第2話「部活選び、失敗!」

「あの、ヨット勝負で奴隷にされた女の子がいるって……」


 すぐに立ち去りたいところだが、女の子の話は気になるので、一応尋ねる。


「ええ、そんなこともありましょうね」

「あるんですか?」

「我々がたしなむのは、パートナーと共に奴隷を賭けて戦う『スレイヴ・ヨット』ですから」


 ヤバい集団だ。さっさと逃げよう。




「今日もカワイイ奴隷、ゲットだぜえ!」


 その場を離れようと振り返ったとき、こちらへ向かって数人の男女が歩いてくるのが見えた。

 先頭の男は、汚いダミ声で叫びながら廊下を闊歩かっぽしている。


「ほら見ろよ、審判シンパンダ!珍しい銀髪美少女だぜ!」


 そう言うとダミ声野郎は、半歩後ろにいた女生徒の髪をつかみ、俺達の前へ引っ張り出した。


 首元まで伸びた綺麗な銀髪。透き通る白い肌。黒の中に少しだけ青みが入った、つぶらな瞳。

 まごうことなき美少女が、俺と大差ないブサイクなダミ声野郎に、髪をつかまれている!

 まさかこの子が、奴隷にされてしまったという……!?


「どう思う!?審判シンパンダ!」

「ど……」


「おい、その子から手を離せ!」




 気づいた時には、俺は声を出していた。




「あ?なんだお前、すっげえブサイクだな」

「うるせえ。まさか、お前がその子を奴隷にしたっていうのか?」

「当たり前よ。ヨット勝負でな」


 廊下で聞いた噂は、本当だったんだ。


 なら、ヨット勝負で助けられるはず!


「おい、俺とヨット勝負しろ」

「あ?」


 ダミ声野郎は、ポカンとした顔で俺を見つめる。


「やんの?俺と?」

「ああ。勝ったら、その子を解放しろ」




「俺の名は鎌瀬川かませがわ狗郎いぬろう。お前、俺の名を知らねえだろ?」


 狗郎いぬろうと名乗るダミ声野郎は、俺に言った。


「『スレイヴ・ヨット』校内ランキング10位。所有する奴隷は20人。これを聞いても、俺と勝負するか?」


 いや、知らんがな。何人中の10位よ?


「ああ。それより俺が勝ったら、その子を解放しろ」

「いいぜ。万が一にも俺に勝てれば、な」




「ちょっと待った」


 会話に、メガネの男が割って入った。


「正式な『スレイヴ・ヨット』はヨット部員同士でしか認められません。あなた……」

常南津とこなつナミキです」

常南津とこなつさん、ヨット部に入部しますか?」


 ヨット部か……


 まさか、こんな形で入ることになろうとは。


「ああ、入る!」


 まあ、嫌になったら退部すりゃいいだろ。


「よろしい、入部を認めます。なお、機密保持の都合上、卒業まで退部は絶対に認めませんので、あしからず」




 ……先に言って?

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