爆烈ヨット戦記TOKONATSU~奴隷を作れるゲームで、俺は彼女を作ってやる~

ぎざくら

第1話「高校デビュー、失敗!」

「ごめんなさい」




 そう告げ、彼女は俺の前から逃げるように去る。







 俺の名前は常南津とこなつナミキ。

 昨日、高校に入学した。




 そして今日、フラれた。


 告白をしたわけではない。

 

 気になるに、「今日はいい天気ですね」と話しかけただけだ。




 俺は見た目がブサイク過ぎて、近寄るだけで女子が逃げる。

 中学時代のあだ名は『第一印象マイナス100点』、通称『100点クン』だ。


 高校では汚名返上を、と気合いを入れ、髪にワックスをつけて登校したがムダな努力だったようだ。明日からはワックスやめよ、めんどくさいし。




「おっ、100点クンじゃん」


 聞きなじみのある声。

 中学時代の友人だ。つーか、そのあだ名で呼ぶな。


「ヨット部のチラシ、もらったから見せとこうと思って。ほら、お前、経験者だろ?周りにアドバイスとかしたら、モテるかもって」


 彼はそう言うと、「ヨット部員募集。初心者大歓迎」と黒のマジックで書かれただけの無骨ぶこつなチラシを、俺の前で広げた。




 ヨット部か……




 こんな俺でも、男子からは慕われていた。

 俺を尊敬する奴すらいた。

 理由は、俺が競技セーリング……ヨットレースの全国覇者だからだ。


 女子を見返すため、必死で特訓した結果だ。

 それでもモテなかったのは想定外だが、男子から一目置かれるには十分なステータスだ。

 高校は、この力を部活動で見せつけるべく、ヨット部のある高校を選んだ。


 が、しかし。神は残酷だ。

 先月の交通事故で、手足を負傷。

 日常生活は問題ないレベルに回復したが、一部の動作ができなくなり、セーリング引退を余儀よぎなくされてしまったのだ。




「いらねえよ」


 そう冷たく返し、俺は友人に背を向ける。


 悪いな。今はもう、ヨットという字面じづらすら見たくないんだ。







「ヨット勝負で負けた女の子が、奴隷にされたぞー!」




 数人の生徒達が、叫びながら廊下を駆け回る姿が目に入った。




「めっちゃカワイイ子なのに!」


「ああ、誰かヨット勝負で助けてあげられないのかしら!?」


「ヨット勝負できる奴を、化学室で募集してるらしいぞ!」







 気づいた時には、俺は化学室へダッシュしていた。




 こんなの、助けたが俺にれるパターンに決まってるだろ!


 俺の手足よ、無理して動く時が来たぞ!


 俺の体、動けええぇぇぇ!







 化学室へ入ると、実験テーブルでサイコロを振る男達の姿があった。




「入部希望者ですか?」


 テーブルのそばに立つ、やせ型でメガネをかけた男が、俺に話しかけた。


「あの、ヨット勝負できる人、募集してるって……」

「ええ、ぜひ」


「あの、これは……?」

 俺は無心でサイコロを振り続ける男達を指差す。


「ヨットです」


「いや、ヨットは船……」

「ダイスで遊ぶゲームのヨットですよ。ご存じないです?」




 んっ?

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