に数十人のギャラリーが集まった。やはり、高岡たかおか理姫りひめが『スレイヴ・ヨット』に参戦するのはビッグニュースなのだ。


 冷奈れいなは、ギャラリーに混じって勝負を見守っている。

 どんな気持ちで見ているかは、分からない。

 パートナーとして、しばらく隣にいたから分かる。彼女は感情を表に出さないタイプだ。


 だからこそ、彼女が去り際に見せた悲しげな表情を見て、諦めるわけにはいかない。




「いくぞ」

 今回は、俺が先んじてサイコロを投げた。


 5、4、5、5、5。


 いいぞ。『ファイブ』の役を選べば、得点は5×4=20点。6が3つ出ても、この得点には勝てない。




「ふっ」

 しかしこの出目を見て、狗郎いぬろうは鼻で笑った。




「何が可笑おかしいんだ?」


 俺は、そう言って狗郎いぬろうを睨む。




「1ターン目は勝てると、思ったんじゃないか?」


 狗郎いぬろうが、ニヤニヤした顔で言葉を返す。




「教えてやるよ」




 狗郎いぬろうは、サイコロを振った。




「真の勝負師は、こういう時に出すんだよ。最強の出目をな」




 6、6、6、6、6。




 馬鹿な。


 ヨットだと!?




「紙に書く必要も無い。俺の役はヨット、50点だ」




 こんな時にも、神は俺を見放すのかよ……!




「そして、残念なお知らせが1つ。お前がどんな役を選ぼうと、ペナルティ内容は最高ランク、21点以上の枠。そして、俺が選ぶペナルティは……」


 狗郎いぬろうは、勝利を確信したニヤけ顔で言い放った。


ペナルティ100番、『防火扉を縦にへし折る』だ」

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